おにぎり1個なのに、
この列だ
――レジではなく、AIデータセンターの中の話
AIデータセンターの通信方式「Homa」、短いメッセージの待ち時間がTCPの13分の1
スーパーのレジに、カートを山盛りにした客が並んでいる。その後ろに、おにぎり1個を持った人がつく。この「おにぎり1個」を先に通す仕組みを、AIデータセンターの通信に持ち込む提案が出ている。スタンフォード大学のジョン・オースターハウト名誉教授が唱える、TCPに代わる通信方式「Homa」だ。レジはたとえで、日本の話ではない。
13分の1とは、何の13分の1か
条件は、100Gbpsの回線が8割埋まった状態。短いメッセージの99パーセンタイル遅延は、TCPが1.2ミリ秒、Homaが92マイクロ秒だった。同氏が英メディアThe Registerに示した数字だ。約13分の1になる。
99パーセンタイル遅延とは、計測した通信の99%がその時間までに収まった、という境目の値である。平均ではない。レジなら、全員の平均ではなく、長く待たされた側の客を基準にした数字だ。
なぜ速くなるのか
TCPでは、送る側が混雑の具合を推し量って流す量を決める。
Homaは逆で、受け取る側が「ここまで送っていい」と許可を出す。やり取りの単位は、切れ目のないデータの流れではなく、長さの決まった1通だ。送る前から、何バイト送るかが分かる。そのうえで、あと少しで送り終わる通信から先に通す。優先順位はネットワーク機器のキューに持たせる。
AIの大規模クラスターでは、モデルの重みのような大きな転送と、KVキャッシュの参照のような短い通信が、同じ線を流れる。待ちが1ミリ秒出るだけで高価なGPUの手が止まる、と同氏は言う。Homaが縮めるのは、この遅い側の待ち時間である。
ただし、Homaはデータセンターの中の通信に向けた設計だ。IETFに出した草案も、遅延の大きな広域網には向かないとしている。自宅のWi-Fiが13倍速くなる話ではない。
どこまで進んでいるのか
実装はLinuxのカーネルモジュールとしてGitHubで公開されている。再起動せずに組み込める。TCPと並べて動くので、移行は一つずつでよい。2026年3月にはRed Hat Enterprise Linux 8と9.5にも入った。IANAの番号一覧には146番として「Homa」が載る。同氏はいま、IETFに出す標準化文書を書いている。
批判もある。ネットワーク設計者のイバン・ペペルニャック氏は2023年、オースターハウト氏によるTCPの性能評価は、接続を持たない方式に有利な条件で行われたものだと疑った。Homaは問題を探している解決策に見える、とも書いた。
ネットの評判
はてなブックマーク(記事に一言を添えて登録するサービス)では、この話題を84人が登録した(2026年10月6日時点)。目立つのは、技術の中身より普及への疑いだ。あるユーザーは「普及しないのが常だが、研究だけじゃなくて実際に Linux とか標準化への働きかけもしてるっぽいし、どうなるか。」と書いた。SCTPやNetBEUIの名前も挙がった。「TCP IS DEAD」という言い方には「余計な一言なんだよ。」と反発が出た。
オースターハウト氏自身は、TCPを一斉に止めろとは言っていない。Homaを入れたマシンでは、TCPのまま残したアプリケーションの速度も上がるという。
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- TCPに代わる高速通信プロトコル「Homa」
- Stanford prof is beating the drum for a new protocol to replace TCP(The Register)
- Homa: A Receiver-Driven Low-Latency Transport Protocol Using Network Priorities(arXiv)
- Homa: An RPC Transport Protocol for Datacenters(IETF向け草案)
- PlatformLab/HomaModule(GitHub)
- Is It Time to Replace TCP in Data Centers?(ipSpace)
- Protocol Numbers(IANA)
- はてなブックマーク「TCPに代わる高速通信プロトコル「Homa」」
- Homa: The End of TCP for AI Clusters — John Ousterhout, Stanford(YouTube)