うちの回線、また
『不審な動き』扱いされた
――Hacker Newsの書き込みから
写真はイメージ Photo by Andrew Stutesman on Unsplash
IPアドレスで描いた世界地図、日本と「1000人に2個」の国を比べてみた
世界地図を、国土の広さではなく「その国が持っているIPv4アドレスの数」で描き直すと、どんな形になるのでしょうか。2026年10月末にネットで話題になった「If IPv4 Were Land」は、それをそのまま実行した地図です。見た目は単純に面白いのですが、数字を追っていくと、笑えない話が裏側にありました。
「If IPv4 Were Land」とは
作ったのは、IPアドレスの情報を提供するIP Trust。CAPTCHAサービス「Friendly Captcha」の製品のひとつです。
地図の計算は単純で、その国のIPv4アドレス数を世界全体のIPv4アドレス数で割り、世界の陸地面積にかけ直すだけ。南極を除く陸地は約1億3500万平方キロメートル、位置が特定できるIPv4アドレスは約36億個と説明されています。
面積が増えた国は青、減った国は赤で表示されます。地図に載るのは、10万アドレス以上かつ2万平方キロメートル以上の国です。約70の小さな地域(合計約5200万アドレス、主に香港・シンガポール・モーリシャス)は外してあるとのことです。
広がる側の1位はオランダで48.2倍、2位は韓国で43.0倍、3位は台湾で39.6倍。日本は6位の18.1倍でした。逆に、いちばん縮むのはコンゴ民主共和国で、実際の面積の267分の1になります。
日本とコンゴ民主共和国を数字で比べてみた
筆者が気になったのは、地図の形よりも中身の数字です。国別のIPv4アドレス割り当て(人口は国連の2023年7月1日時点)を見ると、世界の合計は36億8647万5740個で、1000人あたり456個になります。
内訳はかなり偏っています。アメリカが16億1129万7420個で全体の43.71%、1000人あたり4691個。日本は1億8914万5768個で5.13%の3位、1000人あたり1521個です。
一方、コンゴ民主共和国は17万5568個で、1000人あたり2個。ナイジェリアは317万3176個で、1000人あたり14個でした。
割ってみると、日本は1人あたりでコンゴ民主共和国の約760倍、ナイジェリアの約109倍を持っていることになります。逆から言えば、コンゴ民主共和国は約500人で1個、ナイジェリアは約71人で1個を分け合う計算です。
しかも今のIPv4アドレスは、売買される資産です。2026年9月の市場では106件の取引で36万9152個が動き、平均価格は1個19.94ドル(前年同月の25.05ドルから20.4%の下落)でした。
この平均価格で計算すると、日本が持つ分は約37億7000万ドル。コンゴ民主共和国の国全体の保有分は、約350万ドルです。
アドレスが足りない側で起きていること
アドレスが足りない国の通信会社は、CGNATCGNATを使って、1つのアドレスを大勢で共有させます。
JPNICの解説では、その課題が3つ挙げられています。1人あたりに使えるポート数(同時に張れる通信の数)が減ること。NATが多段になり、NATを越える必要がある通信に悪影響が出る可能性があること。そしてアドレスの共有によって、フィルタリングやジオロケーション、利用者の特定が難しくなること。CGNATは「IPv4アドレスの節約に役立つ技術」ではあるものの、「IPv4アドレスの在庫枯渇を根本的に解決する技術ではありません」とも書かれています。
共有させられている側の声もあります。開発者のマディ・ミラー氏が2026年4月15日に公開した記事によると、氏の回線は64世帯と同じIPアドレスを共有しています。CAPTCHAが出続ける、Discordのサーバーに参加できない、ブリスベンにいるのにメルボルンのIPが割り当てられる、といった不便が並んでいました。
国単位の統計もあります。ケニアのDigital Economyのブログは、AfriNICの2025年の割り当て統計と人口から分析しています。1人あたり0.01個未満の「IPv4貧困」に当たるのは19か国・4億3500万人(アフリカの人口の28%)で、アフリカに割り当てられたアドレスの1%しか持っていません。最少は中央アフリカ共和国の0.001個でした。
ネットの評判
Hacker Newsに投稿されたこの地図は、320ポイント、472コメントを集めました。地図の作り方そのものへの批判はほとんどなく、議論は「なぜここまで偏ったのか」に集まっています。
多かったのは、早く取った国と組織が持ち続けているという指摘です。米国防省やApple、Fordが、使い切らないであろう巨大なIPv4ブロックを抱えている、という内容の書き込みがありました。人口がほぼ同じインドと中国で保有数が大きく違い、インドはCGNATに頼っている、という話も出ています。
共有させられている側の声も目立ちました。「1000人が自分のIPを共有している。不審な動きとして弾かれるし、オンラインゲームは無理だ」といった内容の書き込みや、他人のふるまいが原因でWikipediaの編集を止められる、CAPTCHAが出続ける、といった報告です。
解決策としてはIPv6IPv6への移行を推す声が多く、「CAPTCHAの数が目に見えて減った」という書き込みもありました。一方で、契約している通信会社がIPv6に対応しないと言っている、という声もあります。使う側では決められないという不満が残っています。
まとめ
地図は面白いのですが、筆者が最後まで引っかかったのは、267分の1に縮んだ国の中にも、普通にネットを使いたい人が何千万人もいるという点です。
IPv4アドレスは1個20ドル弱で売買される資産になりました。各国は、先に取った側と、あとから市場で買う側に分かれました。この偏りを「早く取った者勝ちで仕方ない」と見るか、「配り直しやIPv6への移行を急ぐべき」と見るかで、意見は分かれています。
ひとつ数字を持ち帰るなら、これだと思います。コンゴ民主共和国の国全体のIPv4アドレスは、今の平均価格で約350万ドル分。日本が持つ分の、およそ1000分の1です。
うちのソース付けて食うわ
日本人は何も言えんやろ
――フランスから投稿した人が、日本人に
残ったのは、高い席ではなかった
Number_i札幌ドームの空席報道
何もない田舎の風景
それでも300人が見ている
――岩手・遠野、田んぼの神社の24時間配信
- If IPv4 Were Land - World Map Redrawn by IPv4 Addresses(IP Trust・制作者)
- インターネット用語1分解説~CGNとは~(JPNIC)
- List of countries by IPv4 address allocation(Wikipedia英語版)
- IPv4 Market Report September 2026: $19.94/IP
- IPv4 exhaustion is now a UX problem(Maddy Miller、2026年4月15日)
- IPv4 Address Allocation in Africa: Are you above or Below the IP Address Poverty Line ?(Digital Economy)
- 世界地図をIPv4アドレス数に応じて描き直して国ごとのIPアドレスの偏りが一目でわかる「If IPv4 Were Land」(GIGAZINE)
- If IPv4 were land(Hacker News)
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