値上がりした好物、買い続ける?
- スーパーの魚売り場に並ぶ塩サバやしめサバの多くは、千葉県銚子市の工場を通ってきます。その銚子で、サバの水産加工業者の約2割が、倒産か事実上の廃業の状態になっています。原料の大半を占める輸入サバの単価が1年で7割上がり、採算が合わなくなったためです。
- 「好きなものを削りまくって何が楽しいの?」
- 「サバにこだわらなくてもいいんじゃない?他に魚あるでしょ?」
どっちの味方?最初の印象で選んでください。
あなたが味方した 買い続ける派 の言い分
朝は焼いた塩サバとごはん、これだけは変えません。前の晩に焼いておいて、朝はほぐしてのせるだけです。値札が去年と違うのは、売り場に行くたび分かります。それでも、かごに入れます。ほかのものを一つ減らせばいい話です。
父が魚屋で働いていました。家では、安いから買うという言い方を、一度も聞きませんでした。食べたいものを決めて、その分だけ働く。そういう家で育ったので、値段を見てから献立を決める習慣が、わたしにはありません。替えの魚を探して売り場を一周している人を見ると、こちらが落ち着かなくなります。
本音を言うと、みんなが高いから別のものにすると言いはじめた先に、何が残るのかが怖いです。買う人がいなくなった魚は、売り場から静かに消えます。作っていた工場も、そのうち止まります。安いほうへ移った人たちが、何年かたって、あれが食べたいねと言ったとき、わたしは何も言えません。だから、わたしは今日も同じ切り身を買います。高いと言いながら、買います。
あなたが味方した 替える派 の言い分
売り場では、その日に安い魚から見ます。サバが高い日は、まっすぐ別の棚へ行きます。ニシンでも、イワシでも、鶏のむね肉でもかまいません。家族は、焼いて出せばそんなに気にしません。気にしているのは、たいてい買った本人だけです。
前に、好きなものを買い続けて、月末に口座がさみしくなった時期があります。あのときに決めました。食べたいものに合わせて財布を開くのではなく、開けられる分で、食べたいものを作る。それから、献立は売り場で決めています。高くなった魚を追いかけるのは、やめました。追いかけても、安くはならないからです。
本音を言うと、同じ魚にこだわる人を見ると、もったいないなと思います。海の中の都合は、こちらの好みを聞いてくれません。獲れないときに獲れないものを欲しがれば、値段はもっと上がります。それより、いまよく獲れている魚を、おいしく食べる工夫をしたほうが、晩ごはんは楽しくなります。替えてみたら、こちらのほうが好きだった、ということも何度もありました。
どちらにも数えられない立場 間で値段の差を飲み込む加工の現場
買い続ける人も、替える人も、売り場の前に立っています。わたしたちは、その後ろで値段の差を飲み込む側です。原料は上がり、店の値札はほとんど動きません。その間を埋めてきた結果、銚子では5軒に1軒の工場が止まりました。一度止まった工場は、すぐには戻りません。
理由を聞いた今、もう一度選ぶ
言い分は、世間の声をもとに編集部が脚色したものです。実際の発言と出典は、元ネタの記事にあります。
元ネタを読む →銚子のサバ加工業者、2割が倒産か廃業 国産サバは約半分がエサ用