伏せ字にすると、◯◯・◯ー◯ング

『ハリー・ポッター』の作者の名前と、言葉狩りの冗談

写真はイメージ Photo by Pierre Bamin on Unsplash

10/26 18:06 / 発信国:イギリス / 記者:工藤

『ハリー・ポッター』作者の名前が伏せ字に?! 言葉狩りの冗談がXで広がる

「J.K.ローリング」を伏せ字にすると、◯◯・◯ー◯ングになる。この書き方が2026年10月25日、Xで広がった。同じ日、Xの投稿を集めて1ページにするサイト「Togetter」に、まとめが載った。言葉狩りがこのまま進めば『ハリー・ポッター』の作者が「名前を呼んではいけないあの人」になってしまう、という内容だ。はてなブックマークでは、10月26日までに68人がこのまとめを登録している。

「名前を呼んではいけないあの人」は、ローリングが書いた『ハリー・ポッター』の悪役ヴォルデモートの呼び名だ。作中では、恐ろしくて名前を口に出せない。それが作者本人に返ってくる、という冗談だ。ここでいう言葉狩りは、ある言葉を不適切だとして使わせないようにする動きを、行き過ぎだと感じる側が呼ぶ言い方だ。

「JK」も「ロ」「リ」も、名前の中にある

なぜ、名前が伏せ字になるのか。「J.K.ローリング」という表記には、ネットで伏せ字にされやすい文字が入っている。頭の「JK」と、「ロ」「リ」の並びだ。まとめの中では、その両方を消した◯◯・◯ー◯ングが出てきた。

伏せ字が広がった理由は、はっきりしている。お金だ。YouTubeは、動画に広告を付けるかどうかの基準を公開している。そこには「非常に冒とく的な表現(放送禁止用語など)がサムネイルやタイトルで使用されている」場合は広告収入を得られない、と書いてある(原文ママ)。収益化が止まれば、作り手の収入は減る。だから、ルールに合わせて先に伏せ字にする人が多い。

では、本当に名前が弾かれるのか。引っかかる語の一覧は、YouTubeも他のサービスも出していない。「J.K.ローリング」が実際に伏せ字にされた例も、今回の出典では確かめられなかった。まとめにあるのは冗談と、投稿者たちが自分で見たとして挙げた別の言葉の例だけだ。

作者には、もう一つの論争がある

ローリングをめぐっては、言葉狩りとは別の論争もある。

ローリングは10月21日、自分のサイトに「An Update to My Essay of June 2020」という文章を出した。6年前からトランスジェンダーの運動について声を上げてきて、考えは変わっていないと書いている。「my views haven’t changed」(原文ママ)。脅迫も受けたとして「Aside from an avalanche of death, rape and torture threats, it hasn’t noticeably affected my life.」(原文ママ)とも書いた。ローリングの主張は、ジェンダークリティカルな見解として長く論争になってきた。

この考えには、活動家や映画の出演者から批判が出ている。映画で主人公を演じたダニエル・ラドクリフは、ローリングと公然と距離を置いている(AFPBB News、10月22日)。一方、今回のまとめに集まったのは、言葉への線引きが行き過ぎていると感じる側の声だ。

ネットの評判

Togetterの投稿では、伏せ字そのものを笑う声が多かった。「人類が言葉を完全に奪われるまであと半周、くらいの感触だ…」「既にわりと伏せ字にされがちだからあんまり違和感はない」。はてなブックマークのコメントは、二つに分かれた。ネットゲームのチャットで「カロリー」が伏せ字になる、車の名前が◯で埋まる、といった自分が見た例を挙げる声と、ローリングのトランスジェンダーをめぐる発言そのものを論じる声だ。ネットの声は、どの語が規制されているかを示す根拠にはならない。

名前を呼べなくなる、という冗談が広がったその同じ週に、ローリング本人は、自分の名前が付いたサイトで6年前の文章の続きを出していた。

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