もう直ったから、
通常どおり進んで

――マドリードの指令所が、運転士に

11/4 14:35 / 発信国:スペイン / 記者:工藤

スペイン運輸相が辞任 69人死亡の追突、信号の故障は今年170回

スペインのオスカル・プエンテ運輸相が11月3日、辞任を表明した。10月28日にトレド県ウルダの近くで高速列車が追突し、69人が亡くなった事故を受けたものだ。1月の脱線事故と合わせると、1年足らずで115人が亡くなっている。

分かっているのは、当日の朝の出来事の順番だ。8時30分ごろ、LZBという信号装置が63キロにわたって落ち、上下6本の列車が止まった。8時36分、マドリードの指令所が「直った」と伝え、通常どおりの運行再開を指示する。だが先を走るiryo6076便は装置を立ち上げ直せず、止まったままだった。8時53分、後ろから来たAVE2080便が、時速180〜200キロで追突した。

「ずっと前に取り替えられているはずだった」

この路線は1992年のセビリア万博に合わせて開業した、スペイン最初の高速鉄道だ。信号装置も、そのときのLZBのままだ。

事故の前から、現場はそう言っていた。運転士の労組SEMAFのディエゴ・マルティン書記長は10月29日、数日前からLZBが繰り返し故障していたとして、「この路線で動いているLZBは、ずっと前に取り替えられているはずだった」と話した。1992年にLZBをスペインへ持ち込んだ技術者のアントニオ・マルティン=カリージョ氏も11月2日、34年前の装置が交換部品もないまま放置されていると指摘している。ERTMSへの置き換えは2021年9月に約9,383万ユーロ(約170億円)で発注され、今年の初めに終わる予定だった。この区間は、まだ終わっていない。

プエンテ氏の見方は違った。11月3日、今年のLZBの通信途絶は約170回あったが、7割5分はケーブルの盗難や工事など装置の外の理由だと話している。170回は、ほぼ2日に1回だ。これを平均の範囲と見るか、現場の警告どおりと見るかで、話が割れている。

ネットの評判

スペインではXで批判が一気に膨らんだ。あるサッカー選手の「ツイッターはあなたの仕事じゃない」という投稿がほかの選手にも広められた。プエンテ氏が1月の事故のあとに「ああいう事故はまず起きない」と話していた発言も掘り返された。調査の結果を待つべきだという声は、批判ほど広がらなかったという。辞任は、労組のUGTが「品位ある行動だ」と評価している。

まだ分からないこと

指令所がなぜ「通常どおり」と伝えたのか。iryo6076便が止まったままであることが、なぜ後続の運転士に伝わらなかったのか。ここは調査中だ。Renfeは11月1日から、運転台の信号が落ちたら必ず止まり、口頭の許可を得て時速40キロ以下で目視で進む決まりにした。SEMAFは、国の鉄道安全機関にLZBの規則そのものの見直しを求めている。次の焦点は、ERTMSの工事が前倒しされるかだ。

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