容量を一段上げるだけで、
3万5000円?

――ある買い物客が、iPhoneの値札を見て

写真はイメージ Photo by Umberto on Unsplash

11/3 19:14 / 発信国:アメリカ / 記者:宮村

Appleのメモリ代が1年で4倍 値引きを強いてきた側が、AIに買い負けた

Appleが、メモリの買い値で負けはじめている。調査会社TechInsightsによると、Appleが2026年に前の年と同じ量のフラッシュメモリを買うには、4倍のお金がかかる見通しだという。ずっと「値引きさせる側」だった会社の話だ。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じ、GIGAZINEが10月30日に日本語で紹介した。

なぜAppleが買い負けるのか。AIだ。

Google、Microsoft、Meta、Amazonといったハイパースケーラーが、AI用にメモリを買いあさっている。2年前は、Appleがこの4社の合計の2倍ほどを買っていた。いまは逆だ。4社のほうがAppleの2倍ほどを買っている。TechInsightsの数字だと、NAND型メモリは2023年に1ギガバイト5セントだったのが、いまは30セント超。1年で5倍になった。

ティム・クックは、まだAppleのCEOだった6月18日、WSJの取材でこの値上がりを「100年に1度の洪水」と呼んだ。「残念だが、値上げは避けられない」とも話している。

原価は4倍、容量アップの値札は200ドルのまま

ここが、買う側にいちばん関係する。Appleが、iPhone 17 Proでストレージを一段増やすのに要るメモリに払う原価は、約15ドルから約66ドルに上がった。それでも、買う人が払う容量アップの代金は200ドルのまま、とWSJは伝えている。

日本の値札も見ておく。iPhone 18 Proは256GBが21万9800円、512GBが25万4800円。容量を一段上げるのに3万5000円かかる。iPhone Maniaによると、iPhone 18 Pro(256GB)の部品原価のうちメモリが占める割合は、約34%になる見通しだ。iPhone 17 Proの約10%から3倍以上に膨らんだ。では、いつ落ち着くのか。マイクロンのCEOサンジェイ・メロトラは10月1日、2027年と2028年の需給は2026年より大幅に厳しくなる、と話している。

では、なぜ工場が建っていなかったのか

WSJが描いたのは、Appleの買い方だ。2022年に退いた調達責任者トニー・ブレヴィンスは、競合するメモリ会社との打ち合わせを、わざと続けて入れた。会議室の前で営業チームを鉢合わせさせ、競争心をあおるためだ。交渉は深夜まで延びた。夕食は出さず、栄養バーだけ置いた。取引先の帳簿を見る権利も取った。キオクシアの営業幹部スコット・ネルソンは、売上を見張るために帳簿を開かされたと話している。

値引きを飲んだ側は、その間に設備投資を削っていた。メロトラは6月30日のCNBCで、「一部の顧客が業界の価格を大幅に押し下げた」「2023年、うちの価格は以前の3分の1まで下がった」「会社は赤字だった。耐えられなかった。あれが業界の投資能力に本当に響いた」と話した。マイクロンの設備投資は2023年度に121億ドルから77億ドルへ減っている。

ネットの評判

はてなブックマークでは、GIGAZINEの記事に81人がブックマークを付けた。目立つのは「Appleざまあ」の側だ。「今まで強気で買いたたいてきたAppleがメモリ高騰で買い手に負けるの因果応報感があって味わい深い」「毒林檎と言われる所以」。メモリ会社の人から聞いた話として、「アップルを蛇蝎のごとく嫌ってた」と書く人もいた。

一方で、喜んでいる場合ではないという声も出ている。「問題はアップルだけじゃなくメモリの入った他のスマホやIT機器全般が値上がりして私達の生活や仕事にも負担になっている事で」「結局は消費者に降ってくることだから」。「アップルが正当な価格を払っていたら今より工場を多く建てられて増産できて価格もそこまで高くならなかったよね」という指摘もあった。

この指摘への反論もある。「当時のマイクロンの株主からしたら設備投資より増配を望んだはずなのでメモリ不足は変わらない。AI需要は予想できなかったからこその高騰なので」という書き込みだ。値引きのせいか、AIの読み違いか。ここで意見が割れている。

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