一回なくしてみれば
ありがたみ分かるって

――ある政府高官が、名前は出さずに

写真はイメージ Photo by engin akyurt on Unsplash

11/2 14:21 / 発信国:日本 / 記者:工藤

高市首相、ガソリン補助を毎月5円縮小 「ありがたみ」って言われても

高市早苗首相が10月29日、ガソリンなどの燃料油の補助を12月から段階的に減らすと表明した。1リットルあたりの基準価格を、毎月5円ずつ引き上げていく。店頭のガソリン代は、月ごとに上がっていくことになる。

そのあと、北海道新聞が縮小の「狙い」として、ある政府高官の言葉を伝えた。「せっかく税金を投入しているのに補助が当たり前になっている。補助を減らせば国民も『ありがたみ』に気づくだろう」。

減らせば分かる、ということらしい。え、と思った人は多いんじゃないか。

首相本人は「伝え方が悪かった」と話していた

言ったのは誰なのか。会見の記録を開いて確かめた。

首相官邸に載っている10月29日の会見で、高市首相はこう話している。「12月以降、原油価格の動向を注視しつつ、春先に向けて基準価格を毎月5円ずつ引き上げていく」。理由として挙げたのは、燃料油への支援は「あくまで『激変緩和措置』である」ということだった。激変緩和措置

その8日前、就任1年の会見では、別の言い方をしている。日本のガソリンは「一番低く抑えられている」としたうえで、「的確にそういった情報をお伝えしきれていない」「これが反省点でございます」。首相の反省は、政策ではなく広報の話だった。

つまり「減らせばありがたみに気づく」という理屈を、名前を出して認めた人は見当たらない。言ったのは、匿名の政府高官1人だ。北海道新聞によると、自民党の重鎮からはむしろ「円安を加速させ物価を上げているのは首相の財政拡張路線も要因」と、広報ではなく政策そのものへの批判が出ている。

で、財布はいくら変わるのか

数字を並べる。基準価格はいま170円程度。10月29日から11月4日の補助は1リットル52.4円で、過去最高の水準だ。補助を全部やめれば220円を超える可能性がある、と北海道新聞は伝えている。

ガソリンの価格を表示した看板
写真はイメージ Photo by Vladislav Klapin on Unsplash

そこから毎月5円ずつ。12月は第1週と第2週に2円ずつ、第3週に1円の計5円で、第4週以降は据え置きになる。1月以降は原油価格と中東情勢を見て決めるという。仮に3月まで毎月5円続けば、計20円だ。

月に100リットル使う人で考える。1,000キロを、1リットルで10キロ走る車で動かすとこれくらいだ。12月は月500円、3月には月2,000円の増になる。

政府は電気・ガスの支援も動かす。12月から2月までの3か月で、標準的な家庭で「7,000円程度」の負担引下げ効果がある、と首相は説明した。片方で戻し、片方で取っていく形に見える。

では、なぜ減らすのか。お金の話がある。北海道新聞によると、補助額は累計で9兆6000億円。いまは1日100億円を超える税金が入っている。首相の会見によれば、自民党と日本維新の会に加え、国民民主党や立憲民主党からも、段階的な見直しや出口戦略を考えるべきだと指摘されてきた。実質賃金も9か月連続でプラスだと首相は述べている。「縮小そのものは当然」という見方は、政界ではむしろ多数派だ。

割れているのは、縮小するかどうかではない。理由づけのほうだ。

ネットの評判

はてなブックマークでは、北海道新聞の記事に29件のブックマークが付いた。「減らせばありがたみ気づく という説明はひどくないか」「物価高を意識させないように補助金垂れ流してきたくせに無責任」といった、言い方への批判が並ぶ。

掲示板のガールズちゃんねるでも、反発のほうが圧倒的だった。「なんだその上から目線は」「ありがたみwww私らが納めた税金なんだが」といった書き込みに、それぞれ300を超える賛同が付いている。縮小そのものを支持する書き込みは、100件を超えるやりとりの中でごくわずかだった。

12月の引き上げは、第1週に2円、第2週に2円、第3週に1円。年末のガソリン代は、週ごとに上がっていく。

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