お年寄りか妊婦さん以外は
座らないで

――高齢女性が、手術帰りの女性に

10/30 12:52 / 発信国:韓国 / 記者:工藤

「高齢者か、妊婦か」と聞かれ殴られた 韓国の優先席、けが人も座れる

ソウルの地下鉄2号線で、手術を終えて家に帰る途中の女性が、優先席に座っていたら高齢の女性に顔を殴られた。女性はそう話している。韓国のメディアが10月27日に伝えた。

殴られる前に聞かれたのは、たった一言だった。「高齢者か、妊婦か」。

女性は「手術を受けて家に帰る途中です」と答えた。それでも高齢女性は「席をどけ」と言い、顔を殴ったという。電車は、2号線の蚕室セネ(チャムシルセネ)駅へ向かうところだった。

隣に座っていたのは、夫だった

女性の隣には夫がいた。高齢女性はその夫を見て「彼氏とイチャついてるのか」と言ったと報じられている。

女性が携帯電話で撮り始めても、高齢女性は殴る手を止めなかった。「上げてみろよ」「生意気に、どこで写真を撮ろうとしてるんだ」。近くの乗客が「なんで人を殴るんだ」と止めに入ったが、高齢女性はその乗客に、この子が写真を撮ろうとしている、と言い返したという。

女性は警察に通報した。「回復しないといけないのに、手術したところがもっと痛むし、精神的にもとてもつらい」と話している。あとでSNSのスレッズに、助けてくれた人たちへ「不快な思いをさせてしまって、すみません」と書いた。殴られた側が、謝っている。

名前は、21年前に変わっていた

では、あの席は本当に高齢者と妊婦だけの席なのか。違う。

韓国の地下鉄のあの席は交通弱者席と呼ばれている。障害のある人、満65歳以上の高齢者、妊婦、満5歳以下の子どもを連れた人、そしてけが人。移動に不便がある人なら座れる席だと、複数の韓国メディアが書いている。

もともとは1980年に「老弱者席」として始まった。2005年、高齢者だけの席ではないとはっきりさせるために、いまの名前に変えた。交通弱者の移動便宜増進法という法律の定義にも、手術のあとの患者やけが人は入ると、韓国メディアは説明している。

つまり、手術帰りの女性は、座っていてよかった。

ネットの評判

韓国のネットでは、殴った高齢女性への批判がほとんどだ。ニュースのコメント欄やネット掲示板には「損害賠償を請求したほうがいい」「手術した女性を殴るなんて」という声が並んだ。「年を取っているからといって暴行が正当化されるわけがない」「高齢者に特権があると思うのが、そもそも間違いだ」との書き込みも紹介されている。被害を受けた女性へ向けた「早く落ち着きを取り戻せますように」という声もあった。

そのなかに、席そのものの線引きに向かう声もある。「手術したと言っているのに、配慮してあげられないのか」。暴行を責めるのとは別に、優先席には誰が座れるのかという話として読んだ人たちだ。

見た目では、分からない

殴ったことは、座席の話とは別だ。相手の体を叩く行為は暴行罪になりうると、韓国のメディアは書いている。

ただ、この話で引っかかるのは、席のほうだ。優先席の前で「この人に座る資格があるか」を決めているのは、たいてい他人の目だ。手術のあとかどうかは、服の上からは見えない。だから韓国の決まりは、見た目ではなく「移動に不便があるか」で線を引いている。

韓国で席の名前が「老弱者席」から「交通弱者席」に変わって、21年たつ。それでも電車の中で最初に飛んできた質問は、「高齢者か、妊婦か」だった。

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