生卵をご飯にかけるの?
信じられない

――ある海外のユーザーが、日本人に

写真はイメージ Photo by TOMOKO UJI on Unsplash

10/28 11:16 / 発信国:日本 / 記者:工藤

「卵かけご飯が理解できない」 日本の卵の期限と海外の基準を比べてみた

X(旧ツイッター)に「日本人って生卵をそのままご飯にかけて食べるよね」「卵かけご飯って、そんなにおいしいの」という問いかけが投稿されました。この投稿はまとめサイトのトゥギャッターに収録され、はてなブックマークの人気エントリーでも上位に入っています。

集まった返信を読んでいて意外だったのは、「おいしいよ」の説明よりも、「日本の卵は生で食べられる基準で売られている」という安全性の話が多かったことです。

筆者が気になったのは、そこでした。卵かけご飯は「好み」の話として語られがちですが、調べてみると、国ごとの公式の基準がまるで違っていました。

日本の卵の期限は「生で食べる前提」で決まっている

内閣府の食品安全委員会が公表している解説によると、1999年の食品衛生法施行規則の改定で、殻つき卵の賞味期限は「生食」しても問題が生じない期限を表示することになりました。

冷蔵庫に入れられた卵のパック
写真はイメージ Photo by T on Unsplash

つまり日本のパックに書かれた日付は、「加熱すれば食べられる日」ではなく、「生で食べても大丈夫な日」です。

日数の根拠も示されています。冬季(12〜3月)なら産卵後57日以内。ただし実際の店頭では、年間を通してパック後2週間程度を賞味期限にしている場合が多いとのことです。前提は「冷蔵保存(10℃以下)」だと書かれています。

同じ資料には、期限を過ぎた卵は75℃以上で1分以上加熱すること、ヒビが入った卵はしっかり加熱すること、割ったあとの卵を室温に放置しないことも並んでいました。「日本の卵は安全」の中身は、この細かい条件の束だったわけです。

アメリカとEUは、正反対の方向に進んだ

並べてみると、アメリカとEUは、同じサルモネラ対策から逆の答えを出していました。

ケースに並んだ鶏卵
写真はイメージ Photo by Erol Ahmed on Unsplash

アメリカの食品医薬品局(FDA)は、殻つき卵を40°F(約4℃)以下で保存するよう求めています。さらに、サルモネラを殺す処理をしていない卵のパックには「卵を冷蔵し、黄身が固まるまで加熱し、卵を使った料理は十分に加熱する」という取扱い表示を義務づけています。シーザーサラダのドレッシングのように生のまま食べる料理には、低温殺菌した卵を使うよう勧めています。洗って、冷やして、加熱する。一本の筋が通っています。

EUは逆でした。EUの委員会規則589/2008は、A級卵を洗ってはいけないと定めています。理由は、洗うと卵殻の表面にあるクチクラという膜を傷めてしまい、かえって菌が中に入りやすくなるからです。冷蔵も禁止に近い扱いで、温度を人工的に5℃未満に保つ場所で冷却してはいけないとされています(輸送は24時間、小売店では72時間までなら冷却と見なさない、という例外つきです)。

日本は洗って冷やして生食の期限を切る。アメリカは洗って冷やして加熱させる。EUは洗わず冷やさない。卵そのものは同じなのに、守り方が三通りありました。

ネットの評判

トゥギャッターにまとめられた返信では、「日本では非常に人気で、専門店もある」「醤油の魔法」「卵黄の濃厚な味を存分に味わえる」といった、おいしさを推す声が並びました。手間が少なくてお手頃だという指摘も目立ちます。

一方で、目を引いたのは安全性の注意でした。「日本の卵は生食可の衛生基準で流通している」「日本以外でやるのは危険」という警告が複数あり、サルモネラ菌への注意や、「割ったらすぐ使わないと食中毒のリスクがある」という指摘も出ていました。「食べなくても後悔しない」という冷静な声もありました。

賛否が割れたというより、「おいしいから勧めたい」と「勧め方には条件がある」が同時に出ている、という印象です。

イギリスは、助言そのものを変えた

ここが、筆者がいちばん面白いと思った点です。

イギリスの食品基準庁(FSA)は2017年10月11日、「ライオンマーク」が付いた英国産卵なら、妊婦・乳幼児・高齢者といった立場の弱い人でも、半熟や生で食べて安全だという新しい助言を出しました。食品の微生物学的安全性に関する諮問委員会が1年かけてリスク評価を行った結果です。1988年のサルモネラ騒動以来続いていた「控えるように」という助言が、ここで変わったことになります。

ただし対象はライオンマーク付きの卵だけで、医師の管理下で食事を決めている人は対象外です。

つまり「生卵は非常識」は、国民性の話ではなく、基準と運用の話でした。基準を整えた国は、助言のほうを変えています。

まとめ

条文と数字を並べてみて、筆者は「日本の卵がすごい」よりも、「日本の卵は、生で食べるという出口に合わせて設計されている」という言い方のほうが正確だと感じました。

そして、その設計はいつまでも例外ではないのかもしれません。イギリスのように、基準を積み上げてから助言を書き換えた国も、すでにあります。

旅行や引っ越しで卵かけご飯が食べたくなったら、見るのは値段より表示だと思います。日本のパックの日付は「生で食べていい日」ですが、同じ見た目の日付が、別の国では別の意味を持っています。

二択の設問:期限切れの卵、生でいく?期限切れの卵、生でいく?この話、あなたはどっち? →
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