カレー、日本のインドカレー屋と
同じ味だった

――ある出張中の夫が、妻に

写真はイメージ Photo by Kelsey He on Unsplash

11/4 14:14 / 発信国:日本 / 記者:工藤

「日本のインドカレー屋と同じ味」 市販ルウとインドのマサラ、スパイス数を比較

「インド人みんな日本人みたいなカレーを食べている」。インドに出張した夫からそう連絡が来た、という投稿が話題になっています。

まとめサイトのTogetterにページが作られ、閲覧数は41,348、はてなブックマークは130件です(いずれも11月4日時点)。

夫からの報告は「バターチキンカレーにガーリックナンやチーズナンを合わせて食べている。しかもカレーは日本のインドカレー屋と同じ味」。投稿者は「『実はインドではあまりナンを食べない』と聞いていたのは何だったの?」と書いています。

続く投稿では「インド人がビリヤニに普通にカレーをかけて食べていた」という報告も。ただしナンの食感は別で、「日本のナンはフワフワもちもちだが、インドのはバリバリでサクサク、甘くもない」としています。

ルウ1箱に35種、インドの定番マサラは13種

筆者が気になったのは、驚いている側の前提です。「インドのカレーはスパイスを一から配合する本格派」。そう思っているから「日本と同じ味」が驚きになります。公式サイトの数字で、その前提を数えてみました。

器に分けて並べたスパイス
写真はイメージ Photo by Jason Leung on Unsplash

まず日本側です。エスビー食品の公式サイトは「ゴールデンカレー」中辛(198g)を「35種のスパイス&ハーブが絶妙に調和した『黄金の香り』」と説明しています。原材料名にも「カレー粉」「香辛料」「焙煎香辛料」「香辛料オイル」と、スパイスが四つの形で並びます。

同社の「赤缶」カレー粉は「30数種類のスパイス&ハーブ」。公式サイトに残るスティックタイプ(製造終了品)の原材料表示を数えると、ターメリックからローズマリーまで34の名前が並んでいました。

インド側も見てみます。インドの大手スパイスメーカー、エベレストの公式サイトは、同社のガラムマサラを13種のスパイスのブレンドと説明しています。ガラムマサラは仕上げに加える合わせスパイスなので、料理全体のスパイスがこれだけという意味ではありません。それでも、既製のブレンドを瓶から足すという使い方そのものは、日本のルウと大きく変わりません。

工程も数えました。ハウス食品の公式レシピ「基本のカレーの作り方」は、調理時間が約40分、手順は8段階です。切って、炒めて、煮て、火を止めてルウを入れ、また煮込む。スパイスを一つずつ量る工程は、どこにもありません。

全日本カレー工業協同組合の資料によると、平成20年度の生産量はカレールウが105,164トン、カレー粉が8,406トン、調理済みカレーが142,602トンでした(同組合のページは平成22年4月1日時点のデータ)。古い数字で、カレー粉には業務用も含まれますが、家庭のカレーがルウとレトルトで回っていることは、この比からも読めます。

ネットの評判

Togetterのまとめには、投稿への指摘が並んでいます。

多かったのはナンについてで、「それ、多分、ナンじゃなくてチャパティですね」「節子、それナンやないチャパティや」「全粒粉で発酵してなく膨らんでない」という声。「ナンは外食で食べるもの、家ではチャパティって話じゃなかったかと。」と、外食と家庭を分けて説明する声もありました。

もう一つは、食べた場所の話です。「バターチキンカレーがあるってことは、高級レストランの可能性が高いな」「おそらくは ①出張した場所が北インド ②高級なレストランで食べている(屋台とかじゃない)」「北インドのちゃんとしたレストランかホテルで食べてるからかもしれない」。日本のインド料理店の味は北インドの外食がベースだという説明も出ていました。

多数派の受け止めは「夫が見たのは家庭料理ではなく、都市の外食」。筋の通った説明だと思います。

外れているのは、どちら側でしょうか

ここで、少し別の見方もできます。

かごに入った焼きたてのパン
写真はイメージ Photo by Fatima Wahab on Unsplash

外食の味を「本物ではない」と置くなら、インドの人が日常で食べている味は何なのか。既製のマサラを使い、ナンよりチャパティを焼き、ビリヤニにカレーをかける。量としては、そちらのほうが多いはずです。

だとすると、スパイスを十数種そろえて一から配合し、ビリヤニにカレーをかけるのを作法違反のように感じる日本の〝本格派〟のほうが、インドの食卓からは遠い少数派かもしれません。数字を並べていて、筆者はそこが気になりました。

どちらが正しいという話ではありません。ただ「本格」という言葉が、現地の日常ではなく、現地の外食や日本で作られたイメージを指している場合もありそうだと思いました。

まとめ

公式表記を並べると、日本の市販ルウは35種、インドの定番ガラムマサラは13種。手順は8段階で、約40分です。「スパイスから作る」は、日本でも少数派の作り方でした。

今晩カレーを作る人は、ルウの箱の裏を見てみてください。香辛料が何通りの書き方で入っているか。数えるだけでも、本格の線引きが少し動くかもしれません。

出典

エスビー食品公式サイト「ゴールデンカレー198g 中辛」商品情報

エスビー食品公式サイト「カレー粉スティック」商品情報

ハウス食品公式サイト「基本のカレーの作り方」

Everest Spices 公式サイト「Garam Masala」

全日本カレー工業協同組合「資料室」「カレーとは?」

Togetter「インドに出張した夫が『インド人みんな日本人みたいなカレーを食べている』…と連絡してきた」

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