テーブルの脚を4本、ひねるだけだから

――ある親が、組み立てを手伝う子どもに

写真はイメージ Photo by Sleepline on Unsplash

10/27 18:04 / 発信国:アメリカ / 記者:工藤

ロボットがIKEAの「UTTER」を組み立てる競技で2位、所要時間を調べてみた

IKEAに「UTTER ウッテル」という子ども用テーブルがあります。価格は税込1,499円。長さ58センチ、幅42センチ、高さ43センチのポリプロピレン製で、公式サイトにも「工具やネジは必要ありません」と書かれています。天板に脚を4本、ひねって差し込むだけです。

この1,499円のテーブルが、2026年9月27日から10月1日までアメリカのピッツバーグで開かれた国際会議「IROS 2026」で、世界34チームの課題になりました。IROSパナソニック ホールディングス(パナソニックHD)のチームが、34チーム中2位に入りました。

ただ、各社の発表と公式サイトを読んでも、ロボットが何分で組み立てたのかは出てきません。今回は、公表されている数字だけを並べて、どこまで分かるのかを確かめてみました。

競技「Humanoid IKEA Assembly Challenge」とは

公式サイトによると、各チームはヒューマノイド「Unitree G1」(身長1.32メートル)を動かすAIを持ち寄り、人が操縦せずに組み立てさせます。部品が並んだ状態から、部品を見つけて準備する「インベントリ」、脚が天板に付いた「パーシャル」、説明書どおりに完成した「ファイナル」という段階が決められています。最後の段階に届くまでの実時間が短いほど上位です。

ヒューマノイドロボットの手
写真はイメージ Photo by Franck V. on Unsplash

部品やロボットを壊すとその走行は終了。人が手を貸すこと自体は認められていますが、触るたびに点が引かれます。

採点について、公式サイトにはこう書かれています。「Every robot run is judged against a human reference run on the same parts, same scene — outcome and time.」。同じ部品、同じ場面で人がやった基準の走行と、結果と時間で比べる、という意味です。

つまり「人と比べてどうなのか」は、主催者が最初から採点に組み込んでいたことになります。主催者には、Google DeepMindのJie Tanさんや、ロボットメーカーのUnitree、Lightwheel、シンガポール工科大学の関係者が名を連ねています。

公表されている数字を並べてみました

優勝は、三菱電機の米国研究所MERLのチーム「MEL-Craft」でした。MERLの発表では、社員5人とインターン4人の9人が参加しています。

2位のパナソニックHDは、MI本部の社員で構成されたチーム。発表によると、作業の認識と失敗の検知から次の工程を判断する上位のプランナーと、一つ一つの動きを担う下位のポリシーを組み合わせた「階層型のAI制御システム」を作ったといいます。独自のVLAモデルを中核に、GR00Tなどの既存モデルを工程に応じて組み合わせたとしています。部品の把持や挿入、天板の回転・反転といった動作に対応したそうです。パナソニック コネクトグループを中心とした合同チームは7位でした。

なお、日本のProx Industriesも、自社のエンジニアが参加したチーム「RAMEN」が34チーム中2位だったと発表しています。

ここまでが、公表されている事実です。筆者が公式サイト、パナソニックHD、MERL、Prox Industriesの4つの発表を読み比べたかぎり、各チームの所要時間とスコア、比較の基準になった人間の走行時間は、どこにも書かれていませんでした。

人間側の数字も、同じように見当たりません。IKEAの公式ページにあるのは「工具やネジは必要ありません」という組み立て方と、280件のレビューで4.6(5点満点)という評価だけで、何分で組み立てられるかは公表されていません。

「人のほうがまだ速い」も「ロボットが追いついた」も、いまの公表情報では確かめられない、というのが筆者の調べた結論です。順位の数字だけが先に出回っている状態だと思いました。

説明書を読む力でも、差は大きい

手を動かす前の段階なら、人とAIを比べた数字があります。コーネル大学などの研究チームが2026年5月に公開した「Flat-Pack Bench」は、家具を組み立てる動画50本から作った602問で、動画に映った部品や手順をどれだけ理解できるかを測るテストです。

論文とその内容を伝えた記事によると、人(情報科学を学ぶ学生)の正答率は94.18%。これに対し、いちばん成績のよかったAIが41.03%、GPT-5が37.71%、Gemini 2.5 Proが33.72%でした。でたらめに答えた場合が26.41%ですから、まだかなり低い水準です。

これは組み立てそのものではなく動画の理解を測るテストなので、今回の競技と直接は比べられません。ただ、部品の見分けや手順の順番という、人が説明書を見ながら無意識にやっている部分でも、差が大きいことは分かります。

ネットの評判

Xでは、主催のBitRobotやUnitree、ロボット関連の紹介アカウントの投稿が中心で、「ヒューマノイドのIKEAベンチマーク」として歓迎する声が目立ちます。あるユーザーは、ネジをなくさずに説明書どおりに動けるロボットがついに出てきた、と冗談めかして書いていました。一方で、所要時間が公表されていないことへの指摘や、冷めた見方は、筆者が見たかぎり日本語の投稿ではほとんど見つかりませんでした。

組み立てる側の声としては、UTTER自体のIKEA公式レビューが参考になります。「軽くて持ち運びやすい」「脚の端部全体がそのままネジ部分になっているので、緩むことも無く非常に頑丈」という声がある一方で、軽すぎて「子どもがちょっと押すと動いてしまうので危ない」という声もありました。

まとめ

公式ルールには、人の基準走行と比べることが、最初から書かれていました。それなのに、いま表に出ているのは順位だけです。

1,499円、脚4本、工具なし。この3つを覚えておいて、各チームの時間が公表されたときにもう一度見比べると、ロボットがどこまで来たのかがはっきりすると思います。

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