そんなの、1学期で
作れるわけがない
――その案を出した本人が、仲間に
写真はイメージ Photo by Aurélia Dubois on Unsplash
MITの授業で作った腕輪が、手首を震わせて手のふるえを抑える医療機器になった
手首に巻いた腕輪が、小さく震える。それで、手のふるえが軽くなる。
アメリカのEncora Therapeuticsの腕輪「Encora X1」が、2026年2月、食品医薬品局(FDA)の510(k)を通った。大人の本態性振戦向けだ。もとはMITの授業の課題で、2017年の最初の形は、発案者のDaniel Carballo氏いわく「フォームコアの箱に、Raspberry Piのチップと、はみ出した配線」。そこから9年かかった。
手首の「引っぱられた」センサーを、わざと突く
手首には伸張受容器という小さなセンサーがある。手がいまどこにあるかを脳に知らせる、脳と手の連絡路の一部だ。
腕輪は、この連絡路に機械の振動を入れる。センサーが反応し、決まった形の信号が手首の神経から、動きの調整をする脳の場所まで届く。それがふるえの規則正しい信号を乱す、というのが会社の説明だ。電気は流さない。
薬が効かない人に残るのは、ふつう脳深部刺激療法のような手術だった。腕輪は、その手術が狙う脳の場所を、切らずに狙う。
では、どれくらい効くのか。会社によると、効くのは腕輪が動いているあいだだけだ。15分ほどで効き目を感じたのは試験に出た一部の人で、全員ではない。長い人は1日12時間、14時間つけていると、Carballo氏はMIT Newsに話している。
発案した本人が、16対1で負けた
この案を出したのはCarballo氏だが、いちばん反対したのも本人だった。「1学期では何も作れないほど無茶な案だと、チームに説明しようとした」。投票は16対1で、採用が決まる。
発表会の1週間前、チームはMichaelさんに会った。Michaelさんは家のリフォームが仕事で、若くしてパーキンソン病になり、ドライバーを回すのも書類を書くのも難しくなっていた。
本番、Kresge Auditoriumの壇上でMichaelさんが渦巻きを描く。医師がパーキンソン病を見る検査だ。ボタンを押すと、ふるえは大きく減り、数秒で線はきれいになった。Carballo氏は「電気のスイッチが入ったように、ふるえが止まった」と話す。妻と娘は泣き出した。
2024年、Encoraは本態性振戦の47人で見せかけの刺激と比べた。ふだんの動作のしやすさの点数が1点以上良くなったのは、本物で70〜75%、見せかけで48%。2025年の59人の自宅試験は、90日後に78%。ただしEncoraは、目標の数字を決めずに集めた参考の値だと注を付けている。
ネットの評判
技術系の掲示板Hacker Newsには、40件を超える書き込みが付いた。ふるえのある人は、お金が続くなら試したいと書いた。一方で、良くなったかどうかが本人の申告に近く、思い込みの効果を外せていないのではという指摘も出た。
認められた。それでも、まだ順番待ち
腕輪は、医師の処方がないと使えない。保険が利くようにする交渉も途中だ。そして、その交渉が止まっている。アメリカの公的医療保険メディケアの機器供給業者になる受付が、2026年2月27日から止まっているからだ。医療機器の業界団体AdvaMedが6月に出した記事による。Encoraは自分では登録できず、ほかの業者を通すしかない。その記事が引いた研究では、患者の75%が65歳以上だ。
FDAを通ったのは本態性振戦向けで、Michaelさんのようなパーキンソン病のふるえは入っていない。会社は、そこへ広げるつもりだという。公式サイトでいちばん目立つのは、いまも「順番待ちに登録する」のボタンだ。
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- MIT class project turns into an FDA-cleared treatment for tremors
- MIT class project turns into an FDA-cleared treatment for tremors(MIT News全文の転載)
- Encora Therapeutics(公式サイト)
- The Science Behind Encora X1(公式サイト)
- 510(k) Premarket Notification: Encora X1(K251517)|U.S. Food and Drug Administration
- Premarket Notification 510(k)|U.S. Food and Drug Administration
- Essential Tremor Treatment: A Sensible Solution, Possibly Driven Out of Reach(AdvaMed、2026年6月22日)
- ふるえ(振戦)の症状と治療法|一般社団法人 日本定位・機能神経外科学会
- MIT class project turns into an FDA-cleared treatment for tremors(Hacker Newsの書き込み)
