ベジマイト禁止は正当、豪州の裁判所が判断
殺人で終身刑の受刑者の訴え。禁止の理由は探知犬
「刑務所でベジマイトは豪州人の権利」敗訴 判事が挙げた代わりは音楽と本
ベジマイトを食べるのは、オーストラリア人の権利である。そう訴えた受刑者が、裁判に負けた。ビクトリア州最高裁のクレア・ハリス判事が10月26日、請求を退けた。訴えたのは、殺人で終身刑を受け、バーウォン刑務所にいるアンドレ・マッケクニー。笑い話として世界に配信された裁判だが、、、判決文には、笑っていられない部分がある。
マッケクニーの言い分はこうだ。ベジマイトは「家族、実家、そして故郷オーストラリアを思い起こさせる食べ物だった」。だから禁止は、州の人権憲章が定める文化を享受する権利と、十分な食事を受ける権利を侵している、と。
ここで、多くの人は思うはずだ。殺人で終身刑の人が、パンに塗るもので人権を語るのか、と。判決は請求を全部退けた。ただ、判事は一点だけ認めている。禁止は確かに「文化的権利を制限した」。そのうえで、こう書いた。「マッケクニー氏の文化的権利は、主に、彼が拘禁刑を宣告されているという事実によって制限されている」。刑務所に入った時点で、文化は細くなる。それが法の立場だ。
禁止の理由は、11年前に否定されている
では、なぜベジマイトは禁止なのか。ビクトリア州の刑務所では2006年から禁止だ。矯正局の管理官ケビン・ホワイトは法廷で、ベジマイトの強いにおいが「訓練された違法薬物を探知する犬の注意をそらしうる」と話した。もう一つの理由は、密造酒の材料にされる、というものだ。
密造酒の話は、オーストラリアの公共放送ABCの報道検証番組「メディア・ウォッチ」が2015年8月に否定している。ベジマイトの酵母は、製造の途中で自己分解され、熱で死んでいる。製造元も「ベジマイトを発酵させて酒にすることはできない」と答えていた。死んだ酵母で、酒は造れない。
探知犬という理由も、専門家は認めていない。犯罪学者のネイサン・ライアン(オーストラリア・カトリック大学)はABCに、「探知犬は、1兆分の1の単位で物のにおいの跡をとらえる。ベジマイトが禁制品を隠せるとは、とても考えにくい」と話した。
ただ、ライアンは受刑者の味方でもない。「ベジマイトを禁止する正当な理由はないと思う。それに、ベジマイトを手に入れることが人権だという、法的に筋の通った主張もないと思う」。禁止する理由はない。でも、人権でもない。どちらにも乗らない、少数派の見方だ。
禁止は州によってばらばらだ。ビクトリア、クイーンズランド、南オーストラリア、タスマニアは禁止。ニューサウスウェールズでは、一部の受刑者が買える。
判事は、オーストラリア文化を味わう別の道も示している。音楽、オーストラリア人作家の本、そして禁止されていない食べ物である。
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