えっ、今のウミヘビ
タコだったの?

――砂地で、2本の腕を見た人が

写真はイメージ 撮影 Karim saari/CC BY 4.0(ウィキメディア・コモンズ)

10/27 10:56 / 発信国:オーストラリア / 記者:宮村

ウミヘビのふりをするミミックオクトパス、学名がついたのは発見の7年後

インドネシアの砂泥の海底に、いちばん太いところでも鉛筆くらいの腕を持つタコがいる。ミミックオクトパスだ。腕を放射状に広げて立てればミノカサゴ、6本を巣穴に入れて縞の2本を波打たせればウミヘビ。背景に溶け込むのではなく、別の生き物の形と動きに体を組み替える。

上の映像は、ゲッティンゲン大学のゴデハルト・コップがインドネシアで撮ったもの。砂の上を進むミミックオクトパスと、腕のあいだにいる小さな魚が写っている。この魚の話は最後に出てくる。

なぜ化けるのか。このタコは昼間、砂地で丸見えのまま小魚や甲殻類を探す。魚に狙われやすい。そこで毒のある動物の姿を借りているらしい、というのが2001年9月7日に出た論文の見立てだ。マーク・ノーマンら3人が、スラウェシ島とバリで9匹を観察して書いた。

証拠が固まっているまね先は3つ。シマウシノシタ属の平たい魚、毒のとげを持つミノカサゴ、エラブウミヘビ属のウミヘビだ。平たい魚になるときは、8本の腕を後ろにそろえて縞の楕円にし、水を噴いて底を滑る。ウミヘビのときは6本を巣穴に差し込み、残る2本をゆっくり振る。

名前がついたのは、見つかって7年後

見つかったのは1998年、スラウェシ島の濁った河口の底だ。水中写真家のロジャー・スティーンとルディ・カイターがノーマンに伝え、BBCとディスカバリーチャンネルが出資した潜水調査も組まれた。

2001年の論文に各国の報道が飛びついたが、この時点でタコに名前はなかった。論文は、科学的に新しいタコだと書いているだけだ。学名のThaumoctopus mimicusがついたのは2005年、ノーマンとF.G.ホッホバーグがMolluscan Researchで新属新種として記載したときだ。見つかってから7年、報道が沸いてから4年である。

記載論文によれば、目印は背の中ほどの白い涙形の輪と、後ろ寄りの白い「U」。水深0.5〜37メートルの柔らかい海底にいて、ニューカレドニアからインドネシア、マレーシア、フィリピンに分布する。写真の記録では、分布は紅海や西インド洋にも届く。細長い腕を自切することもできる。

まねるために目立つのか、目立つのが先か

2010年9月には、カリフォルニア科学アカデミーなどの研究者が、このタコと35種以上の近い親戚のDNAを比べ、Biological Journal of the Linnean Societyに別の見方を出した。分子系統をたどると、平たい魚のような泳ぎは、砂地に住む仲間のグループで、長い腕と一緒に進化したらしい。

写真

つまり、まねるために泳ぎ方を覚えたのではなく、泳ぎ方が先にあって、目立つ模様が後から乗ったという順番になる。論文を書いたクリスティン・ハッファードは、近い親戚は地味な色でうまく隠れているのに、なぜこのタコは逆に自分を目立たせるのかと問いを立てている。

このタコは、変身の名人として紹介されることが多い。ロンドンの自然史博物館のジョン・アブレットも、これほど多くの種をまねられるのは知られているかぎり、このタコだけだと話している。それでも、どこまでが本当にまねなのかは、まだ議論の種なのだ。

まねる側から、まねられる側へ

冒頭の映像の小さな魚は、クロマーブル・ジョーフィッシュ。普段は砂の巣穴から出ない魚で、茶と白の模様がタコに似ている。腕のあいだに紛れて、砂地を一緒に移動していた。巣穴から離れて餌を探すための便乗だろう、というのが研究者たちの見方だ。カリフォルニア科学アカデミーのルイス・ロシャらが、Coral Reefsに発表した。

ほかの生き物をまねるタコが、今度は魚にまねられていた。

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