じゃあ答えは、
別のAIに聞くわ
――バグは直さず、質問だけ返ってくる
写真はイメージ Photo by Arnold Francisca on Unsplash
バグを直さないAIデバッガーが話題 でも締め切り前に質問されたい?
バグを直さないデバッグツールが、GitHubで438人に「気になる」を押されている。名前は「Nietzschian Debugger」。不具合の内容を打ち込むと、答えの代わりに質問が返ってくる。それだけだ。えっ、何の役に立つのか。
作ったのはDilawer Shafiqさん。GitHubの説明の1行目は「It won’t fix your bug. It’ll fix you.」(バグは直さない。君を直す)。デバッグの答えを渡すのをやめれば、書く人のほうが強くなる、という考えだ。名前は哲学者のニーチェから借りている。
「そのユーザー、どこが違うの?」と聞き返してくる
使い方は、pipという仕組みで入れて、コマンドに困っていることを書くだけだ。Python 3.10以上が要る。
説明に載っている例が分かりやすい。「一部のユーザーがログインで403エラーになる」と相談する。すると返ってくるのは、先週より前に登録した人と、後に登録した人で、ユーザーの記録そのものは何が違うのか、という問いだ。調べる場所の一歩手前までしか言わない。
厳しさは3段階ある。やさしく聞く「socrates」、標準で前提を容赦なく突く「nietzsche」、心が折れかけた人向けの「zarathustra」。普段は相手の状態を読んで、自動で切り替わる。
お金の話も書いてある。標準で動かすのはAnthropicのClaudeで、APIキーが必要だ。OpenAIやGeminiにも替えられるし、Ollamaを選べば費用はかからない。キーなしで動く体験版もあり、本体は誰でも無料で使える形(MITライセンス)で公開されている。
ネットの評判
作者本人がHacker Newsに投稿したところ、10月28日の時点で213票と66件のコメントが付いた。中身は、わりと厳しい。
あるユーザーは「It’s a trifecta of irony. Not Nietzschean, not anti-AI, and not a debugger.」(皮肉の三冠だ。ニーチェでもなく、反AIでもなく、デバッガでもない)と書いた。反AIをうたいながら、質問を作っているのはClaudeだという指摘だ。READMEに載ったニーチェの絵もAIが描いたものだと書き、「で、反AIって何のことだ」と聞く人もいる。
本当に鍛えられるのか、という疑問も出ている。あるエンジニアは、「分からない」から「どこを見ればいいか」へ進む一番おいしいところを、このツールが代わりにやってしまうと書いた。別のユーザーは、今のAIにこれをやらせると、答えが透けて見える質問をするか、言葉の細かい粗探しに走るかのどちらかになる、と書いている。
ほめる声もある。ゴム製のアヒルに向かって状況を説明すると原因に気づく、という昔からの方法のAI版だと受け取る人がいる。どこを見るべきかを知らない若手には効くという意見も出ていた。日本では、GIGAZINEの記事にはてなブックマークが20件。「答えを教えず詰め寄ってくるAIデバッガ怖すぎるw 思考力を奪わない教育的アプローチとしては秀逸」という声の隣に、「仮想端末を繋いで別のAIに答えさせるわ」という声が並んでいる。
「なぜ」と聞いた人は、もう点を取っていた
このツールの土台になっているのは、Anthropicが2026年1月29日に出した調べだ。52人のエンジニアを、くじ引きで2つに分けた。Pythonの「Trio」という、初めて触る部品集(ライブラリ)で課題をやらせ、あとでテストをした。AIを使った側の平均は50点、使わなかった側は67点。17点の差が付いた。速さは少し上がったが、差と言えるほどではなかった。
ただ、同じ調べには、もう一つ書いてある。AIにコードを書かせて済ませた人は40点に届かなかったが、AIに「なぜそうなるのか」を聞きながら進めた人は、65点以上を取っていた。
答えを返さない専用のツールを入れるより先に、今使っているAIに「なぜ」と足すだけで、点は上がっていた。
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