その手つき、
撮らせてもらえませんか
――あるAIの会社が、町の理髪店に
写真はイメージ Photo by Andrea Donato on Unsplash
インドの理容師が額にカメラ AIは勝手に賢くなったわけじゃない
インドのベンガルールで4年、髪とひげを切ってきたモハメド・アシムさん(22)は、いま額に小さなカメラを付けて仕事をしている。ヘアバンドで留めた1台が、はさみを持つ手元を1日5〜6時間撮る。その映像は、フィジカルAIの教材として、技術系の会社や研究機関に売られていく。で、いくらもらえるのか。
8〜10時間撮って、750〜1,500円
映像を集める会社のひとつ、ラシュダン・テクノロジーズの共同創業者シャヒル・バイグさんは、BBCにこう話した。「記録した作業8〜10時間に対して、5〜10ドルを払う」。日本円だと約750〜1,500円だ(1ドル=150円で計算)。
もう少し条件のいい人もいる。アナンタプールのグンタカルで理科を教えるジョリー・アリフルさんは、1日3〜5時間、料理や洗濯、掃除を撮る。時給は2〜3ドル(約300〜450円)。本業と掛け持ちで、「両方とも、正直、すごくうまく回っている」と話している。
アメリカのNPRによると、タミルナド州カルールにある会社オブジェクトウェイズでは、24歳のスネハ・ジェガディシュさんが1日2〜3時間撮って月120ドル(約1万8,000円)。この会社は、撮影用にリビングや台所、寝室をそろえたスタジオまで持っている。
なぜ、わざわざ人の手元を撮るのか。インド理科大学院(Indian Institute of Science)のプラトーシュ・A・P教授は、NPRにこう説明した。「いまのAIは、体のない脳だと思えばいい。体がないから、物理的に動く力を持っていない」。手の使い方を教える映像は、ネットを探しても落ちていない。だから、撮るしかない。業界では、こうした作業者本人の目線の映像をエゴセントリックデータと呼んでいる。
ロサンゼルスでは、2時間の映像に1万2,000円
では、インドだけの話なのか。違う。ロサンゼルスでも、人材サービスのインスタワークが台所の片づけなどを撮らせ、2時間分の映像に80ドル(約1万2,000円)を払っていると3月に報じられた。別の新興企業スナインでは、家事を撮って1,200ドル(約18万円)を受け取った人もいる。
会社も撮る内容も違うから、時給をそのまま並べることはできない。ただ、同じ「ロボットの教材」という市場に、この2つの値段が同時に立っている。データを集める市場は、2030年に170億ドル(約2兆5,500億円)規模になりうるという見通しもある。ベンガルールとサンフランシスコに拠点を持つヒューマン・ラボの創業者マニシュ・アガルワルさんは、ラテンアメリカと東南アジアに、データを集める人が9万6,000人いるとBBCに話した。
「自分の墓の中で働いている」
ベンガルールの路上で花輪を作るポンニさん(55)は、頭にスマホを留めて作業を撮る仕事を受けた。アルジャジーラに「私と似た仕事をするかもしれない次の世代は、困ることになる」と話している。
ナグプールの繊維工場で働く機械技師アシシュ・ナラヤンさん(30)の言葉は、5月22日のインディアン・エクスプレスの見出しになった。「自分の墓の中で働いている」。工場側は、作業を良くするためだと説明したという。
当の本人たちが、全員嫌がっているわけでもない。チェンナイで家事を撮るナギレディ・スリラミャチャンドラさん(25)は1時間250ルピー(2.6ドル、約390円)を受け取り、アルジャジーラに「家事をするだけで1時間250ルピーくれるところが、ほかにある?」と話した。縫製と裁断を10年やってきたモハメド・アルマンさんも、BBCに「自分には単純な話だ。これは生き延びるためだ。ビハールに家族がいる」と話している。
ムンバイのタタ社会科学研究所のビノ・ポール教授は、労働者が自分の加担したことに気づくころには、事態は行き過ぎているかもしれない、とBBCに指摘した。アルジャジーラが引いたNITIアーヨーグの報告書は、「AIがインドの4億9,000万人のインフォーマル労働者にどう役立つかには、ほとんど注意が払われていない」と書いている。
ネットの評判
工場の作業員が頭にカメラを付けて縫製機を動かす映像がSNSで広がり、コメント欄には「AI用の映像集めではないか」と心配する声が並んだ。あるユーザーは「第一段階、人間をロボットのように働かせる。第二段階、人間にロボットの働き方を教えさせる。第三段階、人間を全員解雇する」と書いた。一方で、米スラッシュギアは、この映像のカメラが本当にAI用かは確認できておらず、作業を見張る管理の道具である可能性も残ると書いている。インドのWIONは、労働者を支える団体やデジタル権利の団体が、体の動かし方という財産に対価が払われていないと訴えていると伝えた。
インドで8〜10時間撮った映像に750〜1,500円、ロサンゼルスで2時間撮った映像に1万2,000円。同じフィジカルAIの教材として、いま集められている。
人口は減ったのに、
市税は13年ぶりの高さ
――室蘭市の2025年度決算
賞をくれなかったから、
もう来なくていい
――トランプ米大統領が、ノルウェーに
VIVANTの廃工場に、日本語の安全看板
TBS系『VIVANT』第21話/週刊女性PRIMEの報道
- The Indian workers filming their work to train AI(BBC、Yahoo!ニュース豪州の転載)
- The Indian workers filming their work to train AI(BBC、finwireの転載)
- To train robots, AI companies are paying people in India to film themselves doing chores(NPR、アイオワ公共ラジオの転載)
- To train robots, AI companies are paying people in India to film themselves doing chores(NPR、WWNOの転載)
- Photos: India's workers are training AI robots to take their jobs(アルジャジーラ、2026-06-11)
- Why hundreds of people in L.A. are strapping cameras on their bodies to do chores(AOL、2026-03-12)
- Viral Video Shows Workers Wearing Cameras That May Be Training AI To Replace Them(SlashGear)
- Training their AI replacement? Factory workers in India seen with head-mounted cameras(WION)
- Indian Workers Wearing Head-Mounted Cameras To Train Their AI Replacements(iHeart、2026-04-20)
- 'I'm working in my own grave': Workers in India are training robots that may replace them(インディアン・エクスプレス 2026-05-22、Vocab24の転載・冒頭のみ)
- Indian workers strap on cameras to train physical AI models in global data rush
- The Indian workers training AI robots to take their jobs