子どもが引き取って
くれるでしょ
――需要を生む「5つ目のD」、Delusion(幻想)
写真はイメージ Photo by Sebastian Schuster on Unsplash
アメリカで急増する「セルフストレージ」、日本のトランクルーム料金を計算してみた
アメリカには、セルフストレージ(利用者が自分で荷物を出し入れする貸し収納スペース)の施設が5万か所以上あります。調査サイトStorageCafeが2026年9月時点でまとめたところでは、その総床面積は22億平方フィート(約2億平方メートル)を超えています。
GIGAZINEが2026年11月1日に伝えた記事によると、アメリカのセルフストレージ施設の数は、スターバックス、マクドナルド、ウォルマート、ホームデポ、ドミノ・ピザ、ダンキンドーナツ、コストコの全店舗数を足した数を上回るそうです。元になっているのは、米誌ニューヨーカー2026年9月21日号に載ったデイヴィッド・オーウェン氏の記事です。
同記事では、世界のセルフストレージ容量の約90%がアメリカに集まっていて、業界の年間収益は400億ドルを超えると推定されています。オーウェン氏は、アメリカ文化の二大柱は教会とセルフストレージである、とまで書いています。
筆者が気になったのは、その先です。物を減らすミニマリズムが語られる日本では、この商売は縮んでいるのでしょうか。公式の料金と公表データを並べて、計算してみました。
需要を押し上げる「4つのD」と、5つ目のD
セルフストレージの需要を押し上げる要因は、業界で「4つのD」と呼ばれてきました。Death(死別)、Displacement(転居)、Divorce(離婚)、Downsizing(住まいの縮小)です。人生が動くときに、荷物の置き場所が足りなくなるという整理です。
オーウェン氏は、これに5つ目のDとしてDelusion(幻想)を挙げています。子どもたちが引き取ってくれるだろうという親の思い込みが、流行遅れの家具を倉庫にためこませる、という見方です。
このほか記事では、新型コロナによる在宅勤務・在宅学習の広がり、住宅ローン金利の上昇で広い家への引っ越しを先送りした人の増加、住宅所有者組合(HOA)の規制で敷地内にボートやキャンピングカーを置けなくなった事情などが、追い風として挙げられています。
1畳あたりで比べてみた
キュラーズの公式サイトは、東京都内の屋内型トランクルームの月額目安を、0.2畳で2,000〜4,000円、0.5畳で7,000〜1万2,000円、1.0畳で1万5,000〜2万5,000円としています。
一方、StorageCafeが示すアメリカの平均は、2026年9月時点で、10フィート×10フィートの空調なしユニットが月119ドル、空調付きが月134ドル。5フィート×5フィートが月52ドル、5フィート×10フィートが月74ドルです。
10フィート四方は約9.3平方メートル。1畳を1.62平方メートルで換算すると、約5.7畳になります。七十七銀行が公表した2026年10月31日の米ドル仲値157.54円で計算すると、119ドルは約1万8,700円。1畳あたり約3,300円です。
東京の屋内型は1畳で1万5,000〜2万5,000円ですから、1畳あたりの単価はおよそ4.5倍から7.6倍。逆に、アメリカの10フィート四方と同じ約5.7畳を、東京の1畳2万円という単価で借りたとすると、月およそ11万4,000円になります。同じ広さで月約1万8,700円と約11万円。筆者には、この差が一番こたえました。
それでも、日本の市場は伸びている
高いなら日本では流行らない、と言いたくなるところですが、公表データは逆を示しています。
矢野経済研究所は、国内の収納サービス(レンタル収納・コンテナ収納)市場の規模を、2024年度は前年度比6.2%増の878億7,000万円の見込み、2025年度は同4.4%増の917億8,000万円の予測としています。
利用する人も増えています。同社が2025年2〜3月に全国の20〜70歳代の男女1万人に行ったアンケートでは、トランクルームの利用経験率は7.8%で、2023年の調査から1.4ポイント増。レンタル収納は6.0%で1.8ポイント増、コンテナ収納も6.0%で1.6ポイント増でした。
供給側も止まっていません。エリアリンクの発表では、同社のハローストレージは2026年4月時点で3,011物件・13万1,936室。2029年末までに総室数20万室を目指すとしています。
ただし、やめる理由もはっきり出ています。同じアンケートでは、利用をやめた理由として「月額費用が高いから」が、3つのサービスに共通して3割を超えました。
なお、アメリカ側の普及の度合いは調査によって幅があります。StorageCafeは、アメリカ人のおよそ3分の1が現在利用しているとしていますが、キュラーズのサイトはアメリカの普及率を10世帯に1世帯と書いています。どちらを取っても、日本の7.8%より高い水準です。
ネットの評判
この話題は、はてなブックマークの人気エントリーに入りました。筆者が確認した時点でのブックマークは71件です。
多かったのは、土地が広いアメリカだからできることだ、という受け止めでした。日本のいわゆるミニマリズムは、思想というより住まいの狭さに迫られたものだ、という指摘もありました。
料金に触れた書き込みもあります。あるユーザーは、テキサスでは10平方メートルほどの収納が月70〜80ドルなのに、日本はその3倍はすると書いていました。日本では家賃に比べて割高で現実的でないという声も見られました。
一方で、日本にも蔵という収納の文化があったと振り返る声や、備蓄を重んじる考え方が背景にあるのではないかという見方も出ていました。アメリカの消費量は、あの広い家でも収まらないほどだという指摘もありました。
まとめ
数字を並べてみると、アメリカと日本の違いは、物の量だけではなく1畳あたりの値段の重さにも表れていました。同じ約5.7畳が、アメリカの平均では月約1万8,700円、東京の屋内型の相場なら月約11万円です。
それでも日本の市場は年4〜6%台で伸び、利用経験率も上がっています。物を減らす流れと、家の外に預ける流れは、どうやら同時に進んでいるようです。
月1万5,000円を払って1畳を借り続けるか、その家具を手放すか。筆者なら、1年分で18万円という数字を先に出してから決めたいと思いました。
出典
矢野経済研究所「収納サービス(レンタル収納・コンテナ収納)市場に関する調査」プレスリリース(2025年)
矢野経済研究所「収納サービスに関する消費者アンケート調査」プレスリリース(2025年)
エリアリンク株式会社 プレスリリース(2026年5月12日、PR TIMES)
キュラーズ公式サイト「トランクルームの料金相場はどのくらい?」および「トランクルーム市場規模」
七十七銀行「米ドル対円相場(仲値)一覧表(2026年)」
StorageCafe「How much does a storage unit cost?」「Self Storage Industry Trends」(2026年9月時点)
GIGAZINE「なぜアメリカにはあんなにたくさん普段使わないモノを収納するための『セルフストレージ施設』があるのか?」(2026年11月1日)
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- なぜアメリカにはあんなにたくさん普段使わないモノを収納するための「セルフストレージ施設」があるのか?(GIGAZINE)
- 収納サービス(レンタル収納・コンテナ収納)市場に関する調査を実施(2025年)(矢野経済研究所)
- 収納サービスに関する消費者アンケート調査を実施(2025年)(矢野経済研究所)
- 日本最大級のトランクルーム「ハローストレージ」全国3,000物件を突破(エリアリンク/PR TIMES)
- トランクルームの料金相場はどのくらい?(キュラーズ)
- トランクルーム市場規模(キュラーズ)
- 米ドル対円相場(仲値)一覧表(2026年)(七十七銀行)
- How much does a storage unit cost?(StorageCafe)
- Self Storage Industry Trends(StorageCafe)
- はてなブックマーク 該当エントリーのコメント一覧
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