エビ10匹を数えるのに、
時間がかかる
――魚屋で二十数年働いた男性が、46歳のとき
写真はイメージ Photo by Etienne Girardet on Unsplash
46歳で若年性認知症 物忘れより先に、二十数年の魚屋の仕事ができなくなった
写真家の下坂厚さん(53)は、46歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断された。きっかけの一つは、物忘れではない。魚屋の作業台で、エビを10匹数えてパックに詰めるのに時間がかかるようになったことだ。
日刊SPA!の10月14日の記事で、下坂さんはこう話す。「10匹数えたはずが数も間違ったり、計算もできないようになりました」
最初に崩れたのは、二十数年やってきた作業だった
下坂さんは大手の鮮魚店で二十数年働き、2019年に仲間と鮮魚店の会社を立ち上げた。その矢先の診断だった。
異変はエビだけではなかった。職場の仲間の名前も出てこない。最初は「体が疲れているのかな」と思っていた。
物忘れ外来に行くと、30点満点の認知機能テストで半分以下しか取れなかった。医師からは「高齢者の方でも20点以上は取れるんですけどね」と言われた。その後、大きな病院でMRIなどの検査を受け、診断が確定した。
なぜ46歳で発症したのか。理由は、今回読んだ出典では分からない。下坂さんの父親も70代前半で同じ病気になり、精神科の病棟に入っていたと日刊SPA!は書いている。
若年性認知症そのものは、めったにない話ではない。2020年3月に厚生労働省の研究班が発表した調査では、18〜64歳の10万人あたり50.9人、全国で約3万5700人と推計された。10万人の市に51人ほど、という数だ。発症の年齢は平均54.4歳で、3割ほどは50歳より前だ。
病名の次に来たのは、住宅ローンだった
診断のあと、下坂さんは二十数年続けてきた魚屋の仕事を辞めた。仲間は「残ってほしい」と引き止めた。それでも辞めた。できなくなっていく自分を見られたくなかったからだ。
では、そのあと何が来るのか。記憶ではなく、お金だった。自分が死んだら保険で住宅ローンが払えるのか。そんなことばかり考えていたという。ハローワークでは障害者雇用枠の話も聞いたが、診断の直後で、障害者手帳はまだ申請できなかった。
妻からは、まだ判断ができるうちに家を売ろうと言われた。住宅ローンがまだ長いからだ。家は、すぐに売れた。
下坂さん一人の話ではない。同じ調査では、65歳未満で発症した人の6割が、発症したときに働いていた。そのうち、同じ職場で働き続けられている人は1割にとどまる。収入が減った人は6割以上、家計が苦しいと答えた人は4割だった。
数字を並べると、若年性認知症はまず「働けなくなる病気」として家計に来るように見える。
いまはデイサービスの正職員で、写真家
診断の直後は、誰とも会いたくなかった。動き出したきっかけは、認知症初期集中支援チームの勧めで始めたボランティアだった。
施設長から「介護の仕事をしてみませんか?」と声をかけられ、週3回のアルバイトを経て、半年後に正職員になった。いまは京都市西院老人デイサービスのケアワーカーだ。2022年1月には写真展とトークショーも開かれ、その動画が公開されている。
では、同じ変化に気づいた人は、どこに行けばいいのか。若年性認知症コールセンター(0800-100-2707、10時〜15時)があり、都道府県と指定都市では若年性認知症支援コーディネーターの配置が進む。厚生労働省は「若年性認知症における治療と仕事の両立支援に関する手引き」も公開している。
エビの数が数えられなくなって魚屋を辞めた人が、いまは介護の現場で正職員として給料をもらっている。
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- 46歳で若年性アルツハイマー型認知症に。「死んだ方がマシかな」仕事を辞め、住宅ローンに襲われた不安の日々(日刊SPA!)
- 同記事2ページ目(日刊SPA!)
- 記憶とつなぐ~ある写真家の物語(きょうと認知症あんしんナビ)
- 若年性認知症について(認知症介護情報ネットワーク DCnet)
- 若年性認知症の本人・家族調査における就労と家計の状況(DCnet)
- 認知症施策関連ガイドライン(厚生労働省)
- 主な認知症施策について(厚生労働省)
- 認知症初期集中支援チームについて(広島県)
- 認知症初期集中支援チーム(健康長寿ネット・長寿科学振興財団)
- 若年性認知症支援コーディネーターが相談に応じます(三重県)
- 若年性認知症コールセンター(認知症介護研究・研修大府センター)
- 下坂厚さん写真展&トークショー(公益社団法人認知症の人と家族の会)
- 下坂厚さんトークショー~記憶とつなぐ~(YouTube)