家族旅行も、
経費で落ちるんだよ
――ある義理の兄が、親族の集まりで
写真はイメージ Photo by David Emrich on Unsplash
ハワイ100万円を経費で所得ゼロ 重加算税35%は、どこから来るのか
「経費を増やせば所得はゼロにできる。そうすれば住民税非課税世帯になれる」。年商1000万円の義兄夫婦がそう話していた――という設定の記事が、Yahoo!ニュースに出て、コメントが113件ついた。お金の情報サイト「ファイナンシャルフィールド」の記事だ。家族で行ったハワイの100万円と、毎月10万円の家族外食を経費にして、所得をゼロにする。そこへ税務調査が入り、500万円の私的支出が否認され、35%の重加算税がかかる、という筋書き。実在の誰かの話ではなく、架空の事例として書かれている。
で、本当にそんなことができるのか。記事を2ページ目まで開くと、見出しの35%が少しずれて見えてくる。
35%が出てくるのは、うそをついたときだ
記事はこう書く。修正申告をすると、普通は新たに納める税額に10%、一定額を超える部分には15%の過少申告加算税がかかる。35%の重加算税が出てくるのはその先で、「架空の領収書を作るなど、課税の基礎となる事実を隠蔽・仮装して申告していた場合」と条件が付いている。
つまり、ハワイ旅行を経費に入れて否認されただけでは、35%は来ない。来るのは10%か15%のほうだ。領収書を作る、帳簿を書き換える。そういう「隠した」「作った」が認められて、初めて35%になる。記事も、500万円を否認されても単純に「500万円×35%」にはならない、と念を押している。払いが遅れれば延滞税も乗る。2026年中は納期限から2か月までが年2.8%、それ以後は年9.1%。
自分の所得をゼロにしても、世帯は非課税にならない
では、経費の線引きはどこにあるのか。国税庁のタックスアンサー「No.2210 必要経費の知識」には、仕事と暮らしの両方にかかる家事関連費は「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られ」ると書いてある。分けられた分だけ、ということだ。生計を一にする親族に払う家賃は、そもそも経費にならないとも書かれている。
それに住民税非課税世帯は、本人だけを見て決まらない。東京都主税局によると、23区内で所得割も均等割もかからないのは、扶養親族がいなければ合計所得45万円以下、いれば「35万円×人数+31万円」以下。4人家族なら171万円以下だ。自分の所得をゼロにしても、配偶者に収入があれば世帯としては外れる。
調査の規模も数字で出ている。国税庁が2025年12月に公表した令和6事務年度の集計では、所得税の実地調査は4万6,896件(税務通信の集計で、前の事務年度より1.3%減)。郵送や電話での接触まで含めた「調査等」は73万6,000件、うち36万9,000件に申告漏れなどがあった。追徴税額は1,431億円で、過去最高。調査先を選ぶのにAIを使ったとも書かれている。
ネットの評判
コメント欄でまず多いのは、数字への疑いだ。年商1000万円で月10万円の外食と100万円のハワイは現実的ではない、作り話だろう、という声が共感を集めている。
次に多いのが、実態を語る声。家族の支出を経費にしている自営業者は多いが摘発されることは少ない、見つけにくい案件を追うのは税務署も割に合わないのでは、という書き込み。一方で、AIによる異常値の自動検出が進んでいる、と知識を足す人もいる。
割れているのはここだ。会社員の側からは「給与所得者は控除が限られているのに、事業主は自分の裁量で経費にできる」という不公平への不満。自営業の側からは、研修費や会議費に名目を替えるグレーゾーンの実務が語られる。
国税庁の答えは「明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られる」。分け方を持っている人には使えて、持っていない人には何も教えてくれない一行でもある。そして、見出しに出ていた35%は、ハワイ旅行を経費にしたことへの罰ではない。うその領収書を作ったことへの罰だ。
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- 年商1000万円でも「家族でハワイ100万円」「毎月10万円の家族外食」を経費にすれば“所得ゼロ”で「住民税非課税世帯になれる」という義兄夫婦に、税務調査が直撃!(ファイナンシャルフィールド/Yahoo!ニュース)
- 同記事 2ページ目(重加算税35%・延滞税の説明)
- 同記事 コメント欄(113件)
- No.2210 必要経費の知識|国税庁
- 令和6事務年度における所得税及び消費税調査等の状況(令和7年12月公表)|国税庁
- 国税庁 令和6事務年度所得税等調査事績公表|税務通信(税務研究会)
- 【令和6事務年度】所得税・消費税調査で追徴1,431億円 過去最高|AI活用で調査強化
- 個人住民税(非課税の基準)|東京都主税局