虫よけと、網戸と、
ゆったりした長い服
――過去最多の流行に、EUの機関が勧めた備え
写真はイメージ Photo by National Institute of Allergy and Infectious Diseases on Unsplash
西ナイル熱がEUで過去最多 89年たっても人のワクチンはない
ヨーロッパで、蚊が運ぶ病気がこれまでにない規模で広がっている。EUの感染症の機関ECDCが、10月15日に数字を出した。10月7日までに、EUの中で西ナイル熱にかかった人は1715人。記録のある中でいちばん多い。亡くなった人は130人。
最も多いのはイタリアの748人。ギリシャの445人とフランスの144人も、それぞれ過去最多だ。オランダは59人。ベルギーでは15人の域内感染が確認された。ベルギーで国内の感染が出たのは初めてだ。ロイター通信によると、過去10年の平均は693人。今年はその約2.5倍だ。
「またパンデミックか」。そう思った人もいるだろう。たぶん、違う。
人から人へは、広がらない
西ナイルウイルスは、蚊と鳥の間を行き来している。ウイルスを持った鳥を刺した蚊が、人や馬を刺す。今年は馬の仲間で511件、鳥で595件の発生も報告されている。
WHOの説明では、普段の接触で人から人へうつった例は記録されていない。輸血や移植によるまれな感染は報告されている。人が次々にうつし合って広がる形ではない、ということになる。ECDCが挙げた備えにも、マスクや人数の制限は出てこない。
ECDCによると、入院した人、神経の症状が出た人、亡くなった人の割合は、この10年の水準を下回っている。感染しても、約8割は症状が出ない。重い形になるのは150人に1人ほどだと、WHOは書いている。
ここまでなら「正体が分かっているだけ、まだマシ」と言える。
名前が付いて89年。それでも
名前の由来は、ウガンダの西ナイル地方だ。1937年、この地方の女性から初めて取り出された。それから89年になる。では、その89年で何ができたのか。馬に打つワクチンはできた。人のワクチンは、WHOによると、まだない。
試験は行われてきた。ただ、北アメリカでの20年あまりを振り返った論文がある。人を対象にした試験で、いちばん大きな最後の段階まで進んだものはない。理由は、流行が年によって散らばって起きることだ。どこで何人が感染するか見えないと、大人数で確かめる試験が組みにくい。
治療も同じだ。WHOによると、効く薬はない。熱や痛みを和らげ、重ければ入院して支える。
日本はどうなのか
日本の蚊からは、このウイルスはまだ見つかっていない。愛知県衛生研究所によると、国内の患者は2005年にアメリカのカリフォルニアで感染したとみられる1人だけだ。ただ、同じ研究所は「日本に生息する多くの蚊がこのウイルスを媒介できる」と書き、国内に入れば流行の可能性があるとしている。だから空港の検疫所が蚊を捕まえ、ウイルスを調べている。この病気は四類感染症に指定されている。
では、なぜ北へ広がったのか。ECDCの今回の発表に、理由は書かれていない。オレ・ホイアー部門長は「西ナイルウイルスの出方は年によって大きく変わり、予測がむずかしい」と話している。ただ同じECDCは7月に、暖かく湿った季節が長くなり、外から来た蚊が、少なかった土地でも増えていると発表した。
ホイアー部門長が挙げた備えは、早く見つけることと、蚊を減らすことだ。一人ひとりには、虫よけ、夕方から夜はゆったりした長い服、網戸、蚊帳、エアコンを勧めている。1937年に見つかったウイルスに、人のワクチンも、効く薬もまだない。手元にあるのは、その5つだ。
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――兵庫県で、1万3000筆の署名に出た声
- West Nile virus: Europe records its worst season ever as cases spread north(Euronews)
- Record-high West Nile virus infections reported amid spread to new parts of Europe(ECDC、2026-10-15)
- Human cases of West Nile virus rise in Europe, with 141 dead in 2026, report says(ロイター配信。Yahooのページは開けなかったため、同じ配信記事で確認した)
- West Nile virus(WHO ファクトシート)
- A 20-year historical review of West Nile virus since its initial emergence in North America(PLOS Neglected Tropical Diseases)
- As sustained heatwaves increase the risk of infectious diseases across Europe, ECDC scales up action and calls for cooperation(ECDC、2026-07-29)
- 蚊媒介感染症(愛知県衛生研究所)
- ウエストナイル熱(West Nile virus disease)感染症クイック・リファレンス(日本感染症学会)
- ウエストナイル熱(ウエストナイル脳炎含む)届出基準(厚生労働省)
- 検査課|成田空港検疫所(厚生労働省 FORTH)