知事ひとりの判断で、死刑囚が終身刑に?!
じゃぁ、あの裁判はなんだったの!

――娘を殺された父が、ニューサム知事の決定に

11/6 18:17 / 発信国:アメリカ / 記者:ミヤムー

カリフォルニア州、死刑囚548人を終身刑に なぜ知事ひとりで決まる

カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事が11月5日、州内の死刑囚548人全員の刑を、仮釈放のない終身刑に減刑すると発表した。アメリカ史上いちばん大きな恩赦だ。州は1978年に死刑を復活させてから、この仕組みに約60億ドル(約9,500億円)を使った。実際に執行したのは13人だった(死刑情報センター)。

え、知事ひとりで決められるのか。まずそこが気になる。

なぜ、知事ひとりで決められるのか

州の憲法が、知事に恩赦の権限を与えている。ただし、重罪で2回以上有罪になった人の減刑には、カリフォルニア州最高裁の承認が要る。548人のおよそ3分の2がこれに当たり、残りはすぐ効く。

ニューサム知事は2019年に執行を一時停止し、サンクエンティン刑務所の処刑室を解体させた。州で最後の執行は2006年。この20年、死刑は紙の上だけで残っていた。

知事は州民への公開書簡に「国家が認める殺害は、カリフォルニアの価値観と相いれず、法制度の土台を損ない、私たち一人ひとりを小さくする」と書いた。任期は2027年1月まで。2028年の大統領選に出るとみられている。

「命を贈った」と言った父、「関係ない」と言った姉妹

人権団体ACLUのアンソニー・ロメロ事務局長は「人種差別的で、誤りが起きやすく、非人道的な刑罰に終わりを告げることだ」と歓迎した。死刑情報センターによると、カリフォルニアの死刑囚からは、これまで8人が無実とされて出ている。8人とも有色人種の男性だった。

怒ったのは遺族の側だ。1993年に12歳の娘ポリー・クラースさんを殺されたマーク・クラースさんは「人の命を奪った人たちに、彼は命を贈った」と話した。「とても落胆する。個人的な感情が全部よみがえってくる」とも言っている。娘を殺した男も、終身刑に切り替わる548人の中にいる。

犯罪被害者団体クライム・ビクティムズ・ユナイテッドのトポ・パディヤ会長は「自分の信念や気持ちを理由に、陪審が出して判事が署名した判決を取り消すべきではない」と話した。元サクラメント郡地方検事のアンマリー・シューバートさんは「いちばんひどい被害者の権利の侵害だ」と言い、法的に争う道を探っている。ロサンゼルス郡地方検事のネイサン・ホックマンさんは、死刑をなくせるのは議会か有権者だけだと話した。

ただ、遺族がひとつにまとまっているわけでもない。ポリーさんの姉妹にあたるジェス・ニコルさんは「制度は、残された側に、処刑が癒やしになると告げる。でも、ならない」と話した。同じ家族の中で、答えが割れている。

ネットの評判

元の記事(ヤフーニュース)には1,177件のコメントが付いた。目立つのは反対だ。「確定した判決を、知事の政治判断ひとつでまとめて変えるのはおかしい」「被害者と遺族の痛みを置いたまま、寛大な指導者という美談だけが残る」。州の住民投票で死刑の廃止が否決されてきたことを挙げ、民意を踏みにじっていると書く人もいた。賛成は少数で、「どうせ執行しない制度を残す方がおかしい」「刑務所にかかるお金を考えれば当然だ」という声があった。

日本の数字も置いておく。死刑が確定している人は、2026年8月21日の時点で100人(CrimeInfo)。内閣府が2024年秋にした調査では、「死刑もやむを得ない」が83.1%、「廃止すべきだ」が16.5%。容認の理由でいちばん多いのは「廃止すれば、被害を受けた人やその家族の気持ちがおさまらない」の62.2%、廃止の理由でいちばん多いのは「裁判に誤りがあった時、取り返しがつかない」の71.0%だった。割れる線は、日本でもほぼ同じ場所を通っている。

11月6日の時点で、州最高裁の承認を待つ人たちの減刑が、いつ確定するかは決まっていない。州が48年で死刑の仕組みに払った約9,500億円を、実際に執行された13人で割ると、1人あたり約730億円になる。

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