がんもどきとさつま揚げは、
どっちに入るんだ

――はてなブックマークの読者が、脳の研究の分類表に

写真はイメージ Photo by Pranav Kumar Jain on Unsplash

10/22 12:16 / 発信国:カナダ / 記者:工藤

超加工食品で「脳が傷つく」カナダの研究を、NOVA分類と数字で確かめてみた

「超加工食品で脳が傷つく」という見出しが、10月の後半に一気に並びました。元になったのは、カナダのマクマスター大学などが10月15日に発表し、医学誌「JAMA Network Open」に載った研究です。

ただ、論文を開くと、見出しに出てこない数字がいくつも書かれていました。筆者はその数字を計算し、公式の分類表と突き合わせてみました。

「40%増」を、人数に直してみた

調べたのは、カナダに住む35〜69歳の8,783人。心臓や血管の病気がない人たちです。食事の調査と脳のMRI、体脂肪の測定、記憶と思考のテストを組み合わせています。

MRIの装置
写真はイメージ Photo by National Cancer Institute on Unsplash

食べている量の差は、はっきりしています。1日2,000kcalあたりの超加工食品は、最少の群で3.1食分、最多の群で12.8食分。約4倍の開きです。

この最多の群と最少の群を比べると、脳の血管に損傷が見つかりやすいかを示すオッズ比オッズ比は1.40。ばらつきの幅(95%信頼区間)は1.10〜1.77でした。報道の「40%増」はこれです。

では、実際に損傷が見つかった人の割合はどうか。論文の数値では、最少の群で8.1%、最多の群で11.3%。差は3.2ポイントです。GIGAZINEや科学サイトのScienceAlertは、ここを「約12人に1人」から「約9人に1人」へ、と書いていました。

100人で言えば、8人から11人に増えた幅になります。「40%増」と「100人あたり3人」は、同じ事実の二つの言い方です。筆者には、後者のほうが食卓で使いやすい数字に見えました。

見出しに出てこなかった結果もあります。記憶と思考のテスト(MoCAとDSST)では、超加工食品の量との関連は出ませんでした。画像には差があり、点数には差がなかった、ということです。

NOVA分類では、どこからが「超加工」なのか

研究が使ったのはNOVA分類NOVA分類です。作っているサンパウロ大学の公式ページで、4つの群を確かめました。

スーパーに並ぶ加工食品の棚
写真はイメージ Photo by Valeriano Escobar on Unsplash

グループ1は米、野菜、豆、穀粉、低温殺菌の牛乳、冷凍した肉。乾いたパスタやコーヒーもここです。グループ2は油、バター、砂糖、塩。グループ3は、グループ1の食品に塩や砂糖、脂を加え、比較的単純な工程で作ったものです。公式の例には、缶詰の野菜、シロップ漬けの果物、職人的に作られたパンやチーズが挙がっています。

グループ4が超加工食品。清涼飲料、ソーセージ、インスタント麺、ファストフードなどで、着色料・香料・乳化剤・増粘剤といった添加物を使う点が特徴とされています。

公式ページは、3と4の違いをこう書いています。グループ3は「食品に物質を加える」、グループ4は「分けて取り出した物質から食品を組み立てる」。同じ「パン」でも、何でできているかで入る群が変わるわけです。

日本人が食べている量も調べました。東京大学の篠崎奈々客員研究員らが成人2,742人の食事記録を分析した研究(Nutrients 2023年3月6日号)では、1日の総エネルギーに超加工食品が占める割合は27.9〜42.4%。18〜39歳の群は60〜79歳の群より有意に高い、という結果でした。

カナダの研究の最多の群は、食事の45%が超加工食品(最少の群は16%)。ただしこちらは食べた回数での割合で、東大の数値はエネルギーでの割合です。単位が違うので、そのまま並べることはできません。

専門家が「まだ早い」と言う理由

イギリスのScience Media Centreには、この研究への専門家コメントが2件載っています。どちらも研究の作りを評価したうえで、読み方に注意を促していました。

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのDerek Hill教授は、MRIの読み取り方法を「広く使われていて信頼できる」としたうえで、この関連は因果の証拠にはならないと書いています。別々の人を1時点で比べた研究だから、同じ人を時間を追って調べる設計が必要だ、という指摘です。

アバディーン大学ローエット研究所のJules Griffin所長は、逆向きの可能性に触れました。脳の変化が先にあり、それが生活の変化と脂肪のつき方につながった、という順番もありうる、と。さらに、超加工食品を多く食べる群は塩・糖・飽和脂肪も多いのに、論文はそこを調整していないと指摘しています。

論文自身も弱点を書いています。超加工食品の量を「総エネルギーに占める割合」や「食品数に占める割合」で定義し直すと、脳血管の損傷との関連は弱まり、統計的に有意ではなくなりました。

分類そのものへの疑問もあります。European Journal of Clinical Nutrition(2022年)に載ったVéronique Braesco氏らの検証では、同じ食品でも評価者によって入る群がばらつき、一致度の指標は0.32〜0.34という低い値でした。グループ4に分けられた食品のうち26〜35%は、栄養の指標では最高評価のAに当たっていたそうです。

ネットの評判

はてなブックマークでは、元になったGIGAZINEの記事に17人がブックマークを付けていました。

目立ったのは、線引きへの戸惑いです。がんもどきやさつま揚げは、本当の超加工食品と区別がつかない、という声。卵かけご飯は安全なのか、でも醤油をかけ過ぎたら台無しだ、と書いた人もいました。

研究の読み方への疑問も出ています。糖・塩・脂質が多ければ家庭の料理でも同じではないか、という声。GIGAZINEが挙げた限界、「食事内容が被験者の自己申告に基づいており、正確な食事内容を反映していない可能性」を引いて、方法に注意した人もいました。一方で、肥満とは関係なく脳の血管の損傷が起きることを心配し、いまの食生活で完全に避けるのは難しいと書き込んだ人もいます。

まとめ

数字を並べてみて筆者がいちばん気になったのは、測り方を変えると関連が消えた、という一点でした。論文は、体脂肪や内臓脂肪との関連のほうが確かだったと読めます。

研究チームのPHRI(マクマスター大学の人口健康研究所)は、同じ人を追いかけてMRIを繰り返す研究を計画しています。白黒がつくのはそこからです。それまでは「超加工食品」という大きな一語より、自分の食卓の塩と砂糖の量を確認したほうが、筆者には扱いやすそうに見えました。

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