川の向こうが自国なのに、
バスは逆へ走るの?

――前線の町を出た、お年寄りたちの道のり

11/3 19:35 / 発信国:ウクライナ / 記者:宮村

ウクライナ南部オレシュキの退避、バスが先に着いたのはクリミアだった

ロシアが占領するウクライナ南部ヘルソン州オレシュキで、10月30日、住民の退避が始まった。用意されたのはバス25台と救急車9台、合わせて750席。電気も暖房も水道もない町に残っていた人たちが乗った。ウクライナのルビネツ人権オンブズマンは同じ日の夜、「ウクライナへ行きたかった人は全員、町を出られた」と話した。停戦は87時間続き、違反は確認されていないとした。

停戦は、トランプ米大統領の妻メラニア氏が仲介して10月27日に始まり、11月1日のキーウ時間22時59分までだ。戦前は約2万4000人が住んでいたオレシュキに、残っていたのは約2000人。多くが高齢者だった。

バスが先に着いたのは、クリミアだった

オレシュキは、ドニプロ川をはさんでウクライナ側のヘルソン市の真向かいにある。川を渡ればウクライナだ。それでもバスは、まずロシアが一方的に併合したクリミアへ向かった。クリミアのアルミャンスクで列は二つに分かれ、片方はロシアへ、片方はウクライナへ。ただしウクライナ行きも、ロシア南部アナパからロシア国防省の軍用機でベラルーシへ飛び、そこからバスで帰る道のりだ。

ホワイトハウスは、退避したい住民には「希望する目的地までの移動を支援する」と約束していた。ただ、10月23日の合意文書には、ベラルーシから先、どうやってウクライナへ入るかが書かれていない。米国の戦争研究所は、住民が強要のない選択ができるのかは分からないとした。2022年のマリウポリでは、退避した住民がロシアの選別を受け、多くがそのままロシアへ送られたと、ヒューマン・ライツ・ウォッチが記録している。英スカイニュースの取材に、住民の一部は、ウクライナまで進ませてもらえないのではと不安を話した。

何人がどちらを選んだのかも、まだ分からない。ウクライナのコレツキー首相は527人がウクライナ側へ戻ると述べたが、のちに「間違いで出した」と取り消した。

ネットの評判

Xでは、停戦そのものを評価する声が目立つ。ジャーナリストの国末憲人氏は「この戦争でまれに見る調整の成功例(今までのところ)」と書き、メラニア氏に平和賞をあげてもいいのではないかと続けた。一方、Yahoo!ニュースの記事には、ホワイトハウスの発表を「手柄横取り」と見る指摘が出ている。教皇レオ14世は10月16日にプーチン大統領へ停戦を求め、19日にゼレンスキー大統領と会っていたのに、発表は教皇に一言も触れなかった。メラニア氏がこれまで社会活動と距離を置いてきたため、急な人道支援に違和感を持つ人が多いという見方も載っている。

ロシアのペスコフ大統領報道官は、オレシュキの停戦は「個別の事例」で、和平交渉全体に広げる話ではないと話した。次に分かるのは、ベラルーシへ飛んだ人たちが、本当にウクライナへ入れたかどうかだ。

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