僕が辞めたら、
中身はパソコンと同じだ

――ある発明者が、自分が作った機械について

写真はイメージ Photo by JESHOOTS.COM on Unsplash

10/11 18:37 / 発信国:日本

生みの親が語る、PlayStationが「PCと同じ」になって失ったもの

PlayStationを作った久夛良木健氏のインタビューが、10月9日にゲーム情報サイト「4Gamer」に出た。自分が会社を離れたあとのPlayStationについて、久夛良木氏はこう言っている。「僕が引退したあとはPCゲームの人材が入ってきて,PCと同じになってしまった」。初代からPS3までは「間違いなくテクノロジードライバーだった」、つまり技術を引っ張る側だった、という見立てだ。

取材は、9月29日に電気通信大学で開かれたイベントのあと。久夛良木氏はこの大学の特別客員教授で、ゲームを中心にした研究拠点のお披露目に登壇していた。

専用の半導体を、自分たちで作っていた

なぜ「PCと同じ」なのか。昔のPlayStationは、中に入れる半導体を自分たちで設計していた。PS3の計算用チップCellは、IBMと東芝と組んで作った。絵を描くほうのチップRSXは、NVIDIAと一緒に開発した。NVIDIAのジェンスン・フアン氏と先々の計画まで描き、RSXがその出発点だったという。

基板に載った半導体チップ
写真はイメージ Photo by Anne Nygård on Unsplash

ゲーム機のために、世の中にない部品をわざわざ作らせる。「テクノロジードライバー」と呼ぶのは、この作り方だ。いまは違う。PS4とPS5は、AMDと組んだチップを積む。土台はパソコン向けの設計だ。

なぜ、同じ部品にしたのか

では、なぜ専用の半導体をやめたのか。理由は、まずお金だ。PS4の中身が明かされた2013年2月、半導体に詳しいライターの後藤弘茂氏はPC Watchで、PS4がAMDのカスタムAPUを使うと書いた。作ろうとしているのが「PS1時のような100万トランジスタのCPUではなく、数十億トランジスタを載せたチップであり、ゼロから開発するのは非効率過ぎる」からだ。PS3のときのような「無茶」はもうできない、とも書いている。

久夛良木氏も、この道のいい面は認めている。パソコンと家庭用機が近づけば、ゲームを売れる相手は増える。「市場のパイが大きくなる」と話す。そのうえで、こう続けた。「それがテクノロジーの進化を呼び起こしたかといえばそうじゃなかった」。

では、代わりに何を失ったのか。久夛良木氏が出した数字が分かりやすい。初代『バーチャファイター』と並べて語られた『闘神伝』について、こう話す。「開発チームは10人以下で,開発期間は3か月だったんですよ」。いまは時間も人も桁違いにかける。それで何が良くなったか。「ただシェーディングが少し綺麗になった,NPCが多少喋れるようになったくらいで,AIと比較すると進化が止まっている」。シェーディングは、光や影の付き方を計算する処理だ。

ネットの評判

記事を保存して短いコメントを付けられるサイト「はてなブックマーク」では、この発言を要約した記事が246人に保存され、コメントが107件付いた(10月11日時点)。

ゲーム機とモニターのある机
写真はイメージ Photo by Sebastian Bednarek on Unsplash

目立つのは、久夛良木氏に冷たい反応だ。PS3の独自の仕様は現場にとってつらく、不平不満だらけだったと振り返る開発者側の声が並ぶ。独自のハードを作る費用は、いまの市場では回収できないという見方も多い。一方で、初代PSとPS2のころは確かに新しかった、という評価は残っている。「PCでいいならSwitch売れてない」と、専用機の売れ方から反論する声もあった。

パソコン向けの土台を選んだことで、ハードの開発費は抑えられた。ただ、その土台を作っていた2社は、ゲームより先に別の場所へ行った。久夛良木氏は「NVIDIAや,PS5と組んだAMDは,そのあとAIに行きましたよね」と話す。久夛良木氏がいま見ているのも、そのAIだ。2社は「AIのほうがはるかに高度な技術を扱っている」のに、「ゲーム業界はそこに入れていない」と久夛良木氏は話した。

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