ベッドまで揺れて
眠れないんだけど

――ある住民が、隣にできたデータセンターを指して

写真はイメージ 撮影 NASA/Public domain(ウィキメディア・コモンズ)

10/28 18:06 / 発信国:イギリス / 記者:工藤

イギリスでデータセンター反対が広がる 首相は「今は止めない」と答えた

イギリスのスラウという町には、データセンターが40か所ある。世界で2番目に大きい集まりだ。そこに住む女性(記事では仮名)の家の外で音を測ったら、平均62.8デシベル、ピークで66.8デシベルだった。WHOは「寝室を守るなら40デシベル未満」としている。これで眠れるだろうか。

AIの新機能のニュースはにぎやかだ。その計算をしている建物の隣では、まったく別の話が起きている。

夜中も止まらない音と、三重窓という答え

スラウは約34平方キロに16万人が住む町で、そこにヨーロッパ最大のデータセンター群ができた。

取材を受けた女性は「部屋ぜんぶ、ベッドまで揺れているのに、どうやって眠るのか」と話した(訳)。「1年で暮らしの質がこわれた」とも言う。

では、市はどう答えたのか。示したのは、エアコン、三重のガラス窓、防振の装置、または引っ越しだった。音を止めるのではなく、住む側が窓を替える話になっている。9月24日には、無所属のチャンドラ・ムヴァラ議員が市議会に動議を出した。データセンターが集まった地域への影響を、まとめて調べるよう政府に求めるものだ。地元の反対グループができたのは7月だ。

首相は「今は止めない」と答えた

9月、ブライス・アンド・アシントン選挙区のイアン・ラベリー議員が、新しいAI向けデータセンターの許可をいったん全部止めるモラトリアムを求めた。議会に出した動議には24人が署名した。地元のスリークバーンとキャンボイズの周りに、3つの巨大な施設の計画があるという。

ところが同じ議員は2025年10月、ブラックストーン傘下のQTSが進める100億ポンドの計画を「great news」と歓迎していた。自分の選挙区がAI成長特区に入ったことも喜んでいた。歓迎した人が、1年で止めろと言い出したのだ。

アンディ・バーナム首相の答えは短い。「現時点では、モラトリアムまではやらない」。国の方針づくりも遅れている。政府は2025年11月、3か月以内にデータセンターの国家政策声明の案について意見を聞くと約束した。10月23日の時点で、まだ出ていない。カニシュカ・ナラヤンAI担当相の答えは「そのうち」だった。

推す側の数字もある。北東部のAI成長特区には、300億ポンドの民間投資と5,000人の雇用が結び付けられている。マイクロソフトはリーズの計画について「95%以上の時間は空気で冷やす」と説明し、使う電気は全部、再生可能エネルギーで埋め合わせるとしている。

日本でも、駅前の52.7メートルが裁判になっている

遠い国の話ではない。千葉県印西市では2026年3月5日、千葉ニュータウン中央駅前のデータセンター計画をめぐり、近くに住む10人が建築確認の取り消しを求めて千葉地裁に訴えた。地上6階、高さ52.7メートル、延べ床面積は約3万平方メートルの計画だ。

争いの中心は、用途の分類だ。事業者は「その他(データセンター)」とし、住民側は「工場もしくは倉庫にあたる施設」だと言う。駅の周りの地区計画は、工場と倉庫を建てられない決まりになっている。

そもそも建築基準法に、データセンターの規定がない。だから「事務所」などとして扱われ、工場や倉庫より緩い決まりで、住宅街の近くにも建てられる。原告の谷川宗和さん(53)は「駅前でDC建設が認められれば『あしき前例』となり、どのような場所でもDC建設ができてしまう可能性がある」と話す。隣の白井市富ケ谷でも、同じような裁判が続いている。東京都は3月、都道府県として初めて、事業者に住民との早い対話を求める指針をつくった。

ネットの評判

イギリスでいちばん形になった声は、署名だ。マイクロソフトがリーズのスケルトン・グランジに計画する施設には、4万2,000人以上が反対の署名をした。理由として多いのは、電気と水を使う量だという。9月12日にはリーズの広場に約250人が集まり、参加したケイト・ピアソンさんは「これほど環境を壊すような巨大なデータセンターが必要だとは思わない」と話した(訳)。Instagramでは、ロンドンのブリック・レーンやデヴォン、スラウの地元グループがそれぞれ発信している。11月6日と7日には、10か国の42団体がそろって行動すると言っている。一方で、投資と雇用を歓迎する声も残っていて、意見は割れたままだ。

最後にもう一つ。エセックス州ラウトンで進んでいた「イギリス最大のAIデータセンター」から、マイクロソフトが10月18日に手を引いた。理由は住民の反対ではなく、送電網から十分な電気を引けないことだった。

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