うちの回線、また
『不審な動き』扱いされた

――Hacker Newsの書き込みから

写真はイメージ Photo by Andrew Stutesman on Unsplash

11/3 19:27 / 発信国:海外(複数国のデータ) / 記者:宮村

IPアドレスで描いた世界地図、日本と「1000人に2個」の国を比べてみた

世界地図を、国土の広さではなく「その国が持っているIPv4アドレスの数」で描き直すと、どんな形になるのでしょうか。2026年10月末にネットで話題になった「If IPv4 Were Land」は、それをそのまま実行した地図です。見た目は単純に面白いのですが、数字を追っていくと、笑えない話が裏側にありました。

「If IPv4 Were Land」とは

作ったのは、IPアドレスの情報を提供するIP Trust。CAPTCHAサービス「Friendly Captcha」の製品のひとつです。

地図の計算は単純で、その国のIPv4アドレス数を世界全体のIPv4アドレス数で割り、世界の陸地面積にかけ直すだけ。南極を除く陸地は約1億3500万平方キロメートル、位置が特定できるIPv4アドレスは約36億個と説明されています。

面積が増えた国は青、減った国は赤で表示されます。地図に載るのは、10万アドレス以上かつ2万平方キロメートル以上の国です。約70の小さな地域(合計約5200万アドレス、主に香港・シンガポール・モーリシャス)は外してあるとのことです。

広がる側の1位はオランダで48.2倍、2位は韓国で43.0倍、3位は台湾で39.6倍。日本は6位の18.1倍でした。逆に、いちばん縮むのはコンゴ民主共和国で、実際の面積の267分の1になります。

日本とコンゴ民主共和国を数字で比べてみた

筆者が気になったのは、地図の形よりも中身の数字です。国別のIPv4アドレス割り当て(人口は国連の2023年7月1日時点)を見ると、世界の合計は36億8647万5740個で、1000人あたり456個になります。

電卓とノート
写真はイメージ Photo by Aaron Lefler on Unsplash

内訳はかなり偏っています。アメリカが16億1129万7420個で全体の43.71%、1000人あたり4691個。日本は1億8914万5768個で5.13%の3位、1000人あたり1521個です。

一方、コンゴ民主共和国は17万5568個で、1000人あたり2個。ナイジェリアは317万3176個で、1000人あたり14個でした。

割ってみると、日本は1人あたりでコンゴ民主共和国の約760倍、ナイジェリアの約109倍を持っていることになります。逆から言えば、コンゴ民主共和国は約500人で1個、ナイジェリアは約71人で1個を分け合う計算です。

しかも今のIPv4アドレスは、売買される資産です。2026年9月の市場では106件の取引で36万9152個が動き、平均価格は1個19.94ドル(前年同月の25.05ドルから20.4%の下落)でした。

この平均価格で計算すると、日本が持つ分は約37億7000万ドル。コンゴ民主共和国の国全体の保有分は、約350万ドルです。

アドレスが足りない側で起きていること

アドレスが足りない国の通信会社は、CGNATCGNATを使って、1つのアドレスを大勢で共有させます。

ルーターとLANケーブル
写真はイメージ Photo by Jonathan on Unsplash

JPNICの解説では、その課題が3つ挙げられています。1人あたりに使えるポート数(同時に張れる通信の数)が減ること。NATが多段になり、NATを越える必要がある通信に悪影響が出る可能性があること。そしてアドレスの共有によって、フィルタリングやジオロケーション、利用者の特定が難しくなること。CGNATは「IPv4アドレスの節約に役立つ技術」ではあるものの、「IPv4アドレスの在庫枯渇を根本的に解決する技術ではありません」とも書かれています。

共有させられている側の声もあります。開発者のマディ・ミラー氏が2026年4月15日に公開した記事によると、氏の回線は64世帯と同じIPアドレスを共有しています。CAPTCHAが出続ける、Discordのサーバーに参加できない、ブリスベンにいるのにメルボルンのIPが割り当てられる、といった不便が並んでいました。

国単位の統計もあります。ケニアのDigital Economyのブログは、AfriNICの2025年の割り当て統計と人口から分析しています。1人あたり0.01個未満の「IPv4貧困」に当たるのは19か国・4億3500万人(アフリカの人口の28%)で、アフリカに割り当てられたアドレスの1%しか持っていません。最少は中央アフリカ共和国の0.001個でした。

ネットの評判

Hacker Newsに投稿されたこの地図は、320ポイント、472コメントを集めました。地図の作り方そのものへの批判はほとんどなく、議論は「なぜここまで偏ったのか」に集まっています。

多かったのは、早く取った国と組織が持ち続けているという指摘です。米国防省やApple、Fordが、使い切らないであろう巨大なIPv4ブロックを抱えている、という内容の書き込みがありました。人口がほぼ同じインドと中国で保有数が大きく違い、インドはCGNATに頼っている、という話も出ています。

共有させられている側の声も目立ちました。「1000人が自分のIPを共有している。不審な動きとして弾かれるし、オンラインゲームは無理だ」といった内容の書き込みや、他人のふるまいが原因でWikipediaの編集を止められる、CAPTCHAが出続ける、といった報告です。

解決策としてはIPv6IPv6への移行を推す声が多く、「CAPTCHAの数が目に見えて減った」という書き込みもありました。一方で、契約している通信会社がIPv6に対応しないと言っている、という声もあります。使う側では決められないという不満が残っています。

まとめ

地図は面白いのですが、筆者が最後まで引っかかったのは、267分の1に縮んだ国の中にも、普通にネットを使いたい人が何千万人もいるという点です。

IPv4アドレスは1個20ドル弱で売買される資産になりました。各国は、先に取った側と、あとから市場で買う側に分かれました。この偏りを「早く取った者勝ちで仕方ない」と見るか、「配り直しやIPv6への移行を急ぐべき」と見るかで、意見は分かれています。

ひとつ数字を持ち帰るなら、これだと思います。コンゴ民主共和国の国全体のIPv4アドレスは、今の平均価格で約350万ドル分。日本が持つ分の、およそ1000分の1です。

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出典

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