底びき漁業 『稚魚を獲ると将来の漁獲量が減る』は、ちょっと違うかもしれない
――北海道大学の松石隆教授が、8年分のデータで調べた話
底びき漁業 「稚魚を獲るのと後の漁獲量が減る」は、ちょっと違うかもしれない
稚魚を獲ると、将来の魚が減る。だから小さい魚は獲らない方がいい。これ、だいたい正しいと思っていたんだけど、本当だろうか。
北海道大学の松石隆教授と、タイ王国水産局のジラトーン・ユタラ氏らの研究チームが、2026年10月20日にこんな研究を発表した。タイ湾の底びき網漁業で2016〜2023年に集めた、延べ4,015航海分のデータを解析したものだ。分かったのは、稚魚が多いときほど、その稚魚が生き残る率が下がるということ。逆に言えば、稚魚が減ると、残った個体は生き残りやすくなる。
「獲った分だけ減る」とは限らなかった
調べたのは、水揚げの多い上位25分類群。このうち21で「稚魚が多いほど生残率が低い」という負の関係が見えた。統計的に意味があると言えたのは17。さらにそのうち11は、特に強く出た(p<0.001)。逆向きの関係については、統計的に支持されなかったと論文の要旨は書いている。
強く出た一つが、グルクマという魚だ。学名はRastrelliger kanagurta。日本では沖縄県と鹿児島県の島で売られているサバの仲間で、焼霜造りや塩焼きで食べる。
研究チームは、これを補償的な密度依存死亡と呼んでいる。論文は水産系の学術誌Fisheries Scienceに、9月18日オンラインで載った。
なぜ、この研究が必要だったのか
東南アジアの底びき網には、食用にならない小型魚や稚魚も入ってくる。それは捨てられるのではなく、魚粉などに加工され、養殖の餌になる。東南アジアの養殖生産を支えている資源だ。

ところが水産資源の考え方では、小さいうちに獲る成長乱獲は「将来の漁獲量を減らす悪い獲り方」とされてきた。つまり、養殖の餌を支えている漁が、理屈のうえでは悪者になる。しかも熱帯の、いろいろな種が混ざって獲れる漁で、稚魚の生き残りを調べた研究はほとんどなかったという。今回の研究は、そこに数字を入れた。
ただし「だから獲っていい」ではない
じゃあ、どれだけ獲っても大丈夫なのか。そこは出ていない。北海道大学の発表は、生き残りやすくなる働きの強さは種によって大きく違い、無制限に働くものではない、と書いている。過剰な漁獲を正当化するものでもない、ともある。必要なのは、種ごとの性質を踏まえた管理だという。
当てはめられる範囲も限られる。使ったのはタイ湾の、いろいろな種と漁具が混ざる漁のデータだ。論文の要旨は、ほかの海で同じことが言えるかどうかには触れていない。
ネットの評判
この研究そのものへの声は、探しても見つからなかった。ただ「小さい魚を獲るな」という声は、日本でも前からある。2026年8月にSNSの投稿を集めたページ(posfie)では、シラス漁をやめるべきだという投稿がまとまり、4,570件共有された。「シラス漁という行為自体が、資源破壊犯罪と言っても過言ではない」「法律でシラス漁を禁止するしか無い」といった声が並ぶ。一方で「ちゃんと休漁期間あるよ」と、いまの決まりで足りているという返しもあった。これはシラス漁の話で、今回の研究への反応ではない。
稚魚を獲った分だけ魚が減るとは限らない、と強く確かめられたのは、調べた25のまとまりのうち11だった。残りの14は、まだ何とも言えない。
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