国産のほうが、
結局安いんだね

――軽EVを見に行った人が

写真はイメージ Photo by CHUTTERSNAP on Unsplash

11/4 15:28 / 発信国:日本 / 記者:工藤

320km走るBYDの軽EVが、180kmの日産サクラより高くなる

2026年4月、国のEV補助金の決め方が変わった。トヨタのEVには最大130万円、中国BYDのEVには15万円。同じ電気自動車で、差は115万円だ。テスラは127万円だった。

320km走る車が、180kmの車より高くなる

BYDが2026年7月28日に出した軽EV「RACCO(ラッコ)」。価格は214万5000円から。満充電で走れる距離は、上のグレードで320kmだ(WLTCモード)。

ライバルは日産サクラ。244万8600円からで、走れる距離は180km。電池は20kWhで、RACCOの上のグレードが積む35.84kWhより小さい。

値札だけなら、BYDのほうが約30万円安くて、140km長く走る。ところがCEV補助金を足すと、順番がひっくり返る。サクラは58万円出るので、実質186万8600円。RACCOは15万円しか出ないので199万5000円。国産のほうが、約13万円安くなる。

なぜそんなことに。4月に変わった採点のしかたのせいだ。この補助金は200点満点でメーカーと車を採点する。そのうち半分の100点が、供給の安定性など経済安全保障の項目に振られた。国産電池を使う計画で国の認定を受けたメーカーが、高く評価される。BYDは電池を自社で作っている。だから、ここで点が伸びない。

「トヨタはすごい」は幻想か

この制度で、国産EVはよく売れている。1月に補助の上限が上がった結果、トヨタbZ4Xの一番安いグレードは実質で70万円下がり、同じクラスのハイブリッド車より安くなった。2026年4月のEV販売は前年同月比2.6倍の7545台。bZ4Xが1867台、日産リーフが2021台を占めた。

自動車販売店のショールーム
写真はイメージ Photo by Crosby Hinze on Unsplash

ここに、まったく別の読み方がある。元経済産業省官僚の古賀茂明が、11月3日にAERA DIGITALで出した記事だ。古賀は、トヨタがEVでテスラやBYDに「完全に置いてきぼりを喰らい、しかも、追いつく見通しが立っていない」と書いた。次世代EVの開発は失敗して中止になり、トヨタは下請けの部品メーカーに巨額の補償を払った。アメリカで初めて現地生産するEV「ハイランダー」の発売も大幅に延びた。株価は2月に一時4000円まで上がったが、いまは3000円ちょっとで低迷している、とも書いている。そして、頼みの綱は高市政権の「嫌中」作戦だけになる、と結んだ。

つまり、トヨタの強さは技術ではなく制度のほうにある、という見方だ。これは少数派だ。ネットで目立つのは逆の読み方だ。EVに賭けた会社が苦しむなかで、全方位でやってきたトヨタが正しかった、という受け取り方のほうが強い。

ネットの評判

古賀の記事はYahoo!ニュースのコメントランキングで1位になり、コメントは1943件ついた。古賀が同じ趣旨でトヨタを論じた記事のコメントを集めたブログを見ると、「トヨタに個人的な恨みでもあるのではないかと勘繰ってしまう」「トヨタは結果として一人勝ちに近い状況」といった反論が並ぶ。

一方、補助金そのものへの不満は、EVに乗っている人たちの側から出ている。自動車サイトwebCGの記事は、ホンダのスーパーONEへの補助金が130万円なのに、同じ基本設計のN-ONE e:は58万円である点を挙げ、「なぜその車種が130万円なのか。なぜその車種が15万円なのか。その評価結果と根拠を公開すれば、多くのユーザーは納得するだろう」と書いた。個人ブログでも、採点の項目は公表されているのに各社の得点の内訳が出てこない、という批判がある。

BYDオートジャパンの広報部も、「『不透明な補助金の審査プロセス』で決定されたことをとても残念に思っています。『説明なき決定通告』のままでは、販売店やお客様に十分な説明責任が果たせず、極めて不公平と感じざるを得ません」とコメントしている。

採点の項目は公表されている。点数は公表されていない。320kmの軽EVが180kmの軽EVより高くなった理由を、買う人が自分で確かめる方法は、いまのところない。

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