ベトナムのエアコン、リモコンに『暖房』がない

――「沖縄でも普通」と、日本国内からの返信

写真はイメージ Photo by Alexey Demidov on Unsplash

11/3 19:18 / 発信国:ベトナム / 記者:宮村

ベトナムに「暖房」がない理由を、沖縄の気温と冷房専用エアコンで確かめてみた

ベトナムで撮られたエアコンのリモコンの写真が、10月31日にXに投稿され、はてなブックマークの「人気・暮らし」でも上位に入りました。投稿したコヤくんさん(@koyakun0)の文は「🇻🇳きたんだけど、エアコンのリモコンに 「暖房」って概念がなくて流石に草」。運転モードに「COOL」しかない、というわけです。

筆者が気になったのは、ここに付いた返信の中身でした。「冬でも暖房がいるほど寒くならないからねしょうがないね」という納得の声と並んで、「沖縄でも普通」という、日本国内からの一言があったのです。

そこで、机の上でできる範囲で確かめてみました。ハノイと那覇の気温、そして日本のメーカーが今も売っている「冷房専用エアコン」の公式スペックです。

ハノイの1月は、那覇の1月とほぼ同じ

まず気温です。

建物の壁に並ぶエアコンの室外機
写真はイメージ Photo by Kien Nguyen on Unsplash

気候データサイトのClimates to Travelによると、ハノイの1月の平均気温は17.1度(最低14.1度、最高20.1度)。世界気象機関が定める1991〜2020年の30年平均の値です。

一方、気象庁の平年値(統計期間は同じ1991〜2020年)では、那覇の1月の平均気温は17.3度。

差は0.2度でした。つまり「暖房の概念がない街」の真冬は、那覇の真冬とほぼ同じ気温だったのです。ベトナムが特別に暖かいのではなく、日本の南端と同じ条件だった、という話でした。

ただしハノイには寒波もあり、同サイトは最低7〜8度、最高15度ほどまで下がる時期があるとしています。

日本でも「冷房専用」は現役で売られています

次に家電です。暖房のないエアコンは、日本のメーカーからも出ています。

コロナの公式サイトには「冷房専用シリーズ」が載っていて、2026年モデルは3機種。6畳用のRC-2226R、10畳用のRC-V2826R、14畳用のRC-V4026Rです。価格はいずれもオープン価格で、公式サイトでは金額を公表していません。リモコンを除き日本製と記載されています。

同じコロナの、同じ2.8kWクラスの冷暖房モデル(NシリーズのCSH-N2826R)と公式スペックを並べると、違いがはっきりしました。

冷房能力はどちらも2.8kW。暖房能力は、冷暖房モデルが3.6kWで、冷房専用はありません。室外機の質量は冷房専用が18.5kg、冷暖房が23.0kgで、4.5kg軽い。

期間消費電力量は、冷房専用が336kWh、冷暖房が913kWhです。ただしこの913kWhには暖房を使う期間も入っているので、そのまま「3倍かかる」とは読めません。

ここは計算してみます。全国家庭電気製品公正取引協議会の目安単価31円/kWh(税込)を掛けると、冷房専用の336kWhは約1万416円、冷暖房の913kWhは約2万8303円。差額のほとんどは、暖房を使ったぶんです。

筆者が「なるほど」と思ったのは、室外機の4.5kgでした。暖房を捨てると機械が軽くなる。暖かい土地でだけ使う道具としては、理にかなった割り切りだと感じました。

ただし「暖地なら暖房いらない」とも言えません

では、暖かい土地なら暖房は本当に不要なのでしょうか。公的な統計を見ると、そう単純でもありません。

環境省の令和5年度「家庭部門のCO2排出実態統計調査」では、沖縄で主に使う暖房機器はエアコンが39.6%、電気ストーブが21.1%でした。エアコンの割合は、全国平均の39%とほぼ同じ水準です。

那覇とほぼ同じ気温のハノイで冷房専用機が売られている一方、沖縄では4割の世帯がエアコンで暖を取っている。「暖房がいらない気温」と「暖房を使わない暮らし」は、別のものだったようです。

ベトナム側も一枚岩ではありません。現地の販売店サイトでは、冷暖房兼用機が「điều hòa 2 chiều(2方向エアコン)」として普通に扱われています。ある販売店は「phù hợp nhất với các tỉnh miền Bắc hoặc khu vực có mùa đông lạnh」(北部の省や、冬が寒い地域にもっとも向く)と説明しています。暖房が要る土地には、ちゃんと売っているわけです。

ネットの評判

まとめのコメント欄では、「冬でも暖房がいるほど寒くならないからねしょうがないね」と、気候から納得する声が目立ちました。「数年前行ったけど気づかなかった…。 また行きたい国です」という旅の感想もありました。

一方で、呼び方についての指摘も複数ありました。冷房専用の機械は「エアコン」ではなく「クーラー」と呼ぶべきだ、という立場です。

さらに目を引いたのは、国内から出た「沖縄でも普通」という返信と、「逆に北海道も冷房のみが普通だけどね (暖房はガス)」という声でした。暖房が別の機械に分かれている土地なら、エアコンは冷房だけでよい、という見方です。海外の珍しい話として読むか、自分の町の話として読むかで、受け取り方が分かれていました。

このまとめは、閲覧数6942、コメント14件と表示されています。

まとめ

「暖房の概念がない国」という話の正体は、国ではなく機械の区分でした。ハノイの1月は那覇の1月と0.2度差で、日本のメーカーも冷房専用機を2026年モデルとして出しています。

気になるのは、むしろ逆の数字です。ハノイとほぼ同じ気温の沖縄で、4割の世帯がエアコン暖房を使っている。暖房を切り捨てるかどうかは、気温だけでは決まらないようです。

筆者なら、冷房専用機は選びません。室外機が4.5kg軽いのは魅力ですが、年に数日の寒さのために別の暖房器具を置く場所を考えると、兼用のほうが片付くからです。みなさんのお住まいなら、どちらを選ぶでしょうか。

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