まずいと噂のベジマイト
囚人が食べる権利を争った、、、らしい

オーストラリア・ビクトリア州。刑務所で20年続く禁止をめぐる判決

10/29 16:00 / 発信国:オーストラリア / 記者:工藤

「ベジマイトは文化」と判事も認めた それでも刑務所が渡さない理由は探知犬

オーストラリアで、刑務所のベジマイト禁止をめぐる判決が出た。訴えたのは、ビクトリア州バーウォン刑務所にいる受刑者アンドレ・マッケクニー(55)。1994年にクイーンズランド州で不動産開発業者の男性を刺殺し、終身刑を受けている。訴えの中身は「ベジマイトを食べられないのは人権の侵害だ」。10月26日、州の最高裁判所はこれを退けた。

ベジマイトは、パンに塗る真っ黒なペーストだ。ビール造りで残った酵母から作る。1923年に売り出され、朝食の定番になった。それが、ビクトリア州では2006年ごろから刑務所で禁止されている。州内12か所、全部だ。

マッケクニーは裁判でこう話した。「ベジマイトは、家族、家族の家、そして母国オーストラリアを思い起こさせる食べ物だ」。食べられないせいで、自分のオーストラリア文化を実践できず、悲しく、家族や地域から切り離された気がする、と訴えた。人権憲章の「自分の文化を楽しむ権利」が破られている、という理屈だ。

ふざけた訴えだ、と思うだろうか。クレア・ハリス判事は、判決にこう書いた。「ベジマイトは、オーストラリアの文化の一部と見なしうる食べ物だ」。文化だという部分は、判事も認めたのだ。刑務所が渡さなかったことで彼の文化的な権利が制限されている、とも書いている。

負けた理由は、犬と酒

それでも彼は負けた。刑務所側が挙げた理由は2つ。1つは、匂いが強すぎて麻薬探知犬の邪魔になること。もう1つは、酵母が密造酒造りを早めてしまうことだ。判事は、刑務所の安全と秩序のためなら禁止は正当だと判断した。法律が義務づけているのは健康を保てる食事で、文化的に意味のある食べ物を出す義務はない、とも書いた。

においで荷物を調べる探知犬
写真はイメージ Photo by CDC on Unsplash

酒の話には昔から異論がある。製造元だったモンデリーズは「製造の工程で酵母は死ぬ。醸造には糖と生きた酵母が必要で、ベジマイトを発酵させて酒にすることはできない」と説明していた(ニュージーランド薬物財団の検証ページ)。ただし、生きた酵母がなくても他の微生物の栄養源にはなりうる、と指摘する研究者もいる。

怒った人もいる。犯罪被害者を支援するジョン・ヘロンは、提訴された時点でこう話した。「ベジマイトかヌテラか、という話ではない。余分な特典で、私たちの顔を悲劇にこすりつけている」

判事は、彼の悲しみにもひと言触れた。ベジマイトが食べられないことより、収監されているという事実のほうが原因だと考えるのが自然だ、と。

そのベジマイトは、隣のニューサウスウェールズ州の刑務所では、禁止されていない。

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