一時的だから、
心配しないで
――ロシア政府が、JTに
写真はイメージ Photo by Haim Charbit on Unsplash
プーチン氏がJTのロシア4工場を「一時管理」に JTはいくら失うのか
ロシアのプーチン大統領が11月5日、JT(日本たばこ産業)のロシア子会社4社を、ロシアの会社の一時管理下に置く大統領令に署名した。工場は4か所、働く人は約4,000人。ロシアはJTの売上全体の約1割を稼ぐ市場だ。株はすぐ動いた。5日の東証の終値は7,769円。取引所の外で動く私設取引(PTS)では、1,500円安の6,269円まで売られた。1日に動ける値幅の下限、ストップ安だ。
接収されたのか。そう読みたくなるが、少し違う。所有権はJTに残る。移るのは、経営の権利だけだ。
工場は止まらない。移るのは経営の権利だけ
対象は、ペトロ、JTIドンスコイ・タバク、JTIエレツ、クレス・ネヴァの4社。それぞれの株式100%が、「インダストリアル・アセッツ」というロシアの会社の管理下に入った。ロシアのRIAノーボスチや経済紙コメルサントが伝えている。工場があるのは、サンクトペテルブルク、ロストフ・ナ・ドヌー、レニングラード州、リペツク州。コメルサントは、操業はそのまま続いていると報じた。
ロシア大統領府のペスコフ報道官は、この仕組みは元に戻せると説明した。ただ、今は外国の持ち主に経営権を戻す前提は見えていないとも話した(経済紙ベドモスチ)。
JTは「現在、従業員をはじめとするステークホルダーを最優先に、状況および今後取り得る選択肢について精査している」とコメントした。先に名前が出たのは、株主ではなく従業員だった。
では、だれの財布が痛むのか
いちばん早く効いたのは株だ。1株で1,500円安。JTを100株持っていた人なら、一晩で15万円分が消えた計算になる。痛むのは個人の株主だけではない。JT法があるため、日本政府はJTの株を手放せない。JTの開示では、2025年度末で発行済株式の33.34%を政府が持つ。株価が下がれば、国の資産も同じだけ減る。
ロシア側から見れば、一時管理は、欧米がロシアの資産を凍結したことへの対抗策だ。2023年4月に作られ、対象は非友好国の企業。日本も入る。世界的なたばこ大手が対象になるのは初めてだという(時事通信)。
「一時」は、どれくらい続くのか
先に同じことをされた会社がある。デンマークのビール大手カールスバーグだ。2023年7月、ロシア子会社のバルチカが一時管理に入った。工場は動き続けた。カールスバーグはこれを違法な奪取と呼び、資産を約10億ドル(今のレートで約1,570億円)分、帳簿から落とした。
一時管理が解かれたのは2024年12月2日。1年4か月あまりあとだ。その翌日、カールスバーグはバルチカの株を、長く働いてきた社員2人の会社に売ると発表した。
管理を任された「インダストリアル・アセッツ」が何者かは、現地の報道が食い違う。モスクワ・タイムズは、2026年9月に登記されたばかりの会社で、元FSB(ロシア連邦保安庁)職員が持ち主だと伝えた。
11月6日午前8時すぎの時点で、JTから5日のコメント以降の発表は確認できていない。
ネットの評判
NHKの記事を、はてなブックマークで188人がブックマークした(11月6日時点)。目立つのは日本政府の対応への批判だ。領土でも、拘束された日本人のことでも強く出られないまま、企業の資産まで取られた、という見方。JTの大株主は財務省だから、税金で持つ資産を取られたのと同じ、という声もあった。
一方で、冷静な見方もある。ロシアは喫煙率が高く、JTの利益を支えてきた市場だから、簡単には引けなかったのだろう、というもの。JTはこのリスクを織り込んでいたはずだ、と評価する声も出ていた。
カールスバーグのときも、工場は動き続けた。その「一時」は1年4か月で終わり、解けた翌日に、ロシア事業は売られた。
のどかな場所なんだから、
もう勘弁してほしい
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