やりがいで
働いてるわけじゃない

――働く60歳以上の、いちばん多い答え

写真はイメージ Photo by Jonathan Kemper on Unsplash

10/29 17:01 / 発信国:日本 / 記者:工藤

高市首相「働いていただく」投稿が炎上 働く高齢者本人の答えは

「ご高齢の方などで意欲のある方に働いていただくことは、社会・経済の活力の観点からも、ご本人の健康ややりがいなどの観点からも、重要です」。高市早苗首相が10月25日、自分のXにこう書き出す900字を超える投稿をした。コメントは約9,000件。ほとんどが怒りだった。

投稿には、2025年の就業率も並んでいた。60〜64歳が約75%、65〜69歳が約55%、70〜74歳が約36%、75歳以上が約13%。今後も上がっていくことが期待される、と書かれていた。

「収入のため」が55.1%

怒りの中身は、ほぼ一つに集まっている。「働きたいんじゃなくって、働かざるを得ないだけって人も多いのに、勝手にやりがいとか言うんじゃないよ」。こういう書き込みが並んだ。

数字も、その言い分の側にある。内閣府の高齢社会対策総合調査(令和6年度)で、収入のある仕事をしている60歳以上に理由を聞くと、「収入のため」が55.1%でいちばん多かった。「働くのは体によいから、老化を防ぐから」は20.1%、「自分の知識・能力を生かせるから」は12.4%。首相が先に出した「健康」「やりがい」は、本人たちの答えでは2割と1割なのだ。

そこへ、1年前の「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます。働いて働いて働いて働いて働いてまいります」が蒸し返された。10月2日のG7オンライン会合を欠席した件も重なっている。燃える条件はそろっていた。

4カ国で「働きたい」がいちばん多いのは、日本

では、みんな働きたくないのか。同じ内閣府の別の調査を開くと、景色が少し変わる。

令和7年度の「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」。日本、アメリカ、ドイツ、スウェーデンの65歳以上に、これから収入を伴う仕事をしたいかを聞いたものだ。「したい(続けたい)」と答えたのは、日本が39.0%。アメリカは24.3%、ドイツは19.8%、スウェーデンは19.1%だったと共同通信が伝えている。日本が、4カ国でいちばん高い。

国内の調査も近い。令和6年度の調査で「何歳ごろまで収入のある仕事をしたいか」を聞くと、「働けるうちはいつまでも」が22.4%。いま仕事をしている60歳以上に限れば、8割を超える人が70歳より先まで働きたいと答えている。

もちろん、働きたい理由の48.2%は「収入がほしいから」だ。生活のためという部分は変わらない。でも「まだ働きたい」と答えた人たちの声は、炎上のあいだ、ほとんど出てこなかった。

ネットの評判

Xでは、投稿のコメント欄に約9,000件が付き、首相の過去の言葉をもじった「働かせて働かせて働かせて働かせて働かせてまいります」が並んだ。G7欠席と結びつけて「働かない、働かない、働かない、働かない」と書く人もいた。一方で、評価は落ちていない。毎日新聞の調査(10月24・25日)で内閣支持率は45%、不支持は41%。テレビ東京と日本経済新聞社の調査(10月23〜25日)では内閣支持率が62%で、9月から横ばいだった。Xの怒りと、全体の数字はずれている。

働きたい人の壁は、4月に動いていた

では、本気で働きたい高齢者にとって、いちばんの障害は何か。お金だ。

机に置かれた小銭と電卓
写真はイメージ Photo by Aaron Lefler on Unsplash

在職老齢年金という仕組みがある。働くほど年金が削られるので、「働き損」と呼ばれてきた。2026年4月から、その基準額が月51万円から月65万円に上がったが、炎上のなかではほとんど触れられていない。

厚生労働省の試算では、働きながら年金を止められる人は約50万人から約30万人に減る。止められる総額も、約2,900億円まで縮む見込みだ。

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