今辞めたら、退職金が
減るんだよなあ
――退職金の平均は、15年で427万円減った
写真はイメージ Photo by Cullen Cedric on Unsplash
退職金、15年で427万円減っていた 堀江貴文氏「人生を売るな」
「今辞めたら、退職金が減る」。そう考えて転職をあきらめた人、けっこう多いんじゃないだろうか。
実業家の堀江貴文氏が、その考え方を正面から否定した。10月25日、生活情報サイトのAll Aboutが、堀江氏の新刊『やってはいけない 絶対損する金の使い方』(徳間書店)の一部を配信した。見出しは「退職金のために人生を売るな」。言い分はこうだ。退職金は会社からのごほうびではなく、本来は毎月の給料として受け取るはずだった金の後払いにすぎない。制度の始まりは、戦後、企業の手元に金がなかったことにある。だから退職金は、社員を会社に縛りつける「身代金」になっている――。
強い言い方だ。でも、金額のほうは堀江氏の味方をしている。
大卒の退職金は、15年で427万円減った
厚生労働省の就労条件総合調査をもとにした集計だと、大学・大学院を出て定年まで勤めた人の退職金の平均は、2008年が2,323万円、2023年が1,896万円。15年で427万円、約18%減った。
427万円と言われてもピンとこないかもしれない。手取り月20万円の人の、21か月分だ。1年9か月分の給料が、まるごと消えた計算になる。
しかも平均は、会社の大きさでまるで違う。従業員1,000人以上の会社は2,007万円だが、30〜99人の会社だと1,162万円。同じ「定年退職金」で845万円の差がある。
なぜ減ったのか。今回読めた出典に、はっきりした理由は書かれていなかった。分かるのは、長く勤めた人が受け取る額が、この15年ずっと下がってきたという事実だけだ。
勤続20年の優遇は、政府が消そうとして3年続けて失敗している
堀江氏は、退職金の税の優遇がなくなる方向だ、とも書いている。ここは少しややこしい。
今の退職所得控除は、勤続20年を境に、1年あたりの非課税の枠が40万円から70万円に跳ね上がる。1社に長くいた人ほど得をする形だ。2023年の骨太の方針には、この長期勤続の優遇を改める方向が入った。転職をためらわせる壁になっている、という理由だ。
では、変わったのか。変わっていない。日本経済新聞は2025年11月14日、政府・与党が2026年度の退職金課税の改正を見送ると報じた。本格的な議題になってから3年連続の見送りで、理由は「働く人の税負担が増えかねないとの懸念に配慮する」ためだという。
つまり、堀江氏が「なくなる」と言った優遇は、まだそこにある。裏を返せば、20年目の手前で辞める人が損をする仕組みも、そのまま残っている。
ネットの評判
掲載先のYahoo!ニュースには、159件のコメントが付いた(10月26日時点)。堀江氏に近い側では、額が固定の退職金は物価が上がる時代に不利だとの指摘や、iDeCoなどで自分で運用したほうがいいという意見が出ている。給料として受け取る選択肢がそもそもない、という不満もある。
一方で、組合がある会社で定期昇給も賞与も退職金の積み増しもあった、という書き込みもある。早期退職の加算金を元手に新しいことを始められたという声や、会社が倒産しても守られる預け方を評価する声もあった。家族や住宅ローンがあって辞められない、という仕組みそのものへの心配も目立つ。
退職金が「身代金」かどうかは、人によって答えが割れている。
ただ、数字のほうは割れていない。15年で427万円減ったのは、辞めた人ではなく、最後まで勤め上げた人の平均だ。
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