うち長男だから、
名字は譲れない
――交際7年10か月で、婚約は解消
写真はイメージ 撮影 Richie Diesterheft/CC BY-SA 2.0(ウィキメディア・コモンズ)
婚約解消は名字のせい? 女性敗訴、決め手は4回の話し合い
結婚のときに男性の名字に変えなかった。それが理由で婚約を解消された——そう訴えた30代の女性が、11月5日、東京地裁で負けた。求めていたお金は330万円。判決は、男性が一方的に婚約を破棄したとはいえない、とした。名字を変えたくないと言っただけなのに、なぜ裁判まで行って、なぜ負けたのか。
プロポーズの日に出た、「自分の姓にしてほしい」
朝日新聞によると、二人の交際は2017年4月ごろに始まった。2024年11月、女性が腕時計を贈って結婚を申し込み、男性も指輪を渡してプロポーズした。ここまでは、よくある話だ。

話がずれたのは、その場だった。男性は「自分の姓にしてほしい」と求めた。女性は、結婚しても名字を変えないつもりだと前から伝えていた。だから応じられないと答えた。
二人はそのあと4回話し合った。考えは動かなかった。2025年2月、男性が婚約の解消を告げた。付き合い始めてから、7年10か月ほどたっていた。
女性は裁判で、男性から「長男だから家を継がなければならない」「男性が改姓するのは世間体上恥ずかしい」といった言葉を向けられたと話した。女性を低く見る発言で、自分の尊厳が傷つけられた、という訴えだ。
では、判決はどこを見たのか。平井美衣瑠裁判官は、男性の発言を「自身の価値観に基づく率直な意見」と受け取った。そのうえで、二人が何度も協議を重ねていた点を重く見た。意見が合わず結婚が難しくなったのだから「一方的な婚約破棄とはいえない」。請求は退けられた。
名字で折り合えなかったこと自体を、裁判所は責めていない。ただ、その結末の責任を男性一人に負わせもしなかった。
妻の名字を選ぶのは、17組に1組
ここで数字を一つ。厚生労働省の人口動態統計をもとにした内閣府の資料では、2024年に結婚した485,092組のうち、夫の名字を選んだのは456,453組で94.1%。妻の名字を選んだのは28,639組で5.9%だった。17組に1組だ。
いまの民法では、結婚のときに「男性又は女性のいずれか一方が、必ず氏を改めなければなりません」。法務省のページにそう書いてある。選択的夫婦別姓が長く議論されてきたのは、これが理由だ。
ただ、制度の議論は別の方向に動いている。時事通信が2026年3月に伝えたところでは、高市首相は、戸籍の名字は夫婦で同じにしたまま、公的な書類に結婚前の名字だけを書ける旧姓単記の実現を指示した。自民党の保守系議員は「別姓を求める声は静まる」と話した。一方、公明党の竹谷代表は「婚姻後も生まれながらの姓で生き続けたいと望む人に強制的な改姓を強いる現状」は生きづらさの原因になっていると話し、選択的夫婦別姓が必要だと訴えた。
11月6日午前の時点で、女性が控訴するかどうかは、報道では確かめられなかった。
ネットの評判
Yahoo!ニュースでは、この判決を伝えた記事に1,983件のコメントが付いた。目立つのは判決を妥当とする声だ。「話し合いが何度も必要だった時点で、条件が合意されていない」「大事なことは結婚前に確かめておくべきだ」。裁判に持ち込んだこと自体を疑問視する声も多い。
はてなブックマークでは215人がこの記事を保存した。コメントでは見方が割れた。「別姓の制度があれば防げた」という意見に対し、「家を継ぐことを重視する男性なら、子どもの名字で別の揉め事になっただろう」と反論が出ている。「女性は交際中からずっと名字を変えたくないと言っていたのに、男性が8年引っ張った」という声もあった。
女性は負けた。ただ判決には、名字をどうするかは「個人のアイデンティティーや家族観に関わる重要な問題」だという一行が入っている。名字の重さは認めたうえで、330万円は認めなかった。
のどかな場所なんだから、
もう勘弁してほしい
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