高くていい物?安いので十分?
- ホールに置かれたグランドピアノを、新品に買い替えることが決まりました。33年間使われてきた一台で、製造元は、音量が落ちて細かい雑音も出ている、修理に使う純正の部品はもう供給がない、直しても性能は戻らない、と市に伝えていました。契約額が約4423万円だと伝わると、ネットには「高すぎる」という声があふれました。
- 「安物買いの銭失いって、本当ですよ」
- 「安いものを気軽に毎日使う!これが一番良い」
どっちの味方?最初の印象で選んでください。
あなたが味方した いい物を長く の言い分
包丁も、鍋も、靴も、売り場で一番いいものを買います。値札を見て一度帰って、何日か考えて、それでも欲しければ買いに戻ります。そういう買い方なので、台所には何年も同じ鍋が置いてあります。持ち手が緩めば締め直し、底が焦げれば磨いて、まだ使っています。
実家が、安い物をとにかく数で買う家でした。母は毎年のように同じ値段のフライパンを買って、毎年のように捨てていました。捨てる日の母は、いつも機嫌が悪かったです。私はそれを見て、捨てる回数の少ない暮らしをしたいと思うようになりました。長く使えるものを一つ選べば、その一つを手入れしながら使っていけます。
本音を言うと、安いので十分と言う人が、これまで合計でいくら払ってきたのかが気になります。安く済ませたつもりで、私より多く払っている人を、何人も見てきました。口には出しません。言えば嫌な顔をされるので、黙って自分の鍋を磨いています。
あなたが味方した 安いので十分 の言い分
フライパンは、スーパーの隣の雑貨屋で買います。一番安い棚から、持ってみて軽いものを選びます。壊れたら、同じ棚でまた買います。だから台所には、特別なものが一つもありません。毎日使うのは、結局いつも同じ道具です。
結婚した年に、思いきって高い鍋を買いました。重くて、洗うのが面倒で、気がついたら棚の奥に入っていました。その横で、安い片手鍋ばかり毎晩使っていました。いい物は、いい物として扱える人の家に行くべきです。私の台所では、ただ重いだけでした。あの鍋を見つけた日から、使う回数で道具を選ぶことにしました。
いい物を長く使う人は、立派だと思います。ただ、年に一度しか出さない道具のために、台所の一番いい場所を空けておく気にはなれません。私は、毎日触るものにお金を使いたいんです。安い物を使いきって捨てるのは、負けではありません。使われないまま、きれいなまま置かれている道具のほうが、よほどもったいないと思います。
どちらにも呼ばれない立場 手入れをする側
直せるものなら、直して使ってほしいんです。でも、部品の供給が終わった道具は、どう手を入れても元の性能には戻りません。買うか買わないかを言い合う前に、もう直せないと伝えるのが私の仕事です。その一言が、いつも一番嫌われます。
理由を聞いた今、もう一度選ぶ
言い分は、世間の声をもとに編集部が脚色したものです。実際の発言と出典は、元ネタの記事にあります。
元ネタを読む →鎌倉市が4400万円のスタインウェイ買い替えへ 市議会は未明2時に可決