暇だと、つい
自分で鍋を振っちゃうんです

――味坊集団のオーナーが、300万円の機械を前に

11/6 18:13 / 発信国:日本 / 記者:工藤

「味坊」の炒め物ロボット300万円は何年で元が取れる?計算してみた

中華の炒め物を自動でつくるロボットが、1台約300万円。味坊集団が2026年8月6日、茨城県守谷市に開いた「ロボ町中華・炒炒(チャオチャオ)」は、この機械を厨房に入れて、32席の店を厨房1人・ホール1人の計2人で回しています。普通なら3〜4人は必要な規模です。

味坊集団は、2000年に神田で開いた「味坊」を原点に東京で店を増やしてきた会社です。炒炒は16店舗目で、運営は株式会社L&L。プレスリリースでは、狙いを「調理スタッフの負担軽減と、味や仕上がりの安定化」と説明しています。

32席を、厨房1人とホール1人で回す

ロボットは中国メーカー製で、日本の代理店が扱っています。あらかじめ切った肉や野菜をケースにセットし、画面で料理名を選ぶと、油が落ち、具材が鍋に入り、調味料まで自動で加わります。36Kr Japanは、セットしてから2分未満で仕上がり、対応メニューは約50種類だと報じています。

テーブルが並ぶ中華料理店の店内
写真はイメージ Photo by 北美餐饮通 on Unsplash

得意と不得意もはっきりしています。回鍋肉、青椒肉絲、エビチリ、酢豚、油淋鶏は得意。一方で、麻婆豆腐は豆腐が崩れやすく、チャーハンは卵が細かくなりすぎ、あんかけはとろみが難しいそうです。いちばん簡単そうなチャーハンが、苦手な側に入っているのが意外でした。

味はどうなのか。「ガチ中華」を食べ歩く阿生さんは、青椒肉絲と回鍋肉を試して「仕上がりも人間の調理したものと遜色ない味でした」と話しています。36Kr Japanの記者も「ロボットが作ったとは感じられない出来栄え」と書いていました。

7か月分か、5年か。計算してみた

ここが筆者のいちばん気になった点です。

電卓とノートを置いた机
写真はイメージ Photo by Aaron Lefler on Unsplash

オーナーの梁宝璋さんは、人件費について「職人さんを1人雇うと、年間で少なくとも500万円くらいの人件費が上乗せされます」と話しています。対してロボットは1台約300万円。高い機種でも500万円くらいだといいます。なお36Kr Japanは「1台280万円」と報じており、2台を導入したとしています。

数字を並べると、300万円は職人1人の年間人件費のおよそ7か月分です(300万円÷500万円×12か月)。計算上は、1年たたずに元が取れてしまう額になります。

ところが、買った本人の見立てはずっと慎重でした。「私としては5年使えれば十分元が取れると思っています」。メーカー側は10年使うことを想定しているそうです。

5年で300万円なら、年60万円、月5万円。職人1人の月あたり約41万7000円と比べると、8分の1ほど。10年なら月2万5000円で、17分の1です。この開きは、ロボットが職人1人をまるごと置き換える機械ではないことの裏返しだと筆者は読みました。実際、厨房には人が1人立っています。仕込みも、味の設計も、故障の対応も人の仕事です。故障についてオーナーは「醤油やソースが詰まってしまうことがあるので、その都度代理店に連絡して修理してもらっています」と話しています。

現場では、こんなことも起きているそうです。オーナーの悩みは「職人さんがロボットを使わず、自分でつくってしまうこと」。「暇な時なんかに、ロボットに任せず自分で鍋を振ってしまうんです」。そこでオーナーは「ロボットができることはロボットに」「できないことを人がやってください」と伝えているといいます。

人手不足は、むしろ和らいでいる

「人手不足だからロボット」という説明は分かりやすいのですが、公的な調査を当ててみると、少し様子が違います。

帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査」では、飲食店で非正社員が足りないと答えた割合は、2024年4月の74.8%から、2025年4月は65.3%、2026年4月は59.1%と、3年続けて下がっています。一方で全体の正社員不足は50.6%と高止まりです。

つまり、頭数そのものより、鍋を振れる人がいないことのほうが切実、という読み方もできます。炒炒の省人化は、人数を削る話ではなく、技術を機械に移す話に見えます。

ネットの評判

この話題は、はてなブックマークで広がり、11月6日の時点で122人がブックマークし、36件のコメントが付いていました。

肯定的な声では「安い。人手不足じゃしょうがないと思ったが、たった300万で何年も働いてくれるんならとても安いね。」「ちゃんぽんや炒飯など限定的なメニューではなく、汎用的な炒め物ロボであることに意味と価値があるんだと思う」といった受け止めが目立ちました。「中華鍋って料理人にダメージ入りそうだもんね。」と、体の負担を心配する声もありました。

一方で、職人の側に立ったコメントもありました。「一番大変だけど一番楽しい部分をロボットに奪われちゃあね。管理職の悲哀に近い」「職人は定着しにくくなるかも。仕込みとロボットへの食材投入を延々と続けているだけで満足する職人は少ないだろうから。」。「故障したら、流石に営業停止するんだろうか。バックアップまでは用意しないよなぁ。」と、1台頼みへの不安を指摘する声も出ていました。

まとめ

300万円は、職人1人の人件費7か月分。計算だけなら安い買い物です。それでも買った本人が「5年」と言うのは、この機械が人の代わりではなく、人の仕事の一部を引き受けるものだからだと思いました。

11月6日の時点で、オーナーは全国展開やフランチャイズも視野に入れつつ、「来年中国に行って、もっと小型で、1品ずつ速く調理できるロボットを探したい」と話す段階です。次に変わるのは値段なのか、鍋を振る人の役割なのか。そこが分かれ道になりそうです。

次の視点

のどかな場所なんだから、
もう勘弁してほしい

――ある住民が、週末の重低音に

ジャンルを変えて「社会・暮らし」から。いま読まれています GMO熊谷正寿代表に近隣住民が「もう勘弁してほしい」 ヘリの爆音と週末の重低音

港の32キロの砲弾を『ワインの瓶』と説明

在パプアニューギニア中国大使館の投稿

ジャンルを変えて「世界のニュース」から。いま読まれています 港の32キロの砲弾を中国大使館は「ワインの瓶」、X線は爆薬と信管を映した

全国大会に20回以上出た高校生、ドームで賛否?!

Snow Man札幌公演の演出をめぐるファンの声

ジャンルを変えて「アイドル・推し活」から。いま読まれています Snow Man札幌公演に高校生マーチングバンド、ファン賛否?! Togetterに「ファンが喜ぶ演出かどうかが抜け落ちてる」
出典

いま読まれている記事

  1. 1銚子のサバ加工、約2割が倒産や廃業 国産に替える道はあるのか
  2. 2e-Taxの緊急メンテはいつ復旧?源泉所得税の納期限は11月10日
  3. 3くるり岸田繁の再婚、祝福一色のはずが?! 藤井セイラ氏の異論に反発
  4. 4妻が稼ぐと夫がしんどい? 元の研究では、夫がいちばん楽なのは妻が4割稼ぐとき
  5. 5「寿司にアルジェリアソース」で煽られた日本側、自作の材料費を計算してみた
← トップへ戻る