いい感じに編集して
それだけ言った

――そう言われたAIが、8時間の素材を30分でまとめた

写真はイメージ Photo by Peter Stumpf on Unsplash

10/15 16:12 / 発信国:日本 / 記者:工藤

AIに「いい感じに編集して」と全員が頼んだら、編集は似てくるのか

shi3z(清水亮)が、日本酒とAIのハッカソンで撮った8時間分の映像をフォルダにまとめた。AIにファイルを触らせるClaude Codeへの指示は「いい感じに編集して」の9文字だけ。30分後、1時間ほどの粗編集が出てきた。タイトル画面まで入っていたという。

粗編集は、使う場面を選んでつないだ、仕上げ前の状態だ。10月14日のnoteによると、shi3zはBGMとつなぎだけに手を入れ、正味2時間ほどで仕上げて次の日に出した。

超短い指示が、超長い素材をさばいた。この一言を、みんなが使ったらどうなるのか。

そろう手と、そろわない手

同じことをやった記録は、ほかにもある。じゅんや@動画制作は3月27日、音声を文字にして字幕まで作る仕組みを出した。fyveは5月13日の記録で、「えー」「あのー」といったつなぎの言葉と長い沈黙を落とし、字幕も入れている。

そろっているのは、文字起こしから字幕を作り、要らないところを落とす手だ。ただ、同じ一式ではない。じゅんやは無音のカットを別の道具で先に済ませ、自動化から外した。fyveは、BGMの音量を区間ごとに決めている。

なぜ似るのか。駿 西嶋のQiita記事が、理由の一つを書いている。「いい感じに」という頼み方には、目的も条件も、良しとする基準もない。「AIはその空白を、学習データにある平均的なパターンで埋めます。」(原文ママ)

同じ紙が積み重なっている様子
写真はイメージ Photo by ron dyar on Unsplash
音声の波形が表示された画面
写真はイメージ Photo by Pawel Czerwinski on Unsplash

文章では、数字が出ている

2024年7月、Science Advancesに実験が載った。DoshiとHauserが300人に物語を書かせ、別の600人が点を付けた。ChatGPTの案をいちばん多く見た群は、新しさの評価が8.1%上がった。一方、案を1つ使った群では、物語どうしの似かたが10.7%上がった。一人ひとりはうまくなり、集まりは似る。

頼み方を変えれば逃げられるのか。JAAA REPORTSが5月にまとめた整理は、そこを否定する。14のLLMを調べても、新しいモデルほど創造性の点が高い、とはならなかった。約2,200本の文章で測った多様性成長率は、人間が0.58、GPT-4が0.18。一つ一つの答えは良くなっても、「みんなが同じ方向に多様化する」ので、集まりとしての幅は増えないという。

ただ、逆向きの事実もある。2025年10月のVerbalized Samplingという論文は、モード崩壊の原因を、評価する人が見慣れた文章を好む偏りに見た。「案を5つと、それぞれの確率を出せ」と頼むだけで、創作の課題では多様性が1.6〜2.1倍に戻ったという。

集まりとしての幅は戻らないが、一人の出力の幅は戻せる。映像で多様性を測った数字は、探した範囲では見つからなかった。「映像でも偏る」とは、まだ言えない。ただ、同じモデルに同じ一言を渡す条件は、そろっている。

shi3zの記事に付いたはてなブックマークのコメント27件では、「肝心のコスト面が抜けてるが10分で1万円程トークンが必要」というお金の話や、文字起こしの質を惜しむ声が目についた。

yuta_tech(Zenn)は、AIが出したものを直す側に回り、「人間の仕事は作業から判断にシフトする」(原文ママ)と書いている。偏るとすれば、「編集」そのものではなく、「いい感じ」の中身をAIに決めさせた範囲だろう。分かれるのは、どこで笑わせるかと、何を残さないかだ。shi3zが自分の手で触ったのも、BGMとつなぎだけだった。

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