煙のない日は、
うちが酸素を送ってる
――ある国の広報の長が、隣の国に
シンガポールの煙、火元は水を抜かれたインドネシアの泥炭地だった
シンガポール西部で10月14日、PM2.5の1時間値が288まで上がった。「非常に高い」の区分で、2015年以来の高さだとCNAが伝えた。国家環境庁(NEA)は同じ日の午後4時、24時間PSIが118〜168の「不健康」だったと発表している。N95マスクの配布が始まり、煙害に関わる医療費の補助も2015年以来初めて復活した。飲食店と出前の売り上げは、煙害が始まってから最大6割落ちたという。
ただ、シンガポールの中では何も燃えていない。この煙は、国の外から来ている。
火元はカリマンタンにある
NEAは10月14日、カリマンタンの火災による濃い煙がシンガポールへ向かって流れているのを観測した、と発表した。運んでいるのは南東の風だ。スマトラの上にも煙が出ているという。
同じ煙は、海峡の向こうにも届いている。マレーシアのサラワク州スリアンは8月29日にAPI302、半島側ジョホール州のバトゥパハは10月6日に203。ジョホールは学校の休みを10月16日まで延ばし、マレーシア航空はジェッダとマディーナ行きの便を17日まで止めた。シンガポールだけの出来事ではない。1つの火に、地域ごと巻かれている。
なぜ毎年、燃えるのか
では、なぜ燃えるのか。
インドネシアには泥炭地が2420万ヘクタールある。熱帯の泥炭地の約3分の1だ。そのうち1640万ヘクタールは、もう傷んで燃えやすくなっている。水を抜くために掘られた排水路は、合わせて約28万5000キロ。France 24は「地球の円周の7倍」と書いた。
水を抜かれた泥炭は、一度火が入ると地下でくすぶり、何週間も消えない。上から水をまいても終わらないのだ。10月6日までに出た二酸化炭素は1億4050万トン。今年の世界全体の約13%で、2019年以来一番多い。インドネシアの中でも、8月と9月に17万人以上が呼吸の病気の手当てを受けた。
火を入れるのは人だ。パルプ材、アブラヤシ、田畑のために、森と泥炭地を焼いて開く。環境NGOのWALHIの集計では、カリマンタンの熱源(人工衛星が捉えた火の点)の74%が、企業の権利地の中で出ている。アブラヤシ1万739件、鉱山7880件、林業の許可6905件。グリーンピースも9月22日、林業の権利地115カ所の内側で859件、アブラヤシの権利地210カ所の内側で774件を数えたと発表した。
エルニーニョと正のインド洋ダイポールは、引き金であって原因ではない。筆者が読んだ資料はそろって、気象は土地を乾かしただけで、火をつけたわけではないとしている。
ネットの評判
この原因の見方は、当事国の中でも割れている。インドネシア政府通信庁の長、シャフガンダ・ナインゴランは10月10日、「隣国に理解してほしいのは、これは人の過ちを超えたもので、まさに自然だということだ」と話した。続けて「煙がないときには、我々は酸素を送っている。シンガポールとマレーシアの酸素は、我々の森から来ている」とも話した(訳)。
インドネシアのメディア、コンパスが撮ったこの場面の動画がSNSで広がった。マレーシアの利用者からは皮肉とからかいが多く、「インドネシアから来た酸素だと、どうやって見分けて数えるのか」という問い方が目立つ。筆者が開いた記事(Mothership、The Rakyat Post、Batam News Asia)には、この発言を支持する声は出ていなかった。一方で、火を出した企業を名指しで責める声は、グリーンピースやWALHIというインドネシア側の団体から上がっている。
原因に手が届かないまま
インドネシアの政治・治安担当調整相ドゥドゥン・アブドゥラフマンは10月14日、プラボウォ大統領と会ったあと、国家災害の宣言はしないと話した。「我々はまだ自力で対応できる」。マレーシアのアンワル首相は10月8日にプラボウォ大統領へ電話し、煙の水準は「憂慮すべきだ」と伝えていた。
越境する煙を止める約束は、一応ある。2002年のASEAN越境煙害汚染協定だ。10カ国すべてが批准し、最後に入ったインドネシアは2014年9月16日。署名から12年後だった。ただこの協定は「曖昧で、強制の仕組みも、紛争を解決する強い手段も欠く」と批判されてきた。内政に干渉しない、全員の合意で進める、という「ASEANウェイ」の下で運用されている。
中部カリマンタンのタンジュン・プティン国立公園では513ヘクタール以上が焼け、消火に当たったボランティアが少なくとも4人亡くなった。N95マスクと空気清浄機は、症状を抑えるものだ。火を消すものではない。
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- NEA Haze Situation Update (14 October 2026)
- Damaged and drained, Indonesia's peatlands go up in smoke(France 24、2026年10月13日)
- 2026 Southeast Asian haze - Wikipedia
- 2026 Indonesia wildfires - Wikipedia
- ASEAN Agreement on Transboundary Haze Pollution - Wikipedia
- Residents struggle amid haze in Indonesia, yet government fails to grasp the root cause of peatland fires(Greenpeace Southeast Asia、2026年9月22日)
- Indonesian govt official says forest fires 'beyond human error'(Mothership.SG、2026年10月10日)
- Regional fallout grows as Indonesia rejects disaster status(The Star、2026年10月14日)
- Indonesian Official On Haze Criticism: "We Send Oxygen Too"(The Rakyat Post、2026年10月12日)
- Regional Haze Controversy: Indonesian Official's "Oxygen" Remark Draws Malaysian Ridicule(Batam News Asia、2026年10月14日)
- Haze returns to Malaysia as Indonesia fires rage(Asia News Network、2026年8月11日)
- Southeast Asia Haze: Air pollution in western part of Singapore hits 'very high' band(CNA、YouTube)
- CNA Explains: How does haze reach Singapore and what do air quality readings tell us?(CNA、YouTube)