においで分かるなら、
検診はいらない?
――その答えは、作った会社が先に出している
写真はイメージ Photo by Louis Reed on Unsplash
がんを嗅ぎ分ける役が、犬と線虫からセンサーに移ろうとしている
太陽誘電が、尿のにおいからがんのリスクを調べる試作機を公開している。場所は幕張メッセ、会期は10月13日から16日まで。「デジタルイノベーションの総合展」CEATEC 2026での展示だ。会社はこれを「におい×AIで挑む『がん』の早期発見 ~兆しを嗅ぎ取る0次スクリーニング~」と呼ぶ。CEATEC AWARD 2026の優秀賞をとった。
このセンサーの出番は、これまで工場だった。設備の異常を、においの変わり方から見つける使い方だ。これを人の尿に向けてみたら、手元で計算するエッジ処理のAIでも、がんのリスクを高い精度で見分けられた。そこから機器の開発が始まった、とAI Watchは伝えている。
で、何がそんなに新しいのか。がんの見つけ方を、古い順に並べてみる。
日本のがん検診は、車に乗ってやってきた
1958年、日本対がん協会ができた。1960年には、世界初の本格的な胃がん検診車「日立号」ができ、宮城県の住民検診に使われた。車が、人のところまで出かけていった。

1983年には老人保健法ができ、検診が全国に広がる。最初は胃がんと子宮がん。1987年に肺がんと乳がん、1992年に大腸がんが加わった。
今、国が勧めている検診は5つだ。胃がんは50歳からX線か内視鏡。大腸がんは40歳から便潜血検査。肺がんは40歳から胸部X線。乳がんは40歳からマンモグラフィ。子宮頸がんは20歳から細胞診(30歳からHPV検査を選べる市区町村もある)。どれも、体の中を画像で見るか、体から取ったものを調べる検査だ。においで探す検査は、この5つに入っていない。
先に気づいていたのは、犬と線虫
1989年4月1日、医学誌ランセットに1通の手紙が載った。ある女性の脚のほくろを、飼い犬がしつこく嗅ぎ続ける。気になって医者にかかったら、悪性黒色腫(メラノーマ)だった。犬が鼻でがんを見つけたかもしれないという、最初の公式な報告とされている。
では、犬は何を嗅いだのか。がんの人の尿には、においのもとになる成分が出る。線虫を使う尿のがん検査「N-NOSE」のHIROTSUバイオサイエンスによると、線虫は23種類のがんに反応する(2024年12月現在)。感度は88.57%、特異度は91.21%。生き物の鼻でがんを探す検査は、もう売られている。
においの受け取り口の数も違う。九州大学の資料では、人は約350種類、線虫は1,200種類以上。犬は約800種類とよく言われるが、出どころは確かめられなかった。
センサーが、鼻の代わりをする
そして2026年。太陽誘電は、生き物の鼻をセンサーに置き換えようとしている。においの分子に反応する膜を16種類並べ、反応の違いをAIに覚えさせる。測った数値ではなく、「ふだんと違うかどうか」を答えとして返せる、と会社は説明している。
これで検診がいらなくなるのか。そこは会社自身が否定している。狙いは「がん検査の代替ではなく、日常生活の中で異常の兆候を検知」することだと書いている。検診や診断の前に、気づきを一つ置く。それが「0次スクリーニング」だ。
ただ、機器はまだ研究と開発の途中だ。いつ使えるようになるかは、出典にあたっても分からなかった。作っているのは2種類。病院などに置くものと、家庭用の簡単なものだ。60年前は、がんを探す装置が車に乗って人を迎えに来た。いま作られているのは、家に置く側の機器だ。
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- スポットライト:未踏のにおい分野を切り拓く、次世代センシング技術(前編)|太陽誘電株式会社
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- がん検診について(国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ)
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- 日本対がん協会60周年
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- 線虫がん検査N-NOSEとは(HIROTSUバイオサイエンス)
- HIROTSUバイオサイエンス 医療関係者向け情報
- PRESS RELEASE(2014/04/23)線虫の嗅覚受容体に関する研究(九州大学)
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