10万円を超えると、
社長決裁なんです

――ある会社の総務が、現場に

10/28 16:57 / 発信国:日本 / 記者:工藤

メモリ4GBのPCで新人が辞めた 10万円ルールを守る総務にも言い分がある

「メモリ4GB」のタブレットを渡された新人が、初日に泣いて、次の日に辞めた。そんな話が、10月28日にはてな匿名ダイアリーに投稿された。本当にそんなことある?

投稿によると、その会社のPC調達規程は「1台10万円未満」。昨年98,000円で買えたCore i5・メモリ16GB・SSDのビジネスノートが、今年は196,000円になった。ちょうど倍だ。10万円で買えたのは、Celeron N4500・メモリ4GB・eMMC 64GBの文教向けタブレット。昨年49,900円、今年99,800円。これを30台まとめて発注した。新人がExcelを開いたらメモリ使用率が97%に張り付き、画面が固まった、と書かれている。

先に書いておく。これは匿名の投稿で、誰が書いたのかは分からない。会社名も出ていないので、実際にあった話かどうかは確かめられない。はてなブックマークのコメントにも「ネタだろうけど」「創作で良かったけど」という声が並んでいる。

10万円で買えるPCは、去年の半分になった

ただ、値段の話のほうは作り話ではない。DDR5メモリの小売価格をまとめているサイトによると、32GBキット(16GB×2)は9月15日に65,800円だったものが、10月2日には74,800円。半月で13.7%上がった。64GBキット(32GB×2)は10月26日に157,800円で、前の月から14.5%上がっている。10〜12月の契約価格も、前の期より10〜15%上がる見込みだという。

パソコンのメモリ
写真はイメージ Photo by Franck V. on Unsplash

つまり、去年と同じ10万円を出しても、去年と同じPCは出てこない。背景にあるのはAI向けデータセンターの建設ラッシュで、メモリの生産がそちらに回っている、と各所が伝えている。

10万円を超えると、総務の仕事が増える

ここで、多くの人が思うはずだ。規程を変えればいいだけでは?

電卓と帳簿が置かれた机
写真はイメージ Photo by Jakub Żerdzicki on Unsplash

ネットの怒りも、だいたいそこに向かっている。ただ、ルールを律儀に守っている総務・経理の側にも、言い分はある。

国税庁の説明では、取得価額が10万円未満のものは、買った年に全額を経費にできる。10万円以上になると、原則として固定資産台帳に1台ずつ載り、何年もかけて費用にしていく。30台なら、30行だ。

もう一つ、あまり語られない手間がある。償却資産の申告だ。大阪市の説明では、10万円未満で一度に経費にしたものと、20万円未満の一括償却資産は、申告の対象外。ところが、少額減価償却資産の特例を使って全額落としたものは、申告の対象になる。

ネットでよく出てくる「特例で一括償却すればいい」という助言は、税金の計算の上ではその通りだ。でも経理から見ると、毎年1月に書く紙が増える、という話になる。さらに投稿の会社では、10万円を超えると社長決裁の稟議が要るとも書かれている。では、その稟議は誰が書くのか。新人にPCを渡す部署ではなく、たいてい総務の誰かだ。

ネットの評判

はてなブックマークでは、10月28日の時点で84人がブックマークし、57件のコメントが付いた。

多いのは会社を責める声で、「ろくな道具渡さないで仕事しろ、は現場軽視の表れ」「メモリ4GBダメ絶対」といった言葉が並ぶ。自分の周りでも似た環境を見た、という声もあり、「メモリ4GB支給とか普通にあり得ます」「周り見ていて案外笑えないくらい非力なPC使っている会社もあって」と書いている人もいる。

一方で、矛先を現場に向ける声もあった。「このレベルのことが説得出来ない時点で無能なのは現場側」「稟議書けよ」。実務の提案も多く、「無理に固定資産管理しなくても、リースで良いじゃん」「少額減価償却資産の特例で一括償却できる」「中小企業なら20万くらいまで固定資産一括償却できるでしょ」といったコメントが付いている。会社の制度そのものを変えるべきだ、という意見もあった。「補助金とか出すよりも、ここを変えて生産性の高い投資させたほうがいい」。

最後に、肝心なところ。国税庁によると、少額減価償却資産の特例の上限は、2026年4月1日以後に買ったものについて、30万円未満から40万円未満に上がった。使えるのは、2029年3月31日までに買ったものだ。1台20万円のノートPCも、1年で全額経費にできる。10万円で止めているのは、国ではなく、その会社の規程のほうだ。

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出典

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