全部食べたい。
食わせろ

――ある作家が、海外の寿司を見て

写真はイメージ Photo by Vitalii Kyktov on Unsplash

10/28 13:41 / 発信国:フランス / 記者:工藤

「魔改造寿司」の材料と値段をくら寿司と比べてみた フォアグラ巻きは8個6ユーロ(約1,050円)

「よう日本人、我が国でエボリューションしたこの寿司はどう?」——外国人がそう言って見せてくる寿司に、「いまんところ、全部食べたい。食わせろ」と返した作家の投稿が、2026年10月27日に作られたTogetterのまとめで広まりました。閲覧数は58,103。

発端は、フランスにいるユーザーの投稿でした。「ようやくフランスに着いた。寿司+アルジェリアンソースのコンボができる。日本人は何もできない」。Togetter側はこれを「日本人を煽るつもりで」と紹介しています。ところが日本側から返ってきたのは、「そのソース凄い美味しそうですね」でした。

ここで筆者が気になったのは、「邪道」と笑われる海外の寿司と、日本の回転寿司に並ぶ品は、材料と値段でどれくらい違うのかという点です。公式サイトを開いて、並べて計算してみました。

フランスの寿司チェーンが売る「フォアグラの巻き寿司」

まず海外側から確かめます。フランスで店舗を展開する寿司チェーン「Sushi Shop」の公式サイトには、「California French Touch」という巻き寿司の商品ページがあります。

材料として書かれているのは、鴨のフォアグラのブロック、プラリネ(砂糖をからめたナッツ)、いちじくのジャム、そして肉。価格は8ピースで6ユーロです。商品説明には「フォアグラのとろけるような食感と、いちじくの甘さを合わせた」とあります。

生魚は入っていません。これを「California」の名で、現地の寿司チェーンが公式メニューに載せている、ということになります。

材料と値段を並べて計算してみた

日本側はどうでしょうか。くら寿司の公式メニューページには、「えびマヨ」が120円、「まぐろアボカドチーズ」が120円、「あぶりチーズサーモン」が180円、「旨だれ牛カルビ」が120円、「ハンバーグ」が110円、「コーン」が110円と並んでいます。いずれも税込で、店舗によって価格帯が違うという注記が公式サイトに付いています。

器に入れたマヨネーズとスプーン
写真はイメージ Photo by Sara Cervera on Unsplash

今回の発端になったアルジェリアンソースの中身も調べました。フランス語版ウィキペディアによると、マヨネーズ、トマトの濃縮、ハリッサ(唐辛子のペースト)、塩、こしょう、砂糖、玉ねぎ、香辛料、にんにく、レモン汁。英語版は、マヨネーズを土台にマスタードやエシャロット、酢、唐辛子やハリッサで調えると書いています。要するに、マヨネーズに唐辛子を混ぜた甘辛いソースです。

材料表を並べてみて筆者が引っかかったのは、ここでした。くら寿司の「えびマヨ」も、マヨネーズであえたえびを酢飯に載せたものです。笑われている側と、日本で1皿120円で売られている側の距離は、思っていたよりずっと近い、という印象を持ちました。

値段も計算してみます。「California French Touch」は8ピースで6ユーロ、1ピースあたり0.75ユーロ。2026年10月28日9時(日本時間)の為替は1ユーロ175円79銭〜175円81銭だったので、6ユーロは約1,050円、1ピースあたり約132円です。同じ約1,050円があれば、くら寿司の110円の皿を9皿頼める計算になります。材料にフォアグラが入っている分、1ピースの値段は2倍以上。ここは、はっきり差が出ました。

ネットの評判

まとめのコメント欄は、「食べたい」側に大きく傾いていました。「分かる。ひょっとして日本を貶めたかったのかもしれんけど、食べてみたいと強く思うw」「外国人『へっへっへ日本人、寿司に特製ソースをつけて食べてやったぜ。』日本人(多数)『そのソース凄い美味しそうですね』」といった声が並びます。「魔改造、特に食べ物の事で日本人を相手にするのは無謀すぎるな」という声もありました。別のまとめでは、バングラデシュの日本料理店が海苔を天ぷらにしてタコスにしている料理に、「美味ければなんでもいい」「日本でも売って欲しい」という反応が集まっています。

ただ、全部が歓迎されているわけではありません。同じまとめの中には「ブラジルで昔食べた、ストロベリー寿司は味覚の違いを超越した地獄だった」という投稿があります。ヘルシンキで「クリスマストッピング・バナナ巻き寿司」を前にしたユーザーは「俺の寛容さが試されている」と書いていました。果物を巻く系は、材料を並べても日本の回転寿司に対応する品が見つからず、「大差ない」とは言えませんでした。

カリフォルニアロールを作ったのは、日本人の寿司職人だった

調べていていちばん面白いと思ったのは、この点です。

日本のスーパーにも並ぶカリフォルニアロール。日本語版ウィキペディアによると、材料はカニ風味かまぼこ(または茹でたタラバガニの脚身)、アボカド、マヨネーズ、白ごま。考案されたのは1963年、カリフォルニア州ロサンゼルスのリトルトーキョーにあった「東京會館」のすしバーです。オーナーの小高大吉郎の提案を受けて、寿司職人の真下一郎が、タラバガニの脚身とアボカドをマヨネーズであえた巻き寿司を作りました。海苔を内側に巻くのは、アメリカ人が海苔を避ける様子を見た職人の工夫だとされています。1980年代までにアメリカ各地に広がり、日本にも伝わった、と書かれています。つまり逆輸入です。

おまけに、発端のアルジェリアンソース自体も、名前のとおりとは言い切れません。フランス語版ウィキペディアは、いま流通している工業製品版について、モロッコ系ベルギー人が創業したNawhal’sという会社が作った、ベルギー由来のものである可能性が高いとしています。「本家」を名乗る側も、たどると出どころがずれています。寿司もソースも、同じことが起きているようです。

まとめ

材料表と値段を並べてみて、マヨネーズ系・チーズ系・肉系については、海外の「進化系寿司」と日本の回転寿司の品はかなり近い、という印象を持ちました。一方で、果物を巻くものには対応する品が見つからず、値段は1ピースあたりで2倍以上の開きがありました。

邪道かどうかは人それぞれです。ただ、1963年のロサンゼルスで、日本人の職人がマヨネーズを使った巻き寿司を作っています。そこから数えて、もう63年です。

出典

Sushi Shop 公式サイト「California French Touch」商品ページ

くら寿司 公式サイト メニューページ

OANDA「為替相場 28日(日本時間9時)」

フランス語版ウィキペディア「Sauce algérienne」/英語版ウィキペディア「Algérienne sauce」/日本語版ウィキペディア「カリフォルニアロール」

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