え、住民票って
勝手に取れるの?

――引っ越した人が、届いた通知書を見て

写真はイメージ Photo by Valeria Reverdo on Unsplash

10/29 18:28 / 発信国:日本 / 記者:工藤

NHKが住民票を取れるのは合法 ただし役所が「相当」と認めたときだけ

NHKが、本人に断らずに住民票の写しを取っていた。引っ越した人のところに届いた通知書には、こう書かれていたという。「お客様の住民票(除票)の写しを取得して、転居先の住所に変更する手続きをさせていただきました」。件名は「ご契約住所の変更のお知らせ」。

この通知書と思われる画像をXに投稿したユーザーは「NHKって本人に無断で住民票取れるの?」と書いた。この投稿を、10月29日に週刊女性PRIMEが伝えた。新しい住所は、自分では教えていない。え、取れるの?

取れる。しかも、思っているほど手の込んだ話ではない。

前の住所の役所に、次の住所が書いてある

NHKが取ったのは「除票」だ。住民票除票は、転出や死亡で消された住民票のこと。相模原市の説明では、転出した場合、普通の住民票の内容に加えて「転出先住所と異動年月日」が書かれる。

市役所の建物
写真はイメージ Photo by Mateus Campos Felipe on Unsplash

つまり、新しい住所を探し回る必要はない。前に住んでいた町の役所に残っている紙を1通もらえば、そこに次の住所が載っている。

この紙は、かなり長く残る。大阪市の案内によると、除票の保存期間はもともと5年だったが、2019年の法令改正で150年になった。人が生まれてから死ぬまでより、ずっと長い。

「債権回収のため」の一言では足りない

根拠は住民基本台帳法の第12条の3だ。第1項は、本人以外で住民票の写しを受け取れる人を並べている。その1つ目が「自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある者」だ。NHKは受信料を受け取る権利がある側なので、ここに当てはまると説明されている。

机に置かれた書類
写真はイメージ Photo by Arisa Chattasa on Unsplash

ただ、条文には続きがある。市町村長が「当該申出を相当と認めるとき」に交付できる、という書き方だ。出す・出さないを決めるのは役所のほうだ。

役所の案内も、そこそこ細かい。佐賀県小城市のページでは、第三者が請求するときは交付申請書のほかに第三者請求理由書を出し、そこに「具体的な請求理由」を書くよう求めている。契約書や債務残高証明書などの疎明資料も必要で、内容を見て断ることもある、と書いてある。

NHKも、隠していたわけではない。「受信料関係分野プライバシーポリシー」には、個人情報を手に入れる場面として「NHKが法令等に基づき住民票や住民票除票等を取得する場合」と載っている。読んでいる人がどれだけいるかは、別の話だが。

ネットの評判

Xでは、この投稿に《怖いし、気持ち悪い…》という声が並び、消費者庁が取り締まるべきだという書き込みも出た。週刊女性PRIMEは、解約の電話対応や営業の広がりへの不満も重なっていると伝えている。合法かどうかより、知らないうちに自分の記録が動いていたことへの気味の悪さに、反応が集まった形だ。

制度の側から見ると、話は少し違う。弁護士ドットコムが2016年に同じ問題を取り上げたとき、金田万作弁護士は「債権者が住民票の写しを取ること自体は、問題のある行為とは思えません」と話している。お金を返してもらう側が相手の住所を調べるのは、特別なことではないからだ。

ただ、同じ弁護士はこうも言っている。「仮に郵便物が届かないというだけで取得しているとしたら、理由としては微妙な気がします」。合法なら何をしてもいい、という話ではない。

では、自分の住民票がよその人に渡ったとき、こちらは気づけるのか。本人通知制度という仕組みがある。大阪府枚方市の場合、窓口・郵送・オンラインで登録しておくと、交付した年月日、証明書の種類と枚数、請求者の種別を書いた通知書が届く。

ただし、枚方市のページにはこう書いてある。請求した第三者の氏名や住所は、本人通知書には書かれない。

市役所に登録しておけば、だれかが自分の住民票を取ったことは手紙で知らされるが、その相手の名前は書かれていない。

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