一行ずつは読まない。
意図だけ見る

――Anthropicが、AIの書いたコードを

写真はイメージ Photo by Arnold Francisca on Unsplash

10/21 12:08 / 発信国:アメリカ / 記者:工藤

Anthropicのコード変更が1日3万件 Gitを捨てて自作に移った

Anthropicが10月13日に出した技術ブログに、こんな数字が載っていた。2026年9月、社内のコードの変更は1日3万件を超えてマージされていた。5月はおよそ2,500件。4か月で12倍だ。書いているのは、ほとんどがコーディングエージェントだ。

で、これ、誰が読んでいるの?

答えは同じブログにある。人間は今もすべての変更の申請を見ているが、一行ずつ読むのではなく「変更の意図」を見ている、という。一行ずつ読むのは、やめたということだ。

1件を1分で読んだとしても、3万件で500時間になる。1日8時間なら、毎日62人が丸一日コードだけ読み続ける量だ。Anthropicは読む人を62人増やすのではなく、道具を替えた。Gitをやめ、自社製の「Scion」に移り、レビュー用の「Antique」も作った。7人で5か月だという。

こういうやり方を、Addy Osmaniは2月に「工場モデル」と呼んだ。その工場に待ったをかけた、7月の講演がこれだ。

「読まずに通す」を試した会社は、コードを捨てた

講演したのはHumanLayerのDex Horthy。人が一行もコードを読まない「消灯工場」を、数か月やってみた人だ。コードベースは荒れていき、11月と12月に作り直すと決めた。「全部の間違いを直すより、ゼロから作り直すほうが楽だった」。悪い設計のつけは月や年の単位で出るので、AIに学ばせにくいという。そして「答えは、コードを読むのをやめることではない」と言い切っている。

別の道を選んだ会社もある。セキュリティ基盤のStrongDMは2月、人が決めるのは「何をしたいか」と検証の筋書きだけで、あとはエージェントが書いて自分で検証する、と公開した。ここに待ったをかけたのが、スタンフォード大ロースクールのEran Kahana。「作る者と検査する者が同じ死角を持つとき、テストをどれだけ増やしても危険は消えない」と2月に書いた。壊れたとき原因をたどれる人が残らないほうが怖い、というのだ。

速くなった分だけ、事故も増えた

気分の話ではない。数字もある。開発の記録を分析するFaros AIが4月に出した報告は、22,000人の開発者と4,000以上のチームの2年分を調べたものだ。1人あたりで終えた仕事のかたまりは66%増えた。

工場のベルトコンベヤー
写真はイメージ Photo by Alberto Rodríguez on Unsplash

一方、誰のレビューも通らずに取り込まれたプルリクエストは31.3%増えた。プルリクエスト1件あたりの本番障害の比率は242.7%増。最初のレビューが付くまでの待ち時間も156.6%伸びた。読む量を減らしたのに、レビューの渋滞はひどくなっている。

ネットの評判

元のブログ記事は、はてなブックマークで521人が登録した。多いのは「慣れの問題だ」という声だ。今の開発者がコンパイラの出す機械語を読まないのと同じ、という書き込みがある。外注のコードも、昔からちゃんと読んでいなかった、とも。

納得していない声も強い。Anthropicのブログを扱ったHacker Newsのスレッドでは、人が読まないAIのコードはあとから細かいバグを生むので、小さく分けて読むべきだという意見が目立つ。一方で、大きなチームの開発は昔からそんなものだ、という返しもある。

Anthropicは10月16日、自社の雇用の変化も公表した。技術部門のジュニアの割合は、2025年の初めの21%から2026年4月に14%へ。採った人のうちジュニアは27%から9%に下がった。面接でいちばん増えた評価は、専門知識ではなく「自律性と判断力」だった。

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