日本史とか世界史の勉強って、ほんまにムダやったな
――必ず学ぶ歴史は、卒業単位の2.7%
「歴史の勉強はムダ」論を、年収データと高校の授業時間で検証してみた
投稿者が娘に「学校の勉強で無駄になることはないよ」と話していたら、理系の夫から「日本史とか世界史の勉強ってほんまにムダやったなと思う」と返された。Xに投稿されたこのやりとりがTogetterにまとめられ、はてなブックマークで488人が登録する話題になっています。
「無駄になるものはない」と「あれは無駄だった」。どちらの言い分も、どこかで聞いた気がします。筆者は、この話を感情のぶつけ合いで終わらせないために、公式のデータで2つ確かめてみました。高校で歴史に使う時間は実際どれくらいなのか。そして、「理系のほうが得をする」は数字で言えるのか。
もとになったやりとり
まとめによると、投稿者が娘に勉強の話をしていたところ、理系の夫が「日本史とか世界史の勉強ってほんまにムダやったなと思う」と主張しました。
投稿者は強く反論しています。「無駄にしてるのはお前」、そして「無駄こそが『遊び』であり『余白』であり人生の本質」という2点です。さらに、ミツバチには働かない個体が一定の割合でいて、それが組織のバッファー(余力)として機能しているという例も挙げています。
Togetterのまとめは閲覧数49,370、コメント180。はてなブックマークでは488人がブックマークしています。
計算してみた。必ず学ぶ歴史は「2単位」
筆者がまず引っかかったのは、「日本史とか世界史」という科目の区切りです。
nippon.comの解説によると、2022年度から全国の高校で「歴史総合」が必履修科目として始まりました。2単位、週あたり50分授業2コマの科目です。それまでは「世界史A」か「世界史B」のどちらかと「現代社会」が、必ず学ぶ科目でした。
つまり娘の世代が必ず学ぶ歴史は、日本史と世界史に分かれた科目ではなく、「歴史総合」という1科目に変わっているわけです。
時間も計算できます。文部科学省がサイトに掲載している高等学校学習指導要領の総則では、1単位時間を50分とし、35単位時間の授業を1単位として計算することが標準とされています。また、卒業までに修得させる単位数は74単位以上と定められています。単位
2単位なら70単位時間。50分をかけて3,500分、約58時間です。74単位のうちの2単位は、2.7%にあたります。
必ず学ぶ分だけで言えば、歴史は高校の学びの3%に届きません。ここを「全部無駄だった」と言うか、「たった3%くらい、いいじゃないか」と言うかで、話はきれいに分かれます。
なお、歴史は受験では避けづらいままです。国立大学協会は2022年1月28日、国立大の一般選抜で、従来の5教科(国語・外国語・数学・地歴公民・理科)7科目に「情報」を加えた6教科8科目を課すことを原則とする方針を公表しました。地歴公民は、この5教科に入っています。
年収データを比べてみた
「理系のほうが得をする」という実利の話にも、数字があります。
独立行政法人経済産業研究所(RIETI)のコラムで、京都大学の西村和雄氏が示した数字です。2008年の調査では、文系学部出身者の平均年収が583万円、理系学部出身者が681万円。差は約100万円で、理系が上でした。京都大学も2010年8月24日に、西村氏らの研究グループが「理系学部出身者のほうが文系学部出身者よりも高所得である」との結果を得たと発表しています。
ただ、同じコラムには続きがあります。2010年に日本家計パネル調査(JHPS)のデータで男性のみを対象に再検討すると、文系559.02万円、理系600.99万円。差は約42万円まで縮みます。
約100万円と、約42万円。同じ研究者が扱った数字でも、調査の取り方で差の幅は2倍以上動きます。筆者が一番気になったのは、ここでした。「理系は得」はデータで裏づけられてはいますが、その差がどれくらいかは、思うほどはっきりしていません。
しかもコラムは、理系が高収入である理由として、職業の選択肢に恵まれていること、技術系の職種への再就職がしやすいことを挙げています。歴史を勉強したかどうかの話ではなく、就ける仕事の幅の話です。
ネットの評判
Togetterのコメントとはてなブックマークでは、賛否がはっきり分かれています。
歴史を擁護する側では、あるユーザーが「歴史は繰り返すんだから、為政者のパターンや民衆の在り方とか戦争のきっかけや人間の心理など、ヒトのありとあらゆる生態を学べる」と書いていました。「ガチ理系ですが、歴史は大切ですし、大好きです」という声もあります。はてなブックマークでは「これだけきな臭い国際情勢下に生きてて、世界史が無駄ということもないだろうに」「社会人、配偶者、親、地域の人間といった属性どれとっても常識みたいなもん」という指摘が目立ちました。
一方で、夫に近い意見も並んでいます。「所詮は過去のものである歴史を優先して学ぶ人の気持ちは理解できない」「理系の大学に進もうとする人の受験にとって『社会科』は本当に無駄でしかない」。はてなブックマークには「無駄になることはない→無駄が必要となっていて、無駄になることはある、でいいじゃん」「無駄=オレには必要なかったってだけなので細部を詰めても議論は平行線」という冷静な整理もありました。「無駄がどうとかの前に、苦手だっただけなのでは」という声も出ています。
まとめ
数字を並べてみて分かったのは、2つです。言い争いの的になっている「必ず学ぶ歴史」は2単位・約58時間で、卒業単位の2.7%でした。そして理系と文系の年収差は、同じ研究者の調査でも約100万円と約42万円の間で動きます。
「無駄だったかどうか」は、たぶん数字では決まりません。ただ、2.7%という割合を知ったうえで言い合うのと、知らずに言い合うのでは、話の着地点は少し変わる気がします。
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TBS系『VIVANT』第21話/週刊女性PRIMEの報道
- 娘に学校の勉強で無駄はないと諭していたらガチ理系の夫が「日本史とか世界史の勉強は無駄だった」と主張(Togetter 1ページ目)
- 同(Togetter 2ページ目・コメント)
- はてなブックマーク エントリーページ(488users・ブックマークコメント)
- RIETI コラム「理系出身者と文系出身者の平均年収の比較」(西村和雄)
- 京都大学「理系学部出身者と文系学部出身者の平均年収の比較調査の結果について」(2010年8月24日)
- nippon.com「高校の新科目『歴史総合』の可能性と課題」
- 文部科学省「高等学校学習指導要領 第1章 総則」
- 高校生新聞「国立大の一般選抜 2025年から『情報Ⅰ』加え『6教科8科目』」