試験に落ちた人が、
試験なしで昇格した
――新制度は、棋士相手の成績を問わない
写真はイメージ Photo by Mahmoud Adel on Unsplash
西山朋佳さんの棋士資格、「白玲5期」と「編入試験」どちらが厳しい?
将棋の西山朋佳女流四冠(31)が2026年10月26日、東京・渋谷の将棋会館で記者会見を開き、棋士になる権利を行使すると表明しました。日本将棋連盟は同じ26日、編入の届け出を受理したと発表しています。2027年4月1日付で四段となり、将棋界で初めての女性の棋士が誕生します。
連盟の発表では、棋士番号は356、師匠は伊藤博文七段です。きっかけは10月10日。ヒューリック杯第6期白玲戦七番勝負の第5局で福間香奈女流四冠に勝って白玲を防衛し、白玲通算5期で「クイーン白玲」の資格を得ました。
「白玲5期」で棋士になれる、2025年にできた規定
西山さんが使ったのは、2025年6月に決まった新しい規定です。女流棋戦の最高峰である白玲を通算5期獲得すると、棋士のフリークラスに編入する権利が与えられます。女性で初めて、この規定が適用されました。
フリークラスは、順位戦に参加しない棋士の区分です。西山さんの白玲は、第1期(2021年)と第3期から第6期(2023〜2026年)の通算5期。この規定には、棋士を相手にした勝ち星の条件は入っていません。
2年前の「編入試験」と、数字で比べてみました
西山さんは2年前、別のルートに挑んでいます。連盟の棋士編入試験規定では、受験資格は「現在の公式戦において、最も良いところから見て10勝以上、なおかつ6割5分以上」の成績。試験は新四段5名を試験官とする五番勝負で、持ち時間は3時間、5局中3勝で合格です。受験料は50万円(税別)と規定に書かれています。
西山さんは2024年7月4日の公式戦に勝ち、13勝7敗(勝率6割5分)で受験資格を満たしました。申し込みは7月25日に受理され、2024年9月から2025年1月まで月1局のペースで5局を指して、2勝3敗で不合格でした。
並べてみると、2年前は「新四段に3勝」の関門で届かず、今回は「女流最高峰を5期」という別の条件で四段になります。
連盟の総会は、別の緩和案を否決していました
2026年6月5日の通常総会で、編入試験の受験資格を通算3回獲得すれば四段とする案が、反対多数で否決されました。連盟の説明では「受験を突破した場合に棋士になる方がいい」という意見が多かったといいます。
否決された案の中身は、棋士相手に10勝以上・勝率6割5分以上を3回、というものでした。棋士との対戦成績を問う基準は見送られ、問わない基準のほうが残りました。
この差の影響を一番受けるのが福間香奈女流四冠(34)です。受験資格を2回獲得して2回とも不合格。白玲は第2期(2022年、当時は里見香奈)の1期だけで、白玲ルートならあと4期が必要です。
ネットの評判
SNSでは祝福の声が多く、ABEMA TIMESは「よく決断したなぁ泣」「かっこいい」という反響を伝えています。日本将棋連盟の清水市代会長も「将棋界の新たな可能性を示す、意義深いこと」と歓迎しました。
一方で、制度そのものへの疑問も出ています。アマチュアで指しているという書き手の個人ブログ「ふわ日記」は、西山さんの棋力はプロ級と認めたうえで、白玲5期だけで資格が得られる新制度には反対だと書いています。理由は、編入試験が新四段5名に3勝を求めるのに対し、白玲5期は女流棋界のトップになれば満たせる点、女性だけのルートである点、女流棋界の勢力図で難易度が変わる点。そのうえで「白玲5期+プロ公式戦での一定成績」を条件にすべきだと提案しています。
「女流棋戦のトップが抜けてしまう」という心配の声も見かけますが、これは当たりません。新規定では棋士と女流棋士の兼業になり、棋士の公式戦では四段、女流棋戦では保持するタイトルを名乗って、どちらにも出場します。ただし、特定の棋戦だけを選んで出たり休んだりはできない決まりです。
筆者が気になったのは、年70局という数字
スポニチアネックスによると、棋士の公式戦と8つの女流タイトル戦を並行すると、年間70局超が見込まれます。西山さんは会見で「対局数について今後制度を検討していただけるとうかがっている。行使するにあたって、前向きに考える要素になった」と話しました。連盟の片上大輔常務理事は、日程調整が大きな課題だと認めています。
フリークラスの期限は10年です。連盟の順位戦規定では、良いところ取りで30局以上の勝率6割5分以上、全棋士参加棋戦での優勝かタイトル戦挑戦、年間成績で「参加棋戦数+8」勝以上かつ勝率6割以上などが条件です。これを満たせばC級2組に上がれます。10年で届かなければ棋士としては引退となりますが、女流棋士の資格は残るとABEMA TIMESは説明しています。
まとめ
数字を並べてみると、西山さんは2024年にも棋士相手に13勝7敗の成績を挙げていて、棋力が足りないという話ではないように、筆者には見えました。割れているのは、どの関門をプロの入り口に置くか、という点です。70局超の見込みと10年の期限は、来春からの答え合わせになります。
出典
日本将棋連盟「西山朋佳女流四冠 フリークラス棋士編入のお知らせ」、同「棋士編入試験規定について」、同「順位戦の規定」、NHK、時事ドットコム、日本経済新聞、ABEMA TIMES、スポニチアネックス、日刊スポーツ、GIGAZINE、Yahoo!ニュース エキスパート(松本博文)、個人ブログ「ふわ日記」、ウィキペディア日本語版(白玲戦・西山朋佳)
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- 棋士編入試験規定について(日本将棋連盟)
- 順位戦の規定(日本将棋連盟)
- 将棋 西山朋佳女流四冠 プロ入り表明 初の女性プロ棋士誕生へ(NHK)
- 「資格3回で棋士」否決 女流らの編入試験―将棋連盟(時事ドットコム)
- 将棋、編入試験3回で棋士 6月の連盟総会で審議(日本経済新聞)
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- 白玲位通算5期獲得の西山朋佳女流四冠(31)棋士編入の権利を行使するか?(Yahoo!ニュース エキスパート・松本博文)
- 将棋・西山朋佳女流四冠 史上初の「女性プロ棋士」誕生へ(関西テレビ)
- 西山朋佳さんの棋士編入資格は妥当?白玲5期の新制度に反対する理由(個人ブログ・ふわ日記)
- 白玲戦(ウィキペディア日本語版)
- 西山朋佳(ウィキペディア日本語版)