皮はえぐいから、
いつもむいて捨ててる
――野菜をむきながら、ある人が
野菜と果物の皮の食物繊維を比較 パイナップルは果肉より453%多いと英研究
2026年10月30日、英キングス・カレッジ・ロンドンの研究チームが、野菜と果物12種類の「ふだん食べる部分」と「ふだん捨てる部分」の食物繊維量を比べた論文を発表しました。掲載されたのは International Journal of Food Sciences and Nutrition です。12種類のうち10種類で、皮や芯、種、茎のほうが多いという結果です。一番差が大きかったパイナップルは、皮と芯の食物繊維が果肉より453.7%多く、およそ5倍でした。
捨てている部分は、買った重さの25〜48%
調べたのは、ビーツ、ピーマン、ブロッコリー、バターナッツスクワッシュ、カリフラワー、セルリアック、カーリーケール、フェンネル、キウイ、リーキ、パイナップル、スイカの12種類です。
差が大きかったのは三つでした。パイナップルの皮と芯が果肉より453.7%、スイカの皮が425%、バターナッツスクワッシュの皮と種が326%多いという結果です。
逆の例もあります。ブロッコリーの茎は、花蕾(つぼみの部分)より28.4%少ないという結果でした。ここは、ふだん食べている側のほうが多いわけです。
研究チームによると、こうした「捨てる部分」は、買った野菜や果物の重さの25〜48%を占めていました。1kg買えば、250〜480gを捨てている計算になります。
重さあたりの量も出ています。バターナッツスクワッシュの皮と種は100gあたり9.25g、スイカの皮は2.10g。日本の「食事摂取基準(2025年版)」が示す食物繊維の目標量は、30〜64歳の男性で1日22g以上です。皮と種100gで、その4割ほどにあたります。
皮はえぐいのか、農薬はどうなのか
筆者の一番の疑問はここでした。先に書くと、この研究は味を調べていません。
研究チームは大学の職員と学生40人に聞き取りもしています。そこで挙がった壁は三つで、捨てる部分を食べることへの心理的な抵抗、ちゃんと消化できるのかという不安、信頼できる情報が見つからないことです。えぐみや味は入っていません。
代表のレイチェル・ギブソン氏は「完璧を目指す話ではないし、おいしくないものを無理に食べさせる話でもない」(訳)と話しています。
では、えぐみはどこから来るのか。女子栄養大学名誉教授の松本仲子氏は、苦味や渋味、えぐみをまとめた「アク」について、ほうれん草はシュウ酸、たけのこはホモゲンチジン酸とシュウ酸、ごぼうはポリフェノールが元だと説明しています。野菜ごとに成分が違う話で、「皮だからえぐい」という説明は、筆者が探したかぎり公的な資料には見つかりませんでした。
逆に農林水産省は、野菜の皮や茎について「野菜は皮ごといただくのがもっとも理想的です」と書いています。環境省のウェブマガジン「エコジン」は、にんじんについて「スーパーに並んでいるにんじんは収穫後に洗って薄皮がむけている状態。皮をむく必要はないんです」としています。
農薬については、東京都保健医療局の食品安全FAQに「野菜に残っている農薬の量は、もともと健康に影響を及ぼすような量ではありません」「農薬を落とすために必要以上に野菜を洗う必要はありません」と書いてあります。
バターナッツは日本のかぼちゃと同じ種
もう一つ引っかかるのが、バターナッツスクワッシュという名前です。これは、日本のスーパーで多い、ほくほくした「西洋かぼちゃ」とは別の種です。食材辞典「旬の食材百科」は「海外から入ってきた品種ではありますが西洋カボチャの仲間ではなく、植物分類上は日本カボチャと同じ仲間になるそうです」と書いています。学名はCucurbita moschata。煮物に使う日本かぼちゃと同じ種の一品種です。
ただし、日本の成分表には、かぼちゃの皮だけの数値がありません。文部科学省の食品成分データベースで引けるのは、果実まるごとの数値です。「西洋かぼちゃ 果実 生」が100gあたり3.5g、「日本かぼちゃ 果実 生」が2.8gでした。皮つきと皮なしの区別がないので、日本のかぼちゃの皮が果肉の何倍かは、公表された数字では計算できませんでした。
さつまいもとにんじんで計算してみました
皮つきと皮なしの両方が載っている野菜もあります。同じデータベース(日本食品標準成分表2020年版〈八訂〉増補2023年)で引いてみました。
さつまいもは、皮つき(生)が100gあたり2.8g、皮なし(生)が2.2g。中くらいの1本200gなら、1.2gの差になります。
にんじんは、皮つき(生)が2.8g、皮なし(生)が2.7g。差は0.1gでした。
