意味が分からないと、
聞いた気がしない
――英語の音を流しながら、思うこと
英語の耳がいい人は音を「言葉」にしない? 早稲田大と東北大が67人を測定
英語の耳がいい人は、聞こえた音をすぐ「言葉」にしていなかった。東北大学、ロンドン大学(UCL)、早稲田大学の国際共同研究チームが、2026年10月21日にそう発表した。日本人の英語学習者67人をfMRIの装置に入れ、英語の母音を学んでもらったときの脳の動きを調べた結果だ。
えっ、言葉として聞かないほうがいいのか。
耳のいい人は、何をしていなかったのか
課題に使ったのは、英語の /æ/ と /ʌ/ という2つの母音だった。cat の「ア」と cut の「ア」だ。どちらも日本語には無い音で、日本語の「ア」ひとつに聞こえてしまいやすい。研究チームは、この2つの聞き分けと、それに対応する「言葉ではない音」の聞き分けを、装置の中で67人にやってもらった。

結果は、きれいに分かれた。聴覚精度が低い人は、英語の音を聞いたときに日本語の母音が強く呼び起こされていた。高い人は、そうならなかった。脳の感覚運動ネットワークに頼る度合いが小さく、言葉ではない音を聞いているときに近い動きをしていたという。
責任著者のSaito-van Poeteren教授は、科学ニュースサイトのPhys.orgにこう話している。「音の違いに対する『いい耳』を持つ学習者は、新しい外国語の音を、すぐに『言語』として処理することなく、客観的に聞くことができる」(訳)
知らない音を、知っている音に直さない。そのまま音として置いておける、ということらしい。
「約40.6%」の残りは何なのか
ここで、才能の話として読みたくなる。でも数字を見ると、そう単純ではない。
早稲田大学の発表によると、聴覚精度の個人差で説明できたのは、英語の母音テストの成績の差のうち約40.6%だ。左の感覚運動ネットワークの活動との相関は r=0.545 だった。4割といえば大きいが、残りの6割は別の何かで決まっている。
これまでの外国語教育の研究では、学習経験や練習量が重視されてきた、と発表文は書いている。単語を増やす、問題を解く、話す回数を増やす。多くの人が思い浮かべる努力はこちらだろう。今回の研究は、それを否定していない。4割の話をしているだけだ。
で、耳は鍛えられるのか
答えは、まだ出ていない。
研究チームが次にやると言っているのは、音の高さなどの細かい違いをつかむ力を直接鍛える「言語・聴覚トレーニング」を作ることだ。そのうえで、実際の外国語の力、耳そのものの力、脳の処理のしかたの3つが同時にどう変わるかを測る。訓練が効くかどうかは、これから確かめる段階にある。
研究チームは、「たくさん練習する」という前提から、一人ひとりの脳と耳の特性に合った「学べる耳」を育てる教育へ、という方向を掲げている。
ここで意見は割れる。外国語は、意味を取る前に、まず音として聞く時間を作ったほうがいいのか。それとも、単語と文法を積み上げるのが先か。この研究が示しているのは前者の「かもしれない」までで、やり方まではまだ書かれていない。
耳を鍛える訓練プログラムは、まだ存在しない。耳の細かさが成績の差の約40.6%を説明すると分かったのは、2026年10月13日のことだ。
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