配達ロボットの前に立った78歳、逮捕

米ペンシルベニア州では、そのロボットも法律上は「歩行者」

写真はイメージ Photo by Jorge Escobedo on Unsplash

11/2 17:42 / 発信国:アメリカ / 記者:工藤

配達ロボットを止めた78歳、逮捕 州法ではロボットも「歩行者」だった

アメリカ・フィラデルフィアの歩道で、78歳の女性が配達ロボットの前に立ちはだかり、逮捕された。10月14日の午後1時すぎ、繁華街のフィルバート通り。警官が何度どいてくれと言っても、女性は動かず、秩序を乱した罪で違反通告書を受け取った。相手は、ウーバーイーツの料理を運ぶ配達ロボットである。。。

女性の名前は、カロライン・マーヴィンさん。ペンシルベニア大学アネンバーグ校の名誉教授だ。ロボットを止めたのは、この日が初めてではない。数か月前から続けていたという。「見かけるたびに、前に立って、前に進めないようにして抗議してきた」と話している。

なぜそんなことを。ロボットが嫌いだから、ではないらしい。配達の仕事をしている人を切り捨てる会社への抗議だという。学生新聞には「私が反対しているのは、払いたくない人間の労働者を切り捨てて、自分の利益を増やす冷酷な企業だ。この件では、賃金のいちばん下にいる配達の人たちのことだ」と書いた。

多くの人の受け止めは、たぶんこうだろう。言い分は分かる。でも、歩道で突っ立つのは、ただの通行妨害では。実際、警官が来たきっかけも、器物損壊の通報だった。

法律では、ロボットも「歩行者」

ここが、ややこしい。ペンシルベニア州は2020年の法律で、配達ロボットを歩行者の定義に入れた。歩道を走ってよく、速さは時速12マイル(約19キロ)まで。その代わり、人間の歩行者や自転車には道を譲らなければならない。

歩道にある歩行者用の標識
写真はイメージ Photo by Marek Lumi on Unsplash

つまり法律の上では、歩行者(人間)の前で、歩行者(ロボット)が立ち往生していた。そして、動けと言われたのは人間のほうだった。マーヴィンさん本人も「ロボットより自分のほうが権利があると思っていた」と話している。

「これも表現の自由だ」

ここから、少数派の見方になる。ロボットの前に立つのは、表現の一つなのか。マーヴィンさんは憲法修正第1条で守られた抗議だと主張し、違反通告を法廷で争うつもりだと話している。

屁理屈だと思う人は多いはずだ。ただ、マーヴィンさんがペンシルベニア大学で担当していた科目は「表現の自由の歴史と理論」。言葉と行動の間に、どこまで線が引けるのかを扱う授業だった。1988年に出した本の題は『When Old Technologies Were New』(昔、新しかった技術)。新しい技術が出てきたとき、人がどう受け止めたかを書いた本である。

止めるのは1回10〜15分ほど。料理は15分くらい遅れるだろう、と本人は見ている。ウーバー側はコメントしていない。

止めている間、通りかかった人が話しかけてくるのがいいらしい。「何が起きているのかを、人と話せる」。新しい技術に人がどう反応したかを本に書いた学者が、38年たって、歩道で人の反応を聞いている。

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