同じ「皮をむく」でも、さつまいものように減る野菜と、にんじんのように減らない野菜があります。数字を並べて筆者が一番意外だったのは、この差のばらつきでした。
ネットの評判
日本では、この研究を伝えたGIGAZINEの記事がはてなブックマークに上がりました。11月4日時点で16人がブックマークし、コメントは10件です。
目立つのは、冷ややかな声です。「そりゃあ⋯ 繊維質で固いから可食部にならないわけであって」「そら硬いから食わんのよ」「そりゃ人間には消化できないから食べないようになったんだろうしね」。食べない理由があるから食べないのだ、という受け止めです。「分解できないから繊維なんだから繊維だけ食べたければ木の皮でも食っておけ」という強い言い方もありました。
一方で「皮とかその辺りだというのはわかっていた」と結果に納得する声や、「魚は骨の方がカルシウム豊富。みたいなもんじゃないの」と身近な例に置きかえる声も見られました。
まとめ
数字だけ見れば、皮や芯を捨てるのは損です。ただ、野菜によって差はまるで違いました。さつまいもは皮つきのほうが100gあたり0.6g多く、にんじんは0.1gしか変わりません。
筆者なら、全部の皮を残そうとはせず、さつまいものように差が出る野菜だけを覚えます。えぐみが気になるなら無理に食べなくていい、というのは研究チーム自身が言っていることです。
11月4日午後の時点で、キングス・カレッジ・ロンドンはこの研究について追加の発表をしておらず、日本の公的機関が推奨を変えたという発表も見つかりませんでした。
出典
キングス・カレッジ・ロンドン「Eating ‘root-to-tip’ could help your health and the planet」(2026年10月30日)/テイラー・アンド・フランシス ニュースルーム(出版元の発表)/EurekAlert(同発表)/文部科学省 食品成分データベース(日本食品標準成分表2020年版〈八訂〉増補2023年)/農林水産省「野菜をまるごと使って食品ロスをゼロに!」/環境省 エコジン「にんじんの皮ってむくべき?」/東京都保健医療局 食品安全FAQ/Healthist「暮らしの科学 野菜のアクは“悪”!?」(女子栄養大学名誉教授・松本仲子氏)/旬の食材百科/日本人の食事摂取基準(2025年版)の報道/GIGAZINE/はてなブックマーク
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- Eating 'root-to-tip' could help your health and the planet(キングス・カレッジ・ロンドン)
- The parts of fruits and vegetables most throw away could save your health and the planet(テイラー・アンド・フランシス ニュースルーム)
- The parts of fruits and vegetables most throw away could save your health(EurekAlert)
- 果物や野菜で最も食物繊維が豊富なのは可食部ではなく「通常は捨てられてしまう部分」だとの研究結果(GIGAZINE)
- 食品成分データベース さつまいも 塊根 皮つき 生(文部科学省)
- 食品成分データベース さつまいも 塊根 皮なし 生(文部科学省)
- 食品成分データベース にんじん 根 皮つき 生(文部科学省)
- 食品成分データベース にんじん 根 皮なし 生(文部科学省)
- 食品成分データベース 西洋かぼちゃ 果実 生(文部科学省)
- 食品成分データベース 日本かぼちゃ 果実 生(文部科学省)
- 野菜をまるごと使って食品ロスをゼロに!(農林水産省)
- にんじんの皮ってむくべき?(環境省 エコジン)
- 野菜や果物についた農薬が心配です。洗浄などで落とすことはできますか?【食品安全FAQ】(東京都保健医療局)
- 暮らしの科学 第68回 野菜のアクは“悪”!? その正体と調理法(Healthist/女子栄養大学名誉教授・松本仲子氏)
- バターナッツ・スカッシュ<かぼちゃ(旬の食材百科)
- バターナッツ・スクワッシュ(ウィキペディア日本語版)
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」報告書を公表 食物繊維の目標量など主な変更点(栄養士・管理栄養士のためのsndj)
- はてなブックマーク(GIGAZINE該当記事のエントリーページ)