このうどん、
のびてませんか?
――文化庁が認定した、伊勢うどん
伊勢うどんが文化庁の「100年フード」に なぜ農水省じゃないのか
文化庁が「100年フード」という認定をやっている。地域で世代を越えて受け継がれてきた食べ物を選ぶ取り組みで、文化庁のサイトでは、これまでの認定が329件とされている(11月4日時点)。食べ物の話なのに、やっているのは農林水産省ではない。文化庁だ。
2025年3月14日の発表では、三重県の伊勢うどんが令和6年度の認定を受けた。応募64件のうち、認定は50件。伊勢うどんはそのなかで有識者特別賞も取っている。あの、やわらかいうどんが。
食べ物なのに、なぜ文化庁なのか
理由は法律にある。文化芸術基本法が平成29年6月23日に改正され、食文化の振興が新たに明記された、と文化庁は説明している。茶道や華道と同じ「暮らしの文化」の側に、食が入ったわけだ。令和5年3月27日には、長官を本部長にした食文化推進本部も庁内に置かれた。食べ物を農産物として見るか、文化として見るか。その分かれ目が、看板の違いになっている。
認定の条件は、意外と事務的だ。地域特有の食文化であること、世代を越えて食べられてきたこと、そして継承宣言をする団体があること。この3つを満たすと、公募、書類審査、有識者委員会という流れで決まる。伊勢うどんの継承団体は、伊勢市そのものだ。
部門は3つある。江戸時代から続く「伝統」、明治・大正に生まれた「近代」、これから100年続けたい「未来」。認定されると、ロゴマークをウェブサイトやSNS、商品パッケージに使える。売り場に貼れる看板が1枚増える、ということだ。令和8年度の応募は、2026年10月20日に始まっている。
「コシがない」のは、江戸時代の客に合わせたから
ここからが本題。伊勢うどんは、太くてやわらかい麺に、少量のたまり醤油をベースにしたタレをかけて食べる。具は刻みネギ程度で、ほとんど載せない。
起源は、伊勢の農民が麦を挽いてうどんを打ち、地味噌から取れた「たまり」をかけて食べたものだと伝えられている。それが全国から伊勢神宮に集まる参宮者をもてなすために改良され、江戸中期には今の形になっていた、と伊勢市は説明している。江戸後期には市中にうどん屋が多くあり、幕末には宇治橋の手前にも店があったという。
では、なぜやわらかいのか。伊勢市の説明では、長旅で疲れた人に好まれる「食べ応えがありつつ消化が良い」食べ物だったからだ。何日も歩いて来た客の腹に合わせて、麺のほうを変えた。タレのレシピは、いまも店ごとに違う。
ネットの評判
Yahoo!知恵袋の「伊勢うどんはおいしいですか?」という質問には、きつい言葉が並ぶ。あるユーザーは「あの柔らかすぎるうどんの食感と味が嫌いです」と書き、別のユーザーは「コシがないノビたうどんで太いから余計にマズイ」と答えている。「こんなグニュグニュで甘辛いどす黒いタレがかかったうどんなんて勘弁してくれ」という声もあった。
同じページには、逆の声も残っている。「私は好きです」「あの餅の様な柔らかさと、独特なタレの風味がたまりません」。きつい言葉を書いたユーザーの一人も、「本物の『伊勢うどん』は恐ろしくおいしい」と付け足していた。
そして、継承団体の伊勢市と文化庁の側は、その柔らかさを欠点として扱っていない。文化庁のページに載った伊勢うどんの紹介文は、「太くてやわらかい麺」を特徴の1つ目に挙げている。
ネットで一番たたかれている柔らかさが、文化庁が認定した中身そのものだった。
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