ごめんで済んだら、
警察はいらない

――ノムトイバヤル副首相が、謝罪した日本企業に

10/22 12:55 / 発信国:モンゴル / 記者:工藤

東京都2.4倍が焼失したモンゴル KDDI子会社はなぜ保護区に入ったのか

10月8日の昼前、モンゴル東部のドルノド県にあるヌムルグ厳格自然保護区で、草原火災が起きた。火は8日間燃え続け、16日の朝にようやく消えた。モンゴル環境・気候変動省の暫定の集計で、焼けた面積は約52万8765ヘクタール。東京都の2.4倍にあたる広さで、保護区の約8割が焼けた。

火元とみられるのは、モンゴルの通信大手モビコムの幹部らが乗った車列の一台だ。モビコムは、KDDIが98.8%の株を持つ連結子会社だ。乾いた草が車の底に絡まって火が出た、と新華社などが伝えた。現地の報道によると、走っていたのは日産の「パトロール」だった。

なぜ、保護区に車で入っていたのか。ここの説明が、二つに割れている。

会社は「通信試験」、現地報道は「釣り」

KDDIは、モビコムの社員がドルノド県の遠い場所で4Gの通信試験をするために立ち入った、と説明している。国境の警備当局には前もって知らせていた、とも話す。入ったのはモビコムの3人で、越智康博CEOと幹部2人だという。

一方、モンゴルや中国の報道は違う話を伝えている。一行の目的は、絶滅危惧種のアムールイトウ釣りや狩りだったのではないか、というものだ。国境警備当局によると、10月6日から8日にかけて立ち入りを認められたのは13人。その中に越智CEOと社員がいた。

モンゴルのノムトイバヤル副首相は「業務として保護区に入る必要があったのかどうか、さらに調べる必要がある」と話した。どちらが本当なのかは、調査の結果が出るまで分からない。

「謝っただけでは許されない」

越智CEOは謝った。「自然環境に被害が生じたことを深く深くおわびするとともに、モンゴル国民の皆様に改めておわびを申し上げたい」。親会社のKDDIも「極めて重く受け止めております」とコメントし、現地での試験の手順と安全管理の体制を抜本的に見直すと発表した。

それでも、モンゴル側は収まっていない。ノムトイバヤル副首相は「謝っただけでは許されない」と指摘した。法務・内務相のG.テムーレン氏は、関係者全員の責任を追及し、国の損失を賠償させる方針を示している。1年から12年の懲役が科される可能性もあると、モンゴルのメディアは伝えた。

火は中国との国境にも迫った。NEWSポストセブンによると、中国側は3400人を超える要員を配置する事態になった。

ネットの評判

モンゴル国内の怒りは、まだ続いている。現地で取材した記者は「国民の怒りは頂点に達しています」と伝えた。現地メディアでは「権力者と外国企業の経営陣が、一般人は簡単に立ち入れない自然保護区を遊び場のように出入りし、大惨事を引き起こした」という批判が強まっている。矛先は日本企業だけでなく、立ち入りを認めた側にも向いているように読める。

中国でも大きく扱われた。環球時報は「日本人が『火をつけた』、モンゴル国民が怒り」と報じている。中国のSNSでは、火災から10日以上たっても日本のメディアがほとんど伝えていない、と指摘する声も出ていた。

日本では、謝罪と再発防止の発表が報じられ、話はそこで一区切りになりかけている。焼け跡のそばにいる人たちとの温度差は大きい。

ヌムルグには、絶滅のおそれがあるウスリーヘラジカやカワウソ、ヒグマがすんでいた。その生き物たちがどうなったのかを調べる作業は、まだ終わっていない。

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