返すために、また借りた。
これ、いつ終わる?

――カンボジア、借金の総額は国のGDPの約3分の1

写真はイメージ Photo by FIN on Unsplash

11/6 19:00 / 発信国:カンボジア / 記者:ミヤムー

カンボジアのマイクロファイナンスはなぜ借金地獄に? 返済が月収を超えた

月収180ドル(約2万8,000円)の人に、月200ドル(約3万1,000円)の返済。カンボジアで実際に起きた話だ。これ、どうやって払うんだろう。

ルン・サムアットさん(45)は、マイクロファイナンス機関のアムレットから1万2,000ドル(約189万円)を借りた。使い道は、家を建てる費用と、前に借りたバイクのローンの返済。担保は縦10メートル横20メートルの土地と、その家だ。夫が肝炎になって亡くなった。工場勤めの月180ドルでは、月200ドルの返済が続かない。いまは家を離れ、プノンペンでマスクを売っている。取り立ての電話は取らない。米国の放送局VOAが2024年4月7日に伝えた。

上の動画は、カンボジアの少額融資を追ったドキュメンタリー「Debt Inc.」だ。制作はRuom。2026年10月7日にYouTubeで公開された。過去5年で16万7,000世帯以上が、返済のために土地を売ったと伝えている。

貸したお金は、医療費と前の借金に消えた

制度の考え方は単純だった。低所得の世帯に200〜500ドル(約3万1,000円〜約7万9,000円)を貸し、商売を立ち上げてもらう。所得が増えて、貧困から抜け出す。世界銀行の数字では、銀行のサービスを使えない人が17億人以上いる。悪い話には見えない。

そうならなかった。豪ディーキン大学でお金の仕組みを研究するロイポン・リウ上級講師は、前提が間違っていたとニューズウィーク日本版に書いている。「貧しい世帯は資金が足りないだけで、もうかる投資先がある」という前提だ。実際には露店や小さな農業が多く、もともと競争が激しい。融資が増えれば、同じ客を取り合うだけになる。

借りたお金の行き先も違った。医療費、学費、食費、住居費、そして前の借金の返済だ。カンボジアの717世帯を調べた研究では、借金の返済に回った融資の割合が2012年の3.45%から2022年には34.8%に増えた。6.1%の世帯は、返すために土地を売っている。

担保のない人に貸す、という約束も崩れた。人権団体LICADHOと土地問題を扱うSTTは、2019年8月7日の報告書でこう指摘した。200万人を超える借り手が計80億ドル(約1兆2,600億円)以上を抱え、国のGDPの約3分の1にあたる。1人当たり平均は約3,370ドル(約53万円)で、世界で最も多い。プノンペン以外の全州で、5割を超える借り手が土地の権利証を担保に入れていた。

日本のリボ払いは、10月から18%になった

遠い国の話だろうか。JCBは2026年10月1日の利用分から、ショッピングリボ払いの手数料率を実質年率18.00%に変えた。それまでは8.04〜15.00%だった。理由は「経済環境の変化や金利動向」だとJCBは説明している。バングラデシュが少額融資に定める上限は24%。遠い数字ではない。

借りる人も増えた。日本経済新聞は、貸金業者から無担保・無保証で3件以上借りている人が2026年1月末で151万人に上り、2014年以来12年ぶりの水準だと報じた。数字は日本信用情報機構のものだ。共同通信は2025年12月6日、この多重債務の人数が2025年3月末で147万人、2021年3月末の114万人から4年で約3割増えたと伝えた。多重債務が一因とされる自殺者は、2024年に853人。金融庁は、借りたお金の使い道の確認を強める監督指針の改正も検討しているという。

借りる理由が「商売のため」から「生活のため」に変わると、返す原資がなくなる。金融庁は10月28日、多重債務問題対策推進懇談会を開いた。議題は「多重債務者対策をめぐる現状及び施策の動向等について」だった。

ネットの評判

ニューズウィーク日本版の記事は、はてなブックマークの人気エントリーで総合1位になり、307ユーザーが登録して93件のコメントが付いた。多かったのは、制度より運営者を責める声だ。あるユーザーは「本来ユヌスが提唱してたのは単利・低金利の起業支援だけど、少額融資が儲かると知ると、複利・高金利で貧困層をカモにするのが大量に現れて社会問題化した」と書いた。「営利目的のプレイヤーが参入、スケールアップして審査とサポートがどこかに行っちゃった」という見方も並ぶ。

一方で「借りた金を返せるならそもそも貧困層なんかにいないのでは」と、制度の根っこを疑う声もあった。擁護もある。グラミン銀行の年率20%について「デフレが染み付いた日本人の感覚で暴利と断ずるのはおかしい」という意見も出ていた。

月収2万8,000円で月3万1,000円を返す方法は、たぶんない。だから、また借りる。カンボジアで借金の返済に回った融資は、10年で3.45%から34.8%になった。10件のうち3件は、商売のためではなく、前の借金のために出ている。

